第5話 戦闘

 話は同刻。

 アルベラは単独で敵拠点に来ていた。

 部下には拠点で防衛とアニエの護衛をさせていた。

 部下の命令はアニエに任せてある。

 基本的にアルベラは指揮やなんというよりも単独で殲滅するのが得意なのである。

 対してアニエは戦闘力はそこまで他の魔族とそう変わりない。

 だが、彼女の能力は単ではない。

 彼女の最も輝く場面は戦場、複数での場面でこそ戦果を発揮する。

 部下もどちらかというと、アルベラよりアニエの命令を優先することが多い。

 彼女もそれをわかっていて、自分は大将を取ることを優先で動くことで均等が取れていることを理解している。


 目の前の拠点を見ると、拠点の先に一人の顔を布で隠した人間が立っていた。

 情報にあった勇者ゼノンだろう。


「貴様、ゼノンだな」

「アルベラか、これはまた大物が来たものだ」


 アルベラはゼノンの前に降りたつ。

 体格・魔力・圧力共にそこら辺の兵士と変わらない。

 こいつがゼノンなのかと思える程普通の男だった。

 だが、一つだけ違った部分がある。

 アルベラを前にして平気な表情を浮かべる彼が異質だった。

 今までどの強者も彼女の圧を前にして焦りの表情を浮かべていた。

 彼女が威圧を掛けていたとはいえ、それを掛けても尚ぱっと見た感じではまるで変わらなかった。


「貴様、何者だ」

「僕かい? 僕はゼノン、只のゼノンだ」


 彼は面倒くさそうに剣抜く。

 まるでこちらを苛立たせるかのような溜息にアルベラは殺気立つ。


「舐めておるのか?」

「いや君は殺すなって言われてるもんで、面倒だなって思っててさ……撤退してくんね?」


 瞬間、アルベラは魔法を放つ。

 その魔法はまともに受ければ剣ごと燃やし尽くす業火の球が彼を襲う。


「塵も残さず消えるがいい!!」

「危ないな、ふん!!」


 彼は剣で受け止め、それを頭上に殴り飛ばす。

 業火の球は空に向かって吹き飛ばされ、空に消えていった。

 

「ほう、今の魔法を弾くか」

「こんな魔法、周りを考えて撃ちなよ」


 彼女の魔法は地形を変えるほど強力な魔法が多い。

 山が一瞬で消えたり、凹んだ場所に湖ができたりと数えるときりがない。


「貴様が塵になれば、済む話だ」

「そういうわけにはいかないんだ」


 そう言うと、アルベラの目の前にゼノンが現れる。

 

「君には僕で正解だったようだね」


 一刀を放とうとする彼に向かってアルベラは笑みを浮かべる。


「甘いわ」


 彼の剣は彼女を確実に捉えたはずだった。

 だが、剣に感触がまるでなかった。

 同時に、足元で魔法が発動する。

 

「ありゃ、危ないな」


 それに気づいた彼は後ろに飛んだ。 

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