第8話 事後

 拠点を出てアルベラが向かったとされる場所へ向かうと、そこには何もなかった。

 正確には敵拠点やその周りにあった樹木がごっそりとまるで切り取られたようになくなり更地になっていた。

 アルベラが魔法で消し飛ばしたのは明白だった。

 加減を知らないな。

 徹底的、彼女は敵であれば容赦はしない。

 たとえそれが子供であっても戦う意思があれば彼女は容赦なく奪う。 

 

「やりすぎなんだよな~」


 魔法を放ったであろう道を私は向かう。

 戦いはもう終わっているのか?

 私はその道を進んでいくと、途中でアルベラと合流する。

 彼女は私を見るなり、睨みつけてくる。

 

「待って、話を……」

 

 瞬間、彼女は魔法を放ってくる。

 やっぱりこうなるよな。

 彼女は何故か私を嫌っている。

 理由は分からない。

 他の魔族とは違い、私を見ると機嫌が悪くなり襲い掛かってくるのだ。

 私はその魔法を殴り彼女に返す。

 それを彼女は弾き飛ばす。

 弾き飛ばした先で魔法は爆発する。


「聞けよ、相変わらずせっかちだな」

「貴様こそ、相変わらずくだらない顔をしておる」

 

 そう言って彼女は口角を上げる。

 私が偽物か疑っているようだった。


「貴様は何故ここにおる」

「私はアニエにお願いされて応援に来ただけ」

「アニエが?」


 疑り深い彼女に紙を渡す。

 それを読むと、彼女は納得したような顔をして紙をしまうとこちらを見る。


「残念ながら終わったぞ、ゼノンとやらは逃げた」


 彼女が取り逃がすとは珍しい。 

 彼女が標的を逃がすことはあれど、取り逃がすのはあまりある事じゃない。


「珍しいね、貴方が取り逃がすなんて」

「深追いは禁止されておるからな」


 彼女はアニエと出会い、少し変わったように思う。

 以前の彼女は敵を殺すためなら自分の命など惜しくないといった戦闘狂だった。

 しかし、アニエと出会ってからというもの、彼女は周りをよく見るようになった。

 状況判断、戦闘において引きと押しを考えるようになっていった。


「貴方変わったわね」

「そうか?」

「えぇ、前はなんていうか話しにくい感じだったから」


 心を閉ざしているというかなんというか、今も少し怖いのだがなんというか柔らかくなっている気がする。


「そうだったかの?」

「えぇ、少なくとも私はそう思うわ」

「何じゃ、今日はいつにもまして気持ち悪いの」


 照れくさそうに言う彼女と共に私達は拠点に戻るのだった。


 


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