第6話 リグルスという本質

 何を言っているのだろうか?

 リグルスはあろうことか、お願いする立場でありながら「購入しろ」と言ってきた。

 信じられない事にだ。

 しかし、ミリアは資料を目に通すと、再び溜息を吐く。

 

「話になりません、この値段では誰も買いませんよ」

「それを何とかするのがお前らの仕事だろう?」

 

 当然といった感じでミリアの方を見ると呆れたように溜息を吐く。

 

「残念ですが、売れる可能性皆無の商品と取引する気はありません、お引き取りを」


 そう言うと、また彼は笑う。

 まるで自分が圧倒的に有利だと言わんばかりに彼は馬鹿にしたように笑う。


「ガキはやっぱり世間を知らねえな……なぁクソガキ、俺を誰だと思っている?」

「誰ってリグルス様でしょう?」


 これだけ馬鹿にされてミリアは眉一つ動かさず、彼を見ている。

 私だったらとっくに手を出している。


「そうだ、俺はモリス派の幹部候補のリグルスだ」

「はい、だそうですね」


 ミリアは興味のなさそうに答えると、リグルスは苛立ちを見せる。

 これが切り札?

 しかし、ミリアの周りは緊張したように見ていた。

 

「俺を蹴れば、モリス派が黙っちゃいねえぞ?」

「……具体的にどういう風に?」

「例えばそうだな……こういう風にだよ!!」


 瞬間、彼は机を蹴り飛ばす。

 こいつ!!

 流石にこれは看過できない。

 ミリアが私の前に出て制止する。

 手を出すなとまるでそう言う感じだ。


「次来るまでにサインしとけよ、じゃねえと後悔するからな」


 高笑いを浮かべながらそう言うと、彼は外に出て行った。

 ミリアは地面に転がった食べかけの饅頭を見て悲しそうな表情を浮かべていた。


「ミリア」

「なんでこんなことするのかな」


 饅頭を失った悲しさより、食べ物を粗末に扱った事だった。


「ミリア駄目だよ、拾って食べちゃ」


 初めてあった時もそうだった。

 彼女は元孤児でどれだけひどい扱いを受けてもたとえ踏みつけられたご飯があっても、彼女は拾い上げて食べていたのだ。


「もったいないよ、まだ食べれる」


 そう言って彼女は落ちた饅頭を口に含み、モグモグと食べ進める。

 それと同時に、彼女にこんな顔をさせたリグルスに怒りがわいてきた。 

 彼女にこんな顔させて、リグルス……許せない!!

 そうして、私は部屋を出てある場所へ向かう。

 この場所の最上階にして従業員が誰も立ち入ることの許されていない場所へ足を運ぶ。

 右・左・右・右・真ん中と進んでいくと、扉が見えてくる。 


「アルゴス~、いる~?」


 暫くして、黒髪の少女アルゴスが現れた。


  

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