第3章 家族のかたち 其の1

「ん……うぅぅ……。」

「所長!」

 目を覚ましたら白い天井に白い壁……そしてベッドの隣に座っているストロ……。あぁ、ここは病院か。そういえば私、気を失ったんだっけ……。

「ストロ、さっきはごめんね。急に倒れたりし……」

「さっきじゃないよ!所長ったら2日もずっと起きないんだから!本当に……本当にみんな心配してたんだよ!」

「ふ……2日も……?」

 私……そんなに眠ったままだったんだ……。

「……ごめんね、横になったままで。少し起き上が……」

「ダメだよ寝てなきゃ!病院の先生が重度の過労だって言ってたんだよ!もしあのまま仕事を続けてたら死んじゃってたかもしれないんだよ!?」

「え、ス……ストロ……」

「だーかーら!所長はしばらくベッドで寝ていなさい!仕事もしちゃダメ!いい?これは業務命令だよ!わかった!?」

「あ……あの……は……はい……ごめん……なさい……。」

 今まで見たことのないストロの鬼気迫る勢いに呑まれてついタジタジになってしまう……。

「……私、所長がいなくなったら……所長がいなくなったら、どうやって生きていったらいいのか……ぐすっ……わからないもん……。本当に、うっ……目を覚ましてくれてよかった……。」

「ストロ……。」

 ストロは、私が眠っている間ずっと我慢して溜め込んでいたであろう涙をこれでもかといわんばかりに流している。

「……ごめんなさい……。本当に、みんなに心配かけちゃったみたいだね。」

 さすがに今回ばかりは自分の所業を猛省する……。

 ……そういえばみんなといえば……

「フィンとラッピーはどうしてるの?」

「2人はヒメリカの水やりに研究所まで行ってるよ。もう少しで戻って来るんじゃないかな?」

「そう……。そういえばラッピーとの約束も守れていないままだよね……。」

「あぁ、ヒメリカの水やりだよね。……実はそれに関して少し考えていることがあるんだよ。」

「考えていること……?」

「ふふ、今は内緒。そうだ所長、私所長のために研究所から持ってきたものがあるんだよ。」

「私のために……?」

 ストロはそう言うと、ベッド横のテーブルに置いてある紙袋の中身を取り出した。

「ほらこれ。大切なお守りでしょ?」

「これは……。」

 私のマントだ……。

 このマントは、5年前に私がアメリカ支部の所長になった日に買ったものだ。

 マントなんて他に着ている人がいないから目新しいな、なんて気持ちでなんとなく買ってみただけのものだったが、毎日着ているうちに愛着が湧いてきて、今ではストロの言う通り、私の大切なお守りになっている。

「私が着せてあげるね。これを着て暖かくして、早く元気な所長の姿を見せてよね。」

「ストロ……。本当に……ありがとう……。」

 私は涙が出そうになるのをこらえながら、マントを着せてもらうために身体を起こした。

 そんな時……

「おぉ……!ホリー!よかった、目を覚ましたか!」

「ホリー……ホリー……!」

「お、フィンとラッピーのご到着だね。」

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