第7話 アルベラの気まぐれ
聞き間違いかな?
「えっと、もう一度よろしいでしょうか?」
「聞こえぬか、ならその耳は要らんな」
そう言って魔力の刃をこちらに向ける。
「アルベラ様」
「何じゃアニエ」
「やめて、ください……」
瞬間、アルベラは魔法を解除する。
「もう一度しか言わん、行くとすればいつじゃ」
私はほっとする。
今アニエが言わなければ間違いなく私の耳は宙を舞っていた事だろう。
深く深呼吸をする。
すると身体の硬直が解け、彼女をまっすぐ見る。
「アルベラ様にも準備がある為、三月後の朝に勇者がいたとされる場所の追撃部隊をお願いしたく」
「……わかった、アニエも連れて行って良いか?」
意外だった。
彼女が誰かを連れて行くなど珍しかったのだ。
「あまり推奨は出来ません、相手は勇者です……アニエは末端候補と言えど、戦闘力はありません」
正直、実の妹を戦地に送りたくないというのが本音だが、それをやると不満が出てしまう為、ある程度危険度の低い安全な戦地に配属していたのだ。
「私を誰だと思ってるの? 安心して、妹の命の安全が我が命に代えて保証しよう」
そう言うと、「これ以上何か言ったら殺す」といった目をしていたのでこれ以上反対意見を出せなかった。
「それじゃ、私は行くわ……ミラによろしくね」
そう言ってアルベラ様は出て行くとアニエはこちらに頭を下げ、ついていった。
「……ふぅ……」
精神的にかなり疲れた。
下の生暖かい感覚がそれを物語っている。
「着替えなきゃ……」
泊まりこむ予定で服を持って着といてよかった。
それにしても、あの感覚未だになれないな~。
魔力の圧を彼女にぶつけられた。
並の魔族だったのなら、一発で意識を持っていかれていただろう。
私も初めての時は意識を持っていかれて、後で漏らしていたそうだ。
そうして気軽と、持ってきていたタオルを水につけ拭いていく。
面倒くさいな。
本当に、急に来訪とかやめてほしい。
彼女の来訪は心臓に悪すぎるので、事前に言ってほしいものだ。
まぁ、彼女にそう願った所で彼女の気分次第なので、無駄なのはわかっているが。
「さて、お姉ちゃんの所に行くか」
ミリネは椅子を拭き地面を拭き終えると、魔法で水を作り出し手を洗い風魔法で乾かすとミラの方へ向かうのだった。
「ミラ様、少しお時間よろしいですか?」
ノックをするが、返事がない。
まさか……。
ドアを開けると、ミラの姿はなかった。
気配はする、どこかに隠れているのだろう。
そう思い、周りを確認する。
布団の下……否、気配が消えた。
「だ~れだ」
声が後ろの方で聞こえてくる。
それと同時に、視界が何かに覆われた。
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