第10話 懐かしの本と夢

「いつまで滞在するの?」

「明日には帰るよ」


 正直三日が限界だ。

 それ以上はミリネの機嫌が限界突破してしまう。

 この前のはゼンの情報を得る為に敵陣を殲滅したという点で、うやむやに出来たが今回は無理だろう。


 ミリアは私の言葉に悲しそうに俯く。 

 寂しいのかな?

 ここ一か月、公務等の激務や個人的遠征でこれてなかったのだ。


「またちょくちょく戻ってくるよ」

「……本当?」


 上目遣いでそう言ってくる彼女に帰りたくなくなってくる。

 その思いを必死に抑える。

 

「うん、戻ってくる」

「約束だよ?」


 そう言って小指を向けてくる。

 私は彼女の指に小指を絡める。

 

「うん、約束」


 そう言うと、店の主としてではなく一人の少女としてミリアは屈託のない笑顔を浮かべてくる。

 その笑顔は狡すぎる。

 

「じゃあ、今日は一緒に寝てくれる?」

「もう、仕方ないわね」

「やった」


 そう言って彼女や従業員と共に店を片付け終えると、寝室へ向かうのだった。

 

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「お姉ちゃん、これ読んで?」


 彼女はそう言って『龍と剣姫の恋物語』という本を私に見せてきた。

 

「本当好きだね~」


 そう言って私は彼女に本を読み聞かせる。

 この話は剣姫と龍が恋に落ちて楽しく暮らしていく話で、彼女が天に召された後彼女と共に過ごした場所を旅するという物語だ。

 そうして読み進めていく。

 私が途中まで読み進めていくと、ミリアはウトウトし始める。

 やがて彼女は途中で完全に眠りについた。


「お休みミリア」


 私はそう言うと、本を閉じ眠りにつく。

 私もあの本が大好きだった。

 いや、本というようよりもゼンに読んでもらうのが好きだった。

 とはいっても、彼は私のように隣で寝ることなく椅子に座ってだけど。

 

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回想


「ゼン、早く読んでよ~!!」

「はいはい」


 そう言ってゼンは呆れたような顔で本を手に取り開くとこっちを見る。


「ほらお腹冷えるよ、もっと首までかけなさい」

「は~い!!」


 彼の注意に私は元気よく返事をした。

 そうして彼の読み聞かせが始まった。

 これが私はルンルンとしながら、彼の読んだ物語を思い浮かべた。

 そうして聞いていると、身体から力が抜け瞼が落ちていく。


「ゆっくりお休み、眠り姫」


 その声と共に私の意識は闇に落ちた。


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