第10話 包囲網
なんか、視線を感じるなぁ~。
そう思いながら窓の外を見ると、複数の部下が等間隔に配置されていた。
あれは、ミリネの親衛隊か。
左の魔族軍の紋章に対し、右にミリネの似顔絵の紋章の服を着ているのは親衛隊の証なのだ。
ミリネ、本気だな~。
絶対にここから出さないという本気を感じる。
出ようと思ったら出れるんだよなぁ~。
「さて、トイレいこ~っと」
そう言って私専用の個室トイレへ向かい、扉を閉める。
そこに便座を下ろし、水を流し魔力を集中させる。
すると、便座から魔法陣浮かび上がる。
「……誰かいる?」
ミラがそう問いかける。
しかしその空間はミラのみで誰も出てくる気配がなかった。
「リン? ラン? 出ておいで~」
そう呼びかけると、天井に蜘蛛の巣が張ったかのようにリンがいた。
それ、やめてほしいんだよな~。
「ばれてしまいましたか、流石ミラ様です」
「いや、人のトイレに入ってくるのは流石にやりすぎじゃない?」
正直、誰かに見られるのは恥ずかしさの極みであり、私にそういう趣味はないのだ。
「ミリネ様より、例えトイレであっても目を離すなと言われておりますので」
普通、そこまでするか?
「ところでランは?」
「ランはトイレの前に待機させてます」
ランも来てるのか。
「ここまでしなくていいんじゃない?」
「いえ、これが私の仕事ですので」
「貴方も嫌じゃない? 自分がもししている所を誰かに見られるのって」
「同性なので、恥ずかしがることはないかと」
いや、そうじゃないでしょ。
同性だからで許される範囲というものがある。
これは、特殊な人間でない限り絶対にそうじゃない。
「それに今、魔法を発動しようとしていたのに言おうとしても説得力がありません」
うぅ、確かに。
この状況において、言及しようにもそう言われては何も言い返せない。
「ミリネ様に報告してもよろしいですね?」
「それだけはやめてほしいな~なんて」
「……任務ですので」
そう言って項垂れながら、私はトイレから出るとリンはトイレに札を張り魔力を込める。
封鎖魔法だ。
彼女の魔力無しにこの扉の鍵を解除することができなくなった。
「これでミリネ様に報告できる材料はそろったのです!!」
元気一杯にランがそう言い放つ。
「そうだね、これがあれば十分でしょ」
「じゃあ、遊びに行こ~!!」
そう言って二人は出て行った。
ミラは初めから彼女達のいる可能性を把握していた。
あの魔法陣は只光るだけの転移魔法陣と見せかけた偽物だ。
本物魔法陣は風呂場であるのだから。
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