第9話 アルベラの憂鬱
「はぁ~」
アルベラは憂鬱だった。
理由はミリネが自信を怖がっている事だった。
「どうしたの? アルちゃん」
ミリネの妹のアニエが不思議そうに彼女に向かって問いかける。
「ミリネの奴、今日も怯えておったな」
「そうだね、アルちゃん緊張すると怖いから」
「だって~、行った瞬間に漏らすなんて思わないじゃない!!」
そう、彼女が入ってしばらくして漏らしているのに気づいてしまったのだ。
「私みたいに接すればいいのに」
「出来ないから、困ってるの~!!」
普段の気高い彼女とは違い、涙目でまるで駄々をこねる子供のようにじたばたと暴れていた。
「よしよし、頑張った~頑張った~」
地面で泣きながら転がっている彼女をアニエは優しく抱きしめる。
すると、アルベラも彼女を抱きしめた。
「よしよ~し、次は頑張ろう? 私も協力するから」
「……うん……」
「えらい偉い」
彼女にそう言いながら撫でると、アルベラは頬を綻ばせて喜んでいた。
「えへへ~」
今の彼女だったら、皆と仲良くなれるのにな~。
本当の彼女は天真爛漫で可愛らしいのをアニエは一緒に居て理解していた。
本心では皆と仲良くしてほしいが、独り占めにしたいと思う部分もあり複雑な感情になる。
そうして二人は互いに何気ない話をして出発の時までいつも通り過ごしたのだった。
「リン・ラン、いますか?」
「「ここに」」
私の言葉に呼応して、二人の黒と白の装束に仮面を被った者が現れる。
隠密系部隊、カゲロウだ。
「お姉ちゃんを監視して、部屋を出たら私に教えて、あと少し足止めもお願い」
「「御意」」
そう言うと、二人は霧のように消え去った。
二人に任せておけば、大丈夫と言いたいところだが、ミラがそれに気づき以前も抜け出した前科がある。
あ、いたいた。
「ちょっといいですか?」
「ミリネ様!? は、はい!! 何でしょうか!!」
「ちょっとお願いがあるのですが、ミラ様の周囲の監視をお願いしたいの」
「ミリネ様のお願いなら喜んで!!」
そう言って彼は嬉しそうに去っていった。
不思議な事に何故か私の事を崇拝している魔族がいるのだ。
まぁ、利用できるのなら何でもいいけど。
そうして私は執務室に戻ると残り少しだった書類が私の身長の半分くらいまで積みあがっていた。
……せっかく終わりかけていたのに、再び溜まった。
「……やるか……」
項垂れていてもたまる一方なのでやった方が早いと思い、書類に目を通す。
資材の調達は、許可。
人員配置は……新人をここに配置して、こいつはこっちに……。
そんなこんなで書類に追われるミリネなのだった。
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