第1章 人間の光 其の3

 さて、裏の調査を始める前に、地球立狂人病研究所ちきゅうりつきょうじんびょうけんきゅうじょという組織について少し説明しようかと思う。

 バーサーカーが初めて現れたのが今から50年ほど前のこと。

 それまでに全く前例がなく、早急な調査と研究が求められ、地球全体の規模で研究所が創られることとなった。

 研究所自体はすぐにできあがり、スタッフも大勢確保できたのだが、研究対象であったバーサーカーは1年ほどで突然死を遂げた。

 その後現れたバーサーカーも、全て例外なく1年以内に死亡が確認されており、狂人病きょうじんびょうは1年以内の死亡率が100%の奇病だと政府より認定された。

 そして、人間がバーサーカー化することによる周囲への被害や、罹患者本人への負担も踏まえ、20年前より【狂人病きょうじんびょう研究所職員がバーサーカーを安楽死させること】が法律で定まり、その後すぐに職員の対人格闘術や射撃術の訓練が行われることとなった。(とはいえ、という性質上、立候補者のみの訓練ではあったが)

 そんな地球立狂人病研究所ちきゅうりつきょうじんびょうけんきゅうじょであるが、私の所属する【アメリカ支部】は、私を含め3人だけの組織となっている。

 人数こそ少ないが、フィンは全支部において対人格闘術で右に出るものはなく、ストロは総合射撃術の世界大会で4年連続1位という大記録を打ち立てている。

 また、私自身はフィンやストロのような身体を張るような仕事は全くできないが、(恥ずかしい話ではあるが、何もないところでよく転ぶし、自転車にも乗れない)医学研究の分野にて史上最年少で大統領賞を受賞した。

 つまり、アメリカ支部は全支部においても指折りの少数精鋭ということとなる。

 ちなみに、【東アメリカ支部】や【南アメリカ支部】等、【アメリカ】という名を冠する支部がかなりの数存在しているので少しややこしい。

 また、今の地球は国という概念がなくなってから久しいため、【地球立ちきゅうりつ】という呼称となっている。


 ……さて、研究所の説明はこの辺にしておいて、そろそろ【裏の調査】に取り掛かろう。

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