第7話 ミリネの妹

 話は少し前に戻る。

 

「ここまででいいよ」

「わかりました、お気をつけてください」


 彼女は王都に向かって歩き出したので私は自身の変身を解き、アルベラたちの元へ向かう。

 

「あの、ちょっといいかしら?」

「ん? 魔王様!? はい、なんでしょう!!」


 私が来ると思っていなかったのだろう。

 私が来たと思った瞬間、彼は背筋を伸ばした。


「そんな緊張しなくていいよ、アルベラには内緒にしておいてあげるから」

「は、はぁ、それでご用は何でしょうか?」

「アニエいる?」

 

 先程の騎士の態度から見てアルベラはいないのであろうことが容易に想像できる。

 「緊張感のない奴は死ね」とか言いそうだからな~。

 

「アニエ様なら中で作戦を練っております」

「わかった、ありがと」


 兵士に礼を言って私は中に入る。

 中に入ると巡回している兵士が一斉にこちらを見た。

 皆、ごめんね。

 

「アニエ、入るよ」

「え!? 姉様!?」


 私が中に入ると、驚いた表情でこちらを見るアニエの姿が目に入る。

 彼女は私が来ると思っていなかったのか、軽く髪と服装を整える。


「ごめんね、突然来て」

「いえ、それは構いませんが、ミリネが「脱走した!!」ってもの凄く怒ってましたよ」

「あ~」

 

 ますます帰るのが億劫になってきた。

 項垂れている私に彼女は人差し指を立て、提案をしてくる。 

 

「あの、私が口添えしましょうか?」

「え、ほんとに!?」


 渡りに船とはまさにこの状況の事だった。

 もしかしたらと期待していたが、まさか行くとは兵士の言う通りアニエは天使そのものだった。


「えぇ、怒られるの可哀想ですし」

「アニエェ~」


 私は感極まって彼女を抱きしめ、頭を撫でる。

 

「姉様!?」

「アニエはいい子だね~」

「えへへぇ~」

 

 最初は動揺していた彼女だったが、嬉しそうにギュッと抱きしめ返してくる。

 可愛らしい声を浮かべながら抱きしめる彼女にキュンとしてしまった。

 兵士の言ってた話が分かる気がする。

 なんというか、彼女は天真爛漫というか守ってあげたくなるような感じがするのだ。

 

「姉様、その代わりと言っては何ですが、お願い聞いてもらう事は可能でしょうか?」

「うん? 私にできる事なら、いいよ」

「でしたら、アルベラ様の増援に行ってほしいのです」

「アルベラの?」

「はい、あの方は1人で無茶をします……私が行きたいのは山々ですが、お荷物です」


 彼女のいう事は分かる。

 ついていきたいが、彼女自身力不足なのをわかっているのだ。


「ですから、私の代わりに彼女の手助けに行っていただけませんか?」


 真剣に、そして自分自身の弱さに悔しそうな表情をして私にお願いしてきた。

 そんな彼女の頼みを放っておけなかった。

 それにしてもアルベラか。

 正直アルベラと私はそれほど仲良くない。

 っというか彼女がどの階位と仲良くしているのを見た事が無い。

 唯一、彼女が意見を聞くとすればアニエくらいだ。

 

「うん、わかったよ任せて」


 共闘できるかわからないが、妹分の妹の頼みだ。

 出来るだけやってみよう。


 


 


 


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