第6話 ゼノンの正体

「ほうその布、ただ正体を隠しているわけではなかったというわけか」


 下がり態勢を整える彼にそう言った。

 間近で爆風を受けたにもかかわらず、その布は無傷で傷一つついていなかった。

 耐性系の素材を使っているのは明白だった。

 

「噂通りの化物だな」


 その声は焦りではなく、嬉しそうな感じだった。

 

「ならさっさと死ね」


 そう言って彼女は呪文を唱える。

 しかし、彼はそれを待つことなく彼女に向かって突っ込む。

 この距離なら彼の一撃の方が速い。

 しかし、彼女は予め魔法を張っていたのか、彼の突っ込む先で魔法が発動する。

 

 彼は避けながら彼に突っ込む。

 これでもなお、こっちの方が速い。

 

 複数の爆発をよけながら、彼女に近づくともう二つの魔法が発動する。

 この状況で発動するとすれば……。

 彼は爆風の中に飛び込む覚悟で下がる。

 同時に魔法が発動し、鎖が二つこちらに襲い掛かる。

 それをよけながら、剣で叩き落しとす。


「不味いか」


 彼の言葉と同時に、彼女の魔法が発動する。

 彼女の粘り勝ちだ。

 彼残された選択肢は一つだった。

 切り落とす。

 全ての魔法を剣で切り伏せる事だった。


「足掻け、人の子よ」


 そう言うと、彼女は多重流星弾メテオ・バース

 瞬間、魔法陣が彼女を囲むように七つの火・水・地・雷・風・聖・陰魔法陣に分かれ、魔法が各魔法陣から放たれる。

 彼は真っ直ぐそれらを見つめる。

 火・水・地・雷・風・聖・陰の中で面倒なのは雷と聖・陰魔法だ。

 雷は身体の動きを鈍くするし、陰は幻覚魔法、聖魔法は威力が強いからだ。

 火・水・地・風は切り伏せ、それ以外の魔法は逃げていく。

 煙が捲きそうになると、一歩引き的確に切り伏せていく。

 アルベラは見失わないように上空へ飛び、追撃していく。


「うぉ、あぶねぇ!!」


 必死にさばいていくゼノンを見る。

 あの魔法を凌ぐか。

 この魔法をここまで防げた者はゼン以降二人目だ。

 

「やってられるか」

「逃がすわけなかろう、愚か者!!」


 逃げようとするゼノンを追撃する。

 それをよけながら、彼は必死に逃げる。

 

「男なら潔く散れ!!」

「生憎、生き残る事が重要なんでね」


 そう言うと、彼は何かを目の前の木に投げる。

 木にぶつかると同時に空間が歪み、男はそこに飛び込む。

 

「追ってくるなら来なよ、暴姫」


 入る寸前でアルベラに言うと、彼は中に消えていった。

 追うべきか?

 否、どこに続いているかわからない以上、変に追うよりアニエの所に戻るべきだろう。

 アニエには無理して追う必要はないと言われているので、戻ることにした。

 

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