第六話 残念な知らせと甘やかし

 生きてるんだ。

 ザイ・カリフォーレは空を見て溜息を吐く。

 死んだと思ってたのに、しぶとい奴だ。

 前々から彼は僕にとって頑丈で中々死なないと印象だったが、致命傷でも生還するとは思ってもみなかった。

 やはり、とどめを刺しておくべきだった。

 彼は僕の目的の障害になるため、排除しておきたかった。

 とはいえ、邪魔だなぁ~。


「ザイ、戻ったよぉ~」


 黒髪の女の子ミュー・シックがご機嫌そうに帰ってきた。


「ミュー、お疲れ様」

「本当に疲れたぁ~、癒してぇ~」


 そう言って僕の胸にダイブしてくる。

 避けると危ないので受け止めると「えへへぇ~」っと嬉しそうな声を上げる。


「危ないからダイブするなって何度も言ってるだろ?」

「君は絶対にそんなことせず受け止めてくれるってわかってるもん、それに貴方にしかこういうことはしないわ」


 そう言って猫のようにスリスリしてくる。 

 

「ミュー、任務について教えてくれ」

「そんなの後ぉ~、今は君を堪能したいのぉ~」

「先に報告をお願いできないかな?」

「ヤダぁ~」

「ミュー」


 そういうと、彼女はむくれながら不満そうに報告してくれた。


「帝国の標的はわ。 後、貴方の言葉をあの子にも伝えておいたわ」

「そっか」

「今回、結構抵抗されてたくさん死んだわ、あの子の立場も危ないかも」

「大丈夫さ、あの子には頼れる騎士がいる」


 僕の言う場所には王国騎士、ウィル・メッカがいる。

 彼が居れば、あの国であの子に危害を加えるのはほぼ不可能と言っていい。

 

が来たら?」

「無理でしょ、向こうには使徒がいる。 あの子らが外に出ない限り無理だよ」

「それもそっか」


 そういうと、ミューは再び僕に抱き着きスリスリしてくる。

 今回もまたたくさん死んだ。

 この世界は非情だ。

 救いを求めれば、それなりの代償がいる。

 加えてそれがその人の臨んだ救いにならない事が大抵だ。

 手を差し伸べた者の都合のいいその人の幸福を与え利用する。

 誰かに頼れば必ずそう言う結末になるのだ。

 かくいう僕も過去にそれで失敗しているから今はこんななんだけどね。


「満足した?」

「うん!! 満足満足ぅ~」

 

 ある程度ミューを甘やかすと、満足したような笑みを浮かべる。

 

「そっか、じゃあ次の任務の日程決めてもいい?」

「うん、いいよ!! だけど、次は短めがいいなぁ~」

「安心して、次は短めだから」

「やった!! 早く終わらせて帰ってこよ~っと」


 そうして僕らは次の任務の打ち合わせをするのだった。

 


 

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破滅王姫 ゆうき± @yuuki0plus

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