第2話 脅迫そして

「簡単な話だよ、脅迫文こいつを送って金を用意させる」

「脅迫文?」

「身代金だよ、まぁ安心しろ命までは取らねえからよ」


 下卑た目で私の方を見ると寒気が起こり、涙腺が緩んだ。

 ビビったわけではない。

 気持ち悪すぎて涙が出てきただけだ。

 下種共は高笑いをあげながら、牢屋の鍵を閉めずに去っていく。

 不用心だな~。

 ま、私にこんな牢意味ないけど。

 一気に両手足に魔力を込める。

 すると枷が抵抗しようと光を放つ。

 

「……んっ!!」


 手足に力を籠めると枷が音を立てて崩れ去った。

 なんてことはない、市販に出回っている枷など王宮の物に比べればなんという事はない。

 まぁ、王宮の奴も私は壊せるのだが。


 さて、どうするかな。

 今すぐあいつらをぶっ飛ばしたいところだが、まだ調べることがある。

 少し出ると、看守の男が眠そうにあくびをしながら立っていた。

 そのまま音もなく近づき、看守の意識を刈り取り先に進む。

 先に進むと、豪快な笑い声が聞こえてくる。

 

「それにしてもどうするんです? あんないい女、解放しちまうんですかい?」

「んなわけねえだろ。 あの店が手に入ったら、従業員ともども攫って奴隷として売り飛ばすに決まってんだろうが」

「ですよね~、あぁそうだミリアでしたっけ? 最初は僕にくださいよ」

「構わねえぜ、俺らはデミルや従業員で楽しむからよ」


 そう能天気に下種な発言を繰り返す男達に私の我慢の限界が来る。

 お前らに明日はない、今ここで地面で這いつくばるのがお似合いだ。


「我慢しようと思ったけど、そんな考えなら今を生きる資格はないかな」


 私は彼らの前に出る。

 この程度の気配察知能力では実力が知れるからだ。

 

「お前、どうやって……看守はどうした!!」

「看守ならそこですやすやと眠ってたけど?」


 そう言ってリーダー格の男に近づき彼に問いかける。

 

「リグルスは何処?」


 私の問いを無視するかのように掴みかかってくる。

 手を振り上げると、彼の腕が勢いよく吹き飛ぶと大きな叫び声をあげる。


「……え? あ、あぁあぁぁっぁぁ!!」


 取り乱したように男は腕を抑え、泣き叫んでいる。

 なんというか、予想以上に弱かった。

 私は男に近づくと、彼の目を見て問いかける。

 男の目は完全に戦意喪失していた。


「リグルスは何処?」

「え、えとっ……」

「落ち着いて答えて」


 私は優しくそう言ったが、男の顔が青ざめてゆく。

 彼の目を見ると、気絶していた。

 全く、根性がないな。

 腕がなくなった程度で気絶するなんて。

 人族の方がまだ根性がある。

 

「さて、あれ……」

 

 周りにいたごろつき共は倒れていた。

 その中に一人でたたずんでいる黒いローブと対極の白髪のサリナがいた。

 

「一人いれば十分だと思って……駄目でしたか?」


 音もなく殲滅するその姿はリンとランに近しいものを感じた。

 

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