第175話 公爵令嬢が現れた!
ヴィオラとユーリが、公爵令嬢であるセレスティーヌを連れて帰ってきた。
セレスティーヌは宰相の娘であり、筆頭貴族である公爵家の娘だ。
学生という身でありながら、アイガー侯爵の反乱の後始末で奔走していると聞いていたが……どうして、開拓村にいるのだろうか?
「さっき、そこで会ったから連れてきたわ。せっかくだから、夕食を食べていってもらおうと思って」
「夜に失礼いたします。明日にでも、クローバー伯爵……レストさんを伺おうと思っていたのですが……」
ヴィオラの言葉に続いて、セレスティーヌが申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「アレ? 俺に用事があって来たのか?」
「はい、例の……頼まれていたことについて、報告しようと思ったものでして」
「あー……あの件か。わざわざ、セレスティーヌさんが直々に来なくても良いものを……」
実のところ、レストはセレスティーヌにとある頼みごとをしていた。
面倒をかけた上に、わざわざこんな場所まで来てもらって……あまりにも申し訳ない。
「えっと……それはすまない。何というか……」
「いえ、構いませんよ。一度、開拓村の方には来てみたかったので」
セレスティーヌが穏やかな表情で笑う。
貴族令嬢であるのはヴィオラやユーリも一緒だったが、セレスティーヌはずば抜けてそれらしいオーラがある。
(エレガントというか、ゴージャスというか……何というか、庶民とは雰囲気が違うんだよな……)
もちろん、ヴィオラ達が貴族令嬢らしくないというわけではない。
同じ令嬢でありながら、セレスティーヌがそれだけ洗練されているというだけで。
もっとも……ユーリだけは間違いなく貴族令嬢っぽくないのだが。
「レスト様、ちょうど夕食もできましたし……座って話してはどうでしょうか?」
プリムラが遠慮がちに口を挟んでくる。
レストは頷いて、ダイニングテーブルの椅子を手で示した。
「とりあえず……座ってくれ。食べながら話そうか」
「はい、ごちそうになりますわ。何かお手伝いすることは……」
「大丈夫です。すぐに準備が済みますから、待っていてください」
「プリムラのスープは絶品よ。ローズマリー侯爵家のシェフに習っていたからね」
プリムラが控えめに手伝いを遠慮して、ヴィオラが我が事のように胸を張って自慢する。
レストと女性陣がテーブルを囲んで座り、そこに料理の皿が並べられていく。
「美味しそうですね。プリムラさんは本当にお上手なのですね」
「素人の真似事です。セレスティーヌ様のお口に合えば良いのですけど……」
「うん、美味しい。さすがはプリムラだな!」
ユーリが率先して食事を食べ始めて、プリムラを褒め称える。
「こちらのスープ、とても良い風味ですね……甘くて深みがあって、まろやかなのにしつこくなくて」
「そうでしょう? プリムラはすごいのよ」
「実際、貴族のお嬢様が自分でここまで作れるってすごいよな。プロの料理人にも劣らないんじゃないか?」
「ほ、褒めすぎですよ……皆さん……」
セレスティーヌに、ヴィオラとレストにも高評価を受けて、プリムラが恥ずかしそうに頬を染める。
とても可愛らしい。推せる表情だとレストは心から思った。
(プリムラは姉のヴィオラに劣等感を持っているみたいだけど……実際、プリムラの方が色々とすごいよな)
ヴィオラは明るい性格で運動神経も良く、魔法の際においても妹に勝っている。
しかし、座学の成績ならばプリムラが上。料理や裁縫などの家事の腕前もプリムラの方が優れており、決してヴィオラよりも下であるとは思えない。
(それに……僅差ではあるけれど、胸のサイズだって……)
「レスト、どうかしたの? 難しい顔をしているけど?」
「レスト様?」
「い、いやっ……何でもない……!」
ヴィオラとプリムラが怪訝そうに顔を覗き込んでいた。
胸の内の邪心を見抜かれたのかと思って、動揺してしまった。
「あー、えっと……セレスティーヌ嬢、例の件について話を聞いても良いかな?」
レストは誤魔化すように咳払いをしてから、セレスティーヌに会話の水を向ける。
「わざわざ、報告に来てくれたんだよな? 話を聞かせてもらえるか?」
「あら、レストってば。セレスティーヌに何を頼んでいたの?」
ヴィオラが首を傾げた。隣では、プリムラも興味深そうな顔をしている。
そういえば……二人には話していなかった。別に隠していたというわけでもないのだが。
「ええ、もちろん。それでは……報告させていただきますわ」
セレスティーヌがナプキンで口を拭いてから、レストの求めに応じる。
「レスト様が引き継いだ王家の財物……ローデル第三王子の遺産について、整理が終わったので報告させていただきます」
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