第3話 戦況

「お姉ちゃん、忘れ物はない?」

「大丈夫そう」

「下着、ちゃんと付けた?」

「つけた~」


 そう言って私達は部屋を出て魔王城へ向かう。


「それではお乗りください」

「あぁ、頼む」


 ここからは魔王と配下に戻るこれが日常だ。

 馬車に乗り、ミリネが魔力を込めると馬車は動き出す。


「本日の予定は情報にあった脅威、人類の英雄と呼ばれる勇者についてです」


 勇者、つい最近力をつけてきた人間がいるという話だった。

 勇者の存在が確認されたのは第5位の大魔族のグラナトを退けた事で有名だ。


「勇者か、面倒だな」

「そうですね、南にいる剣豪ゼヒトと大魔導士ミリス、北の勇者ゼノンがいる事で中々攻めにくくなっております」


 今までは剣豪と大魔導士を相手にすればよかっただけだが、ここにきておとぎ話の勇者か。


 勇者は人類の願いによって危機が訪れた際に出てくるとされる人類の昔話だ。

 人類の危機、即ち魔族に負けそうになった際の最終防衛装置だ。

 逆を言えば、私達にとっては最強で最凶、最悪の脅威でもある。


「これにより、第11位タナート様と第15位サハリア様は負傷で戦線離脱、現在奪還に向けて第16位ギース様、第10位のメリウス様が剣豪大魔導士軍の方へ向かい、第三位べリウス様が勇者の方へ向かうと報告がありました」

「単体で大丈夫なのか?」

「えぇ、今の所は問題ないかと」

「そう」

 

 まぁ、べリウスなら問題ないか。

 べリウスはギースとメリウスが二人掛かりでも勝つ事の出来ない魔法の使いなので一人でも問題はない、本来ならば……。

 勇者という存在が未知数なので少し心配ではあったが、今の所はどうしようもない。


「それと第四位のリミック様との連絡が途絶えました」

「またサボってんじゃない?」

「恐らく……ですがお耳には入れておいたほうが良いかと」


 第四位のリミックは実力はあるのだが、どうも面倒くさがりでよくどこかへ消えることが多いのだ。

 他にも第七位のザミール、第九位のベヘリットもよく行方不明になる。


「ザミールとベヘリットは?」

「二人は偵察を行っているようです」

「本当かな~」

「恐らくですが、サボってます」


 でしょうね。

 報告書をそれとなく書いているって所だろう。


「やればできる子達なのにね」

「全くです」


 渡された資料を目に通す。

 今日は各自の報告を目に通し、指令書作成して第二位のライラックと今後の方針を決める会合がある。

 

「以上です」

「わかった、ありがとう」


 今日も疲れるな。


「ゼンの件はどうなってる?」

「調査中です」

「本当に?」

「調査中ですよ、なのに魔王様は勝手に突っ走っていくのですから困ったものです」


 それを言われては何も言い返すことができない。


「ちゃんと調査はしてます、ゲルン達が調査してますからお待ちください」


 ゲルンとは第60位の男だ。

 ゲルンは調査、拷問において右に出るものはいないので彼なら安心だろう。

 

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