第9話 アルベラとアニエ
「アルちゃん、無事でよかった!!」
アニエのいる部屋に向かうと、アルベラの元気そうは顔を見て嬉しそうに駆け寄ってくる。
アルちゃんねぇ~。
「心配をかけてごめんね」
……ん?
何かいつもと口調が違う?
「姉様も無事でよかったです」
アニエはアニエで天使のような微笑みをこちらに浴びせてくる。
「私は何もしてないよ」
私がそう言うと、アルベラの方を見る。
「アルちゃん、お願いがあるんだけど」
「ん? 何?」
「姉様とミリネについての事なんだけど」
「二人がどうかしたのか?」
「姉様にミリネが怒ってて、辻褄合わせをお願いしたいの」
普段のアルベラなら絶対に受けないであろう提案だった。
彼女は思った事を正直に言う性格だ。
こんな嘘塗れの提案は受けてくれないだろうと思っていたのだが……。
「それで、私は何を言ったらいいの?」
受け入れてくれた。
珍しいなんて物じゃない。
そこにいるのがアルベラではないという疑いさえ持ってしまう程、口調と行動が違いすぎるのだ。
「えっと、いいの?」
「何か事情があるんじゃないの? 嫌なら私は手伝わないけど」
「いえ、お願いします!!」
この好機、逃す手はない。
口調は突っ込みたかったが、前々からアニエから聞いていたので知っていたが実際目の当たりにするとやはり動揺してしまう。
そうしてアニエ主導の元、つじつま合わせを行う。
アニエが私に要請していた事、これは極秘の作戦として遂行していた事だ。
「敵拠点建設地二つを既に彼女の主導の元潰しているため、そこの一つを姉様の手柄にする事で丸く収まるでしょう」
「でも、それだと兵士達が情報を漏らすんじゃない?」
ミリネの調査は徹底的だ。
流石のアニエでも、兵士の口を封じるのは不可能といっていいでしょう。
魔族は自分の実力を知らしめたい奴らが多い。
自分の武勲をおいそれと譲れば不満が出る可能性がある。
そう言うと、アルベラが口を開く。
「まぁ、それは何とかなるんじゃないかな」
「どういう事?」
「なんていうか、私の部隊基本的に武勲とかそういうの興味ない奴が多いから」
「そうなの?」
「うん、私も驚きなんだけど、彼女の部下ってアニエを崇拝してるっていうか、アニエのいう事にはすぐに従う奴が多いのよね」
あ~、ミリネみたいな感じか。
ミリネの事を崇拝している親衛隊のような感じなのだろう。
ミリネの場合、それをわかってて行動しているがアニエの場合は天然で人たらしをやっているので自覚がないのだろう。
「あ~、なら大丈夫そうだね」
そう言って私達は辻褄合わせの会議を終了し、しばらくして王都の魔王城に帰還するのだった。
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