第40話 筆記試験を受けます
校舎の入口で受験票を提示して、会場に入る許可を貰う。
受験番号ごとに分けられている教室に入り、目的の席に着いた。
王立学園入学試験。平民の部。
最初に行われるのは筆記試験である。
集まった受験生は十の教室に分けられており、それぞれの机についていた。
まだ試験開始三十分前だというのに、すでに教室の席の半分が埋まっている。
(一つの教室に三十人というところか。つまり、受験生は全部で三百人ほど……)
事前に聞いていた情報によると……平民枠の合格者は年によって変わるそうだ。
先に貴族枠での試験が行われて、一定のラインに達した貴族は全員合格。
そして、余った枠の分だけ平民の入学者が合格できる。
(平民枠の受験生、三百人は例年通りだな。合格するのは百人くらいという話だったか……)
いずれも推薦を受けて入学試験を望んでいる平民の受験生だったが、多くは不合格になるらしい。
合格率が低いのは、下位貴族が学園内に付き人連れていくため、若い使用人に片っ端から推薦状を渡して受験させているためだ。
高位貴族であれば使用人の質が高く、確実に合格できる人間を受験させられるが……下位貴族はそうもいかないため、下手な鉄砲というわけである。
レストは予備も含めた筆記用具を机の上に出して、何度も深呼吸をして心を落ち着ける。
そうして待っていると、やがて教室の前方の扉が開いてローブ姿の女性が現れた。
不正防止のためだろう。教室の後ろにも男性の教員らしき人間が現れる。
「これより王立学園入学試験、平民の部を開始いたします」
どうやら、試験開始のようだ。
レストが緊張から背筋を伸ばした。
「最初は筆記試験です。筆記試験は全学部共通、時間は三時間。不正行為をした方は例外なく不合格となります」
全員に裏面にした答案用紙が分けられる。
机の上には屋敷から持ってきた筆記用具。準備は万端だ。
「それでは、試験開始。答案用紙を表にして解答を始めてください」
受験生が一斉に答案を表にした。
レストも筆記用具を片手に、問題を解き始める。
(最初は歴史の問題か……『アイウッド王国建国に尽力した五名将の名前を記載せよ』)
勉強したところだ。すぐさま解答を記入する。
答案用紙に並んだ問題はどれもローズマリー姉妹と一緒に学び、身に付けた知識で解けるものだった。
(ヴィオラとプリムラには本当に感謝だな……おっと、こっちは魔法の問題か。『賢人議会の理事をしている十二人の賢者のうち、百年以上、その地位に就いている人物を全て述べよ』。答えはヴァン・ウォーリー、ヌアダ・ケディス、カネヒラ・イチジョーの三人だな)
得意分野の問題だった。
それなりの難問ではあったが、サラサラと答えを書き込んだ。
試験開始から二時間を経過した頃には、全問正解とは言わないまでも九割方を解くことができた。
(筆記試験の合格目安は六割以上の正解だったっけ……これなら合格間違いなしだな)
『レスト! 終わったら、ちゃんと見直しをするのよ!』
『レストさん、記入欄がずれていないかも確認してください。油断大敵です!』
昨日、ヴィオラとプリムラから言われたことがフラッシュバックする。
レストは苦笑しつつ、「了解」と口の中でつぶやいて見直しを始めた。
余った時間で答案用紙全体をしっかりと見直して、名前や受験番号に間違いがないかも確認をしておく。
この辺りは前世のテストと変わらない。
合格だと確信した時こそ、しっかりと確かめなければいけないのだ。
「そこまで。試験終了です」
やがて時間がやってきて、レストは深く溜息を吐く。
すぐさま試験官が答案用紙を回収する。
「ま、待ってくれ! あと少し、あと少しなんだ……!」
「ほら、さっさと提出しなさい!」
最後まで執念深く、答案用紙に書き込む人間がいるのも前世のテストと同じである。
中には、試験官から「早く出さないと不合格にするぞ!」と一喝されている受験生もいた。
(手応えあり……出来ることはやったな……)
「ああ! 名前を書き忘れた! ちょ……答案返してえええええええええっ!」
教室の隅から哀れな叫びが聞こえるが、レストは我関せずといったふうに瞳を閉じたのである。
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