第10話 落ち着くところに

 ギベルト殿とサティーナを拾い、ケルベロスに乗せてヒッパシス大森林を抜けて外に出ます。揃っていた近衛騎士達がどよめきました。

「結局私は……」ユーゴ殿がぶつぶつと文句を言っています。「噛ませ犬だったのか」

「いいえ、貴方は既にキーラの伴侶の一人ですわ」

私はそう告げて、隙あらば私とエドワード殿に甘えようとするケルベロスを目で叱ります。

「お肉が欲しいでしょう?今は大人しくしていて下さいな」

『ニク、ニク!デモ、オレ、エドワード、ユリア、スキ、スキ』

「これじゃ怒れないよ」

エドワード殿は甘いのです。

「躾はきちんとしなければためになりませんよ」


 近衛騎士達を率いていたダダスが私達に気付いて前に進み出ました。

「ご無事で良かった。して、そちらのダンジョンボスが……」

『GUROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

やる気のある咆哮を上げるケルベロス。

「はい、ユーゴ殿が見事に倒し、御しております」

エドワード殿が言うとダダス卿は感嘆の目でユーゴ殿を見ました。

「おお……!しかし不機嫌なご様子ですが……?」

私はすかさず補います。

「ケルベロスと戦う時に、何度もキーラを危険にさらしてしまったのよ」

「何と、まるで騎士のような立派な心構え……!変な噂に惑わされて貴君の真の姿を見ずに申し訳なかった……!」

ダダス卿には申し訳ありませんが、そうしておきます。


 「ねえキーラ」

帝都へ戻る馬車の中、私は彼女に頼みました。

「サティーナ様だけれども、帝位継承権を返上させた上で、見目の良い皇族か王族か貴族に降嫁させるのはどう?」

キーラは嫌そうな顔をします。私とキーラも仲が悪いのですが、サティーナ様とはもっと不仲なのです。

「どうしてですの?」

「キーラだって反抗的な虫はまとめて叩きたいでしょう。甘くて美味しい果物が間近にあれば、そういう虫は寄って集まってくるもの」

頭が空っぽなサティーナ様を中心に反体制派が集まったら、一斉に叩き潰せる。

私が暗にそう提案すると、キーラも納得できたようです。

「そうね、それならいいですわ」

「……私、美しい方と結婚できますの?」

それまで落ち込んでいたサティーナ様は、ぱっと顔を輝かせます。

「まあユリア、キーラありがとう!」

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