第9話 調査

「これで足る?」

 

 私は彼女からの情報を聞き取った後、お金を渡す。

 情報とは彼女達の商品だ、払うのは当然だろう。


「ううん、今回は頂かなくて大丈夫」

「え、でも……」

「いつも多く貰ってるから今回はなしでいいわ」


 そういうわけにはいかない。

 彼女達の情報は私にとってありがたい物なので、払うに値するものだ。

 いつも多く払っているといってもそれは感謝の気持ちだ。

 決してそれ以外の何物でもない純粋なお礼だ。 


「そういうわけにはいかないわ、受け取って頂戴」

「いつも多く貰って悪いよ」

「それは私からの気持ち、受け取って……あれなら、家族のお給料に使ってあげてよ……その方があの子達も喜ぶでしょ?」


 彼女にそう説くと、渋々と言った感じで受け取る。

 こういう所、律儀だよな。

 

「ありがとう」

「これからも、情報あったらよろしくね」 


 そう言うと、彼女は頷き私はその場を後にし、下に降りると私の知っている賑やかな酒場に戻っていた。


「昨日の今日でこの賑わい?」


 昨日まで閑古鳥が鳴っていたというのに、今日は満席且つ外で待つ人で溢れていた。

 王都で人気なのは知っていたがまさかここまでとは、ミリアの酒場の人気の度合いをなめていた気がする。

 今度、ミリネも連れてきてやるかな。

 正直今頃私がいなくて憤慨していること間違いなしだ。

 帰ったら、怒られるだろうな~。

 魔王としての業務を放り出しているのに加え、外出禁止令を無視したので彼女の怒った顔が目に浮かぶ。


「あ、お姉ちゃん丁度良かった……ってどうしたの?」

「ううん、何でもないよ」

「そう? だったらちょっとお店手伝ってよ……少し捌き遅れが出てきてるから」

「了解、料理手伝えばいい?」


 そう言うと、彼女はもの凄く嫌そうな顔をした。

 冗談のつもりなのに。

 私の料理は何故か魔法で焼き尽くされたかのように真っ黒の物体が必ず生成されるのだ。

 それを私は一種の呪いとさえ思っている。

 

「冗談だって、ホール出るよ」

「お願い」


 そう言って注文を受けたり運んだりして捌いていくと、やがて客足が少なくなっていった。

 公務より疲れる。

 頭だけでなく、身体も動かさなければならないので外交や公務より疲れた。


「お姉ちゃん、もう大丈夫そうだから休んで」

「うい~」


 休憩室の机に突っ伏す。

 しばらくして、お店の賑わいが完全になくなりあれだけ騒がしかった酒場が静寂と化している。

 こう見ると、騒がしかった事が愛おしいというか、寂しい感じだ。

  

「お姉ちゃん、賄い食べる?」

「うん、食べようかな」


 正直、ここの賄いは王都のシェフには悪いが、あそこに匹敵するくらいここの店は美味しい。

 それにその日の栄養面とか考える必要もなく、好きなものが食べれるのだからこっちの方がいい。

 そんな事を思いながら、私はミリアと食卓へ向かった。

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