破王姫

ゆうき±

序章世界を滅ぼす魔王

第1話 世界を滅ぼす魔王

 私事ミラは目の前の人間の首を掴む。

 理由は情報を聞き出すためだ。 


「ゼンを殺したのは誰?」


 私事ミラは情報を聞き出すため、目の前の人間の首を掴み問いかける。


「し、知らねえ!!」

 

 そう言って答えない男の首に込める力を強める。

 命の危険が迫ったら 命が惜しいか口を割る。


「本当に知らねえんだ!!」


 本当に知らないか。


 目を覗き込むと、嘘を言っているように見えなかった。

 ここまでされてこの表情は吐かないのなら、もはや答える気がないか本当に知らないかだ。


 ここも外れか。 


「だったらゼンを殺したのを知っている奴は?」

「知らねえって!! ゼンってのが死んだのは弱かったから……」


 あ、しまった

 彼の言葉に魔力や込める力を強めてしまった。

 ゴキッと鈍い音を立てて男は力なくぐったりとしていた。


「はぁ、悪い癖だわ」


 ん?

 物陰から気配がする。

 私は握っていた男の亡骸を茂みに投げ捨てる。


「ひぃ!?」 

「あら、丁度いいわ」


 物陰に怯えたように息を殺していた兵士を見つけ、ゆっくり近づく。

 こちらに気づかれたと思った兵士が絶望の表情を浮かべる。

 これなら、脅す必要もないか。

 戦う意思がまるで感じられない。

 下っ端も下っ端、新入りと言った所か。


「貴方、生きたい?」

 

 私の言葉に兵士は生き残りたいのか、必死に首を縦に振り続ける。

 情報はなかったが、新米兵士なら使い道はなくはない。


「だったらお願いがあるの。 そっちに帰還したら、貴方の出来る範囲で魔王ゼンについて調べてほしいの」

「えっと、それは」

「安心して、出来る範囲でやってくれるだけでいいから」

「な、何を!?」


 私は彼の首を握り、魔力を込める


「すぐに終わるから、大丈夫……」


 必死に生きようとじたばたしている。

 殺しはしない、ただ裏切れないようにするだけだ。


「あがっ!!」


 やがてその声は苦痛に歪められていき、ジタバタと苦痛から逃れようと必死に暴れている。

 次第に男の首に文様が現れる。


「命令……魔族以外に私と繋がっている事は口外禁止、口外したり繋がっていることがバレた場合も自害する事」


 そう言うと、光を放ち紋様が消える。

 先程行った魔法は奴隷魔法で、目の前の兵士が私の事を裏切った場合、先程の命令が強制的に実行される魔法だ。

 裏切れば即死することになる。

 私はゆっくりと優しく兵士を下ろすと、彼は苦しそうに咳込む。


「これで、貴方は私の共犯者……生き残るには私に協力するか、騎士をやめるの二択……どうするかは貴方が決めるといいわ」


 そう言って私は何が起こっているのかわからない放心状態の兵士を放置して立ち去る。

 これで内通者は十か……。

 生き残っているのは兵士の中で数十名。

 今まで数十名の内通者が居たが、今はもうこれだけになってしまった。

 中にはやめて田舎に帰り穏やかに暮らしているが、多くは正義感か間抜けで自害してしまった者だ。


「いつになったら見つかるの」


 私は血に染まった空を見つめ、溜息を吐くようにそう吐き捨てる。

 戦争はどんどん激化し、苛烈になっていっている。

 多くの種族が犠牲になった。

 私が言うのもなんだが、この世界は血に染まりすぎている。

 あの人の、ゼンと呼ばれる私の大切な人がこの光景を見たらどう思うだろう?

 きっと、私に呆れる事だろう。

 彼の理想とは程遠い復讐を行おうとしてるのだから、当然と言えば当然だ。

 だが、これは遂行しなければならない。

 じゃないと、私の気がおかしくなりそうだから。

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