第四話・魔王代理は人間の村へ行くことになりました
「え? いつからバレていたんですか?」
俺と黒騎士はオークを問い詰める。
「いや、だって体格も声も、何よりも俺らに対する接し方が違うし、すぐバレるよ」
「最初に城に乗り込んできたときから、もしかしてバレていました?」
「初見でわかったんだが、言ってはいけない気がして…。だって、黒騎士様も修道女様も、大真面目な顔をして、よくわからないヤツを魔王様って呼んでいたし…」
恥ずかしい…。バレているのに、俺は兜をかぶりマントを羽織り、魔王然としていたのだ。俺と黒騎士はその場に突っ伏した。
「ま、まぁいいじゃねえか。それくらいの働きはしてもらったんだから。でも、何故そんなことをしたのかくらいは、説明がほしいな」
「わ、わかりました…。近いうち、ちゃんとみんなに理由を話します」
「頼む。まぁそれはいいんだけど、ちょっと別の話なんだ。俺たちは元々農耕で生計を立ててたんだが、今は元手がない。どうしたものかなと思って。すまんな。こんなこと、宴の最中に言うことじゃねぇんだが」
確かにそれは俺も考えていた。農業のことは何もわからないが、さすがに育てるものがないと、何も実入りがないことくらいは知っている。
「黒騎士さん、お城にはなにか、金目のものというか、貴金属の類いはありませんか?」
「確か、蓄えが多少はあったと思う。この際だ、オークも一緒に来い」
その道すがら、これからのことをオークに話した。
「今の竪穴式住居は正直言って、これからちゃんとした住居を作るための仮住まいです。オークさんたちが元々『魔界』で暮らしていたのは、どんな作りでしたか?」
「俺たちの家か。どちらかというと、丸太造りのほうが多かったな。石やレンガ造りもあるにはあったが、木造の家は工期が短く済むから」
ログハウスみたいな家が多かったということか。
「着いたぞ。とりあえず、ここが我が城の宝物庫だ。まぁ、元々非常時用に取っておいてあるものだから、使ってもお叱りはないだろう」
金銀財宝とまではいかないが、見たことのない装飾品に華やかな工芸品などなど。これを使って農業や工具など、必要なものを購入しないといけない。
予め、飛行の出来る魔族たちに周辺一帯の地図を、簡易的ながら作ってもらっていた。これによると、ここから北の方角に人間の住む村があるそうだ。徒歩で往復三日ほどだろうか。少し距離がある。
「近いうちに、人間の村にそのお宝を持っていって、売れるかどうかやってみても良いですか?」
「構わないが…一人では行くなよ。なんなら私がついていくぞ」
「俺もいいぞ。ここに来てからこっち、遠出なんてしてないからな」
言うと思った。気にかけてくれるのは素直に嬉しい…が。
「ダメですよ。『魔王』と一緒に黒騎士さんやオークさんといった上層部が一気にここを空けると、みんな不安がるでしょ。集落の人かお城の人、どなたか一人見繕ってもらえれば」
少し残念そうな二人。
「まぁまぁ。とりあえず、今日は宴を楽しみましょう。また明日から、いろいろやってもらうことになるかもしれませんしね」
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