第5話 戦闘

「そこにいていいのか?」


 べリウスは一歩下がると、同時にゼノンは距離を詰めてくる瞬間そう言い放つと、彼の元に魔法陣が発動する。


「くっ」

 

 足に鎖が絡まり、それが全身を回っていく。


「卑怯だな、やっぱり魔族は」

「命の取り合いなら、卑怯もあるまい」


 べリウスは手を翳す。


「終わりだ」


 鎖に拘束され、この魔法が放たれればべリウスの勝ちが確定する。

 しかし、ゼノンという男は笑っていた。

 その声は絶望からなのか、まだ何か手があるのかゼノンという男は不敵に笑っていた。

 周りに気配はない、狂ったか。


「最後に何か言う事はあるか?」

「いう事か、一つだけあるかな」


 そう言うと彼の周りの鎖が音を立てて破壊される。


「君は弱い、少し寝といてよ」


 彼は間合いを詰め攻撃を放ったつもりだった。

 その攻撃は空を切る。

 べリウスからすれば、これは予想済みだ。

 対するゼノンは驚いたように目を見開いている。


「貴様、特殊魔法を持っているな」


 特殊魔法とは魔族や人類に稀に生まれる特殊な者。

 その能力は様々で、強力な能力から日常生活に便利な魔法と様々である。


「さぁ?」


 べリウスは先程の戦闘でいくつか候補を絞っていた。

 もう少し遊んでいくか。


「どうした、来ないのか?」

「残念だけど、逃げさせてもらうよ」


 今ので自分の状態に気が付いたか。

 べリウスは鎖に幻覚草を仕込んでいた。

 それに気づいたのだろう。


「逃がすわけなかろう」

 

 べリウスは魔法を放とうとするが、足元に鋭い痛みが彼を襲った。 


「遊びすぎだよ」


 後ろから声がする。

 刺されるまで気配が全くなかった。


「仕方ねえだろ、僕の指令は足止めだったんだから」

「こいつ、殺す?」

「んや、第三位べリウス、彼は殺すなって言われてる」

「そう、ならそろそろ撤退かな?」

「そうだね、の予定通りだ」


 そう言って二人は去っていく。

 べリウス一人がその場に残される。

 回復魔法をしたいが、あの仮面の人間、面倒くさい刺し方をしてくれたものだ。

 肩の方に突き立てられていたせいか、両手に力が入らない。


 べリウスは口をあけ、魔力を集中させる。

 そして、込めた魔力を一気に空中に放つ。

 魔力の塊は空の上でまばゆい光を放つ。

 しばらくしてべリウスの元にウベルが現れると、彼は青ざめた表情でべリウスに近づき、回復魔法を掛ける。


「帰還する、皆にそう伝えてくれ」

「かしこまりました」


 回復し終えて腕が動くのを確認すると、ウベルにそう命令した。

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