第4話
オレはどうにかして、大虐殺という暴挙を止める事に成功した。しかしチャット越しとは言え、非科学的な連中と関わることは、かなり消耗させられた。
しかし、ここで終わりではない。まだまだ奴らの戯言に付き合う必要があった。
ピロリ。
――私メリーさん。終電を逃したけど、これから貴方の家に行くの。
――たはは。お兄さんに怒られちゃいましたね。
――まさかニンゲン如きに説教される日が来るとは。斬新。
――それよりもさ、2人とも。もう電車がないからタクシーに乗りたいんだけど。
――ふむふむ。もしや、気にされているのは予算でしょうか?
――そうなの。タクシーってね、電車よりずっと小さいのに、お金はたっくさん必要なの。変だよね。
――と言う切実な事情です! キールさん、大変恐縮ですが、有り金を全部貸してください!
――急に言われても困る。私は7百円しかない。
――私は2百円かな。ウガちゃんは?
――面目ない。一銭も持ち合わせておらず。
――うぅん。合わせて千円もいかないよ。心もとないなぁ。
――ではメリーちゃん。ここは応援を呼びましょう。路銀はお友達に借りればよいのです!
――ホント? 助かるなぁ、さすがはウガちゃんだね!
――ではご登場いただきましょう! 貧乏神のボーエンちゃんです!
――どもども。ボーエンと申しますッス。マジよろッス。
――あのね、いきなりで悪いんだけど、お金貸してくれない?
――お安い御用ッス。2千円ほど持ってきたんで、役に立てて欲しいッス。
――凄い凄い! これだけあれば、生田まで行けると思うよ!
――そんじゃあタクシー拾って来るんで、皆さんのお金もアタシが預かるッス。
――うんうん、ありがとうボーエンちゃん。お願いね。
――では、ちょっくら行ってくるッス。
――駆け足速いなぁ。もうあんな所に?
――ふふっ。ボーエンちゃんは気さくで良い子ですから。張り切ってるみたいですね。
――みなさぁん。お待たせしましたッス〜〜。
――早かったね。タクシーは見つかったの?
――大通りに出ようとしたら、その途中でチキン屋を見つけて。そしたら大セールやってるらしくって。
――言われてみれば、香ばしい匂いがするよね。ちょっぴり気になってたんだぁ。
――だから奮発して買っちゃったんスよ。税込みで2千8百円もしたんスけど、お陰でこんなに沢山買えたッスよ!
――わぁぁ美味しそう! ちょうど小腹が減ってたんだ、皆で食べようよ!
――さすがはボーエンさん、抜け目ないですね! コレはとてつもなくオトクなセットですよ!
――鳥さんは私も好き。食べる。鳥さんは死して美味しいお肉になるのに。それに引き換え、ニンゲンどもと来たら。
――まぁまぁキールちゃん。今は細かいこと忘れて、美味しく食べましょうよ。
――いやはや、マジ旨ッスねコレ。こんな料理を考えついちゃうなんて。これだからニンゲン界に降りるのは止められないんスよね!
オレは、雪崩のように届くチャットを見ては、唖然とした。本題はどうしたのかと。目的を忘れんなと、ついつい打ち込みそうになる。
だが、オレが口を挟むより先に、新たなメッセージが届いた。
ピロリ。
――私メリーさん。唐木田まで迎えに来てください。お金は全部使っちゃいました。
親御さん、唐木田! 今回は大所帯ですよ!
ー完ー
【短編】メリーさん、やっぱり辿り着けない おもちさん @Omotty
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