第4話 帰宅

 しばらく歩いていくと、階段のある場所に着いた。

 そこを進んでいくと、外に出た。

 辺りを見渡すと、王都が見える近くだった。

 どうやら魔族の国の外にある場所の様だった。

 この出口じゃない。


「ここ以外に出口なかった?」

「申し訳ありません、あっちの方はリグルス邸なので辞めとこうと思ったのですが……」

「そっか」


 どおりで手際がいいわけだ。

 リグルス邸は私のいた場所からそう離れていないので、誰にも見つからないわけであった。


「どうするかな」


 ミリアも戻ってこなくて心配してるだろうし……。

 あれ、なんかここって何かなかったっけ? 


「ねぇサリナ、ここらへんで魔王軍の作戦やっているところない?」

「ここですか? そうですね……あ、そう言えばこの先を少し行った先に拠点を置くと言ってた気が……確かアルベラ様だったはずです」


 アルベラか……そう言えば、新しい勇者と対峙するとか言ってたな。

 防衛拠点の奪還に向かっていたはずだ。

 三月の時が今日だ。

 今頃アルベラと勇者ゼノンが戦っている事だろう。


「ちょっと行ってくる」

「え、本気ですか?」

「うん、ここにいれば私も作戦参加者として面子は立つしね」


 アルベラはあまり自身の事を喋らない。

 怖いが、こういう面では頼りになる……怖いけど。


「アルベラ様に部下を通じて報告させましょうか?」

「いや、いいよ……アルベラ相手にそんなことすれば貴方達が危険だ」


 アルベラは他の魔族と違い、感が異常に鋭い。

 自分の部下とそうでないものを見分けられれば、彼女の部下は一瞬で消し炭にされることは間違いない。

 彼女は同族であろうと、そういう事には容赦がないからだ。


「わかりました、でしたら途中まで同行します」

「大丈夫だって、ひとりで行けるよ」

「ですが」


 彼女にも私を危険を晒したくない思いがあるのだろう。

 その目は頑なに最悪、先程のようにバレずについてくるという手に出そうな感じだった。


「だったらそうだね、アルベラの拠点の近くまでお願いしてもいい?」

「……はい」


 彼女は口角をほんの少し上げ、嬉しそうに私にそう言うと紙を取り出し何かを記入すると、口笛を吹く。

 しばらくして、彼女の使い魔が姿を現す。


「これを部下に渡してね」

「きゅ~!!」


 彼女の命令に元気よく答えると使い魔は飛び去っていく。

 

「それじゃあいこっか」


 私が手をサリナに出すと、彼女は手を恐る恐る握る。


「……はい」

 

 私達はアルベラのいるであろう場所へ向かうのだった。


 

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