第12話 私の名無
宣伝していくと、私の袖を引っ張られる。
方向を見ると、白を基調とした布を被った白髪の女の子が上目遣いでこっちで見ていた。
「一枚どうぞ~」
彼女はそう言うと、私の手を握る。
それと同時に、私の身体中に何かが巡る。
「聞こえてますか?」
身体に響くような声が聞こえる。
古代魔法の共鳴、法者と相手の魔力を一時的に繋げ思考を送ることができる。
彼女の名前はサリナ、私の名無である。
名無の蒼、晴天の名無を与えられた名無だ。
「うん、聞こえてるよ」
「よかったです」
そう言うと彼女は宣伝紙を受け取ると、私から離れて宣伝紙を眺めている。
「昨日は報告できず、申し訳ありません」
「あぁ、気にしないで……それより、どうだった?」
「無事、魔法軍に反逆する者の粛清、拘束して関与した者がいないか調査中です」
私の名無の主な役割は反逆者の粛清を主としてもらっている。
魔王軍の中でも私に名無がいる事を知らない。
ミリネにさえ、いる事を話していないのだ。
「そっか、尋問はした?」
「いえ、難航していますが必ず吐かせます」
「いつも嫌な役を押し付けてごめんね」
私はそう謝った。
この国を守るとはいえ、私の代わりに汚れ仕事をさせるのは申し訳ないという他ない。
「そんな、これは私達が望んでやっている事です……貴方が居なければ、私達は路頭に迷い奴隷になるか死ぬしかなかったのですから」
彼女達の出会いは本当に偶然だった。
私がゼンの情報を手にしようと遠征した時に偶然出会った子だった。
その後は私が戻った後、紅のセナに保護してもらい名無の色を手に入れるまでに成長し主に私との連絡を主な業務としている。
古代魔法の共鳴は彼女しか扱えないのに加え、認識阻害の陰魔法を使えるため私との連絡には固定となっていた。
「皆も会いたがってます……たまには
「……わかった」
彼女達の他に七人の名無と彼女達が育てた部隊がいる。
セナを主とした部隊、その下に六花と呼ばれる色を与えられた六人に加え、無職と呼ばれる者達で構成された部隊である。
紅色 セナ
黄色 リファ
翠色 フィオ
蒼色 サリナ
黒色 リタ
白色 シロ
この七色が主に部隊を取り仕切っている。
「それでは、また何かありましたら追って連絡します」
「お願い」
そう言うと、彼女はこちらににこりと笑い私の元から去っていく。
話をしながら、宣伝紙を配っていくといつの間にか配り終えていた。
これが終わったらすきにしてていいと言われていたので、暇になってしまった。
……帰るか。
特にやることもないし、ミリネにご機嫌取りのお土産を買いに行き魔王城へ戻ることにした。
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