第四章 世界の癌
第1話 天使と天使
「ただいま~」
恐る恐る魔王城の玉座に足を組んでアルベラのように威圧的にこちらを見ているミリネがいた。
かなりご立腹なのか頬を膨らまし、威圧的に無理している感じが彼女には悪いが可愛い。
「お姉ちゃ~ん?」
「あ~、えっと……ごめんねミリネ、これには事情があって……」
アニエ、頼んだよ。
私は助けを求めるように、彼女の方を見る。
「お姉ちゃん、ちょっといい?」
「何?」
「姉様は、その……私の手伝いをしてくれてたの」
「手伝い?」
「うん、勇者ゼノンと戦うにあたって、べリウス様やグラナト様に戦った状況について聞くと、少なくとももう一人敵がいることがわかったの」
ミリネにとってそれは初耳だった。
べリウスとグラナトは負けた話をすることはない。
ましてや重症を負う程の完全敗北、彼らは参謀であるミリネにでさえ教える事のなかった情報だ。
戦場における最も必要な綿密な作戦、彼女にはそれがあるのだ。
「アニエ、何故それを報告しなかったの? 言ったよね?」
彼女は以前もミリネに必要のない情報を教えず怒られたことがある。
その時はアルベラの配下になる前で重症をアニエが負ったからだ。
「それについてはごめんなさい、聞いただけで確たる情報もなかったものだったから」
「それでも報告してってこの前も……もういいわ、それでお姉ちゃんにお願いしたと?」
「今動ける中でアルベラ様と同格のミラ様が居れば対処が可能だと私は」
アルベラを足止めして、アニエの部隊を殲滅という可能性も考慮しているという言い方だ。
これは可能性としてはなくはない。
例えばだが、アルベラが勇者ゼノンに足止めされもう一人のゼノンの仲間がもしも奴と同じ戦闘能力の場合、彼女の部隊は全滅してしまうだろう。
「お姉ちゃん」
「はい」
「嘘はないんだよね?」
「はい、間違いありません!!」
彼女は深く溜息を吐くと足を組むのをやめ立ち上がり近づいてくる。
「本当?」
「ほんとほんと」
「ならいいけど、次からは言ってよね」
「は~い」
詰め寄ってくる彼女に首を縦に振ると、呆れたように私を見てそう言った。
何はともあれ、一先ず問題は片付いた。
とはいっても、ミリネは納得していない様だが。
これは、後でご機嫌取らないとな。
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