第一章魔王としての責務
第1話 可愛い参謀
魔王城に戻り私の部屋の扉を開け中に入ると、白髪の少女ミリネが不機嫌そうに頬を膨らましていた。
これは、だいぶお怒りかな。
外出は控えてと言われたばかりでこれだ、彼女が怒るのも当然と言えばだろう。
「どこへ行ってたんですか?」
「えっと、視察に」
むくれながらミリネはこちらに近づいてくるが、可愛すぎてにやけてしまいそうなので視線を逸らす。
すると、彼女はこっちに顔を向けてくる。
やめて、それ反則……。
「なんで言ってくれなかったんですか?」
ミリネはリスのように頬を膨らませながら、私との距離を詰めてくる。
「えっと……」
「嘘つかないで本当のこと言ってください」
「はい」
私の言葉を遮るように詰めてきたので、事の状況をミリネの説明した。
ゼンを殺した部隊の奴が部隊長にいたので、彼の情報を得るために動いた事、そしてその部隊を殲滅したことを説明した。
まぁ、何人かは逃がしたのは黙っておく。
内通者を紛れ込ますために、戦意のない数人は生き残るように逃がした。
「それで、一人で殲滅してきたと?」
「いや、私が行った方がいいかなって思って」
正直私的な理由だが、それを言うと怒られるので帰りに考えていた言い訳をミリネに述べる。
「貴方は何ですか?」
「ミラだけど?」
「お馬鹿なんですか?」
何だろう、彼女が言うと不快に感じない。
むしろ何かに目覚めてしまいそうな程言い方が可愛い。
「ミラ様は魔王ですよね?」
「うん」
「魔王が自ら出るなんて周りの事何も考えていないとしか思えませんよね?」
何も言えなかった。
私は魔族の大将だ。
その大将が危険を承知で単独で戦いに行くなど愚の愚、愚かの極みだ。
わかってはいる。
だけど、今回はゼンの事に関することだ。
これは軍には関係ない。
私個人の事だ、そんなことで大事な部下を動かせない。
「もしかして、情報のせいだったりします?」
ミリネの目が完全に光を失い冷たい表情になる。
ヤバい、これは本気で怒っている奴だ。
表情のない時のミリネは最も恐ろしい。
「ソンナコトナイヨ」
「やっぱりそうなんですね……これから拘束するか」
今、拘束するっていった!?
ミリネはボソリと呟いたが、はっきりと拘束するという言葉がはっきり聞こえた。
「復讐もいいですけど、本来の仕事を忘れないでくださいよ」
ミリネは私に呆れたような、恨めしそうな表情で言うと私の手を掴む。
「うへぇ~」
「うへぇ~じゃありません、ほら執務に戻りますよ」
溜まっているであろう書類に項垂れている私にミリネと共に執務室へと戻るのだった。
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