第82話 裏:合宿五日目。私、無慈悲な無双劇



 極国の兵士の残りを捕縛、会長の手配した人によって連行されていった。


 それを見届けた私も帰ろうと思っていたのだが、まぁそうは行かず、大人しく協会へ戻ることになった。


 協会本部へ帰ってくると、来たときと同じような出迎えで「お疲れ様ですッ!」なんて、叫ばれたりしたが、それ以外は特になく、会長と話した。


「さて、お疲れ様です宵闇さん」

「はいはい。もう帰っていいのか?」

「残党狩りはこちらだけでも何とかなりますから構いませんが……」


 ……なんで含みのある言い方なんだ?


「実は工作部隊は全国に散ってるようで、それで、できれば宵闇さんにやってもらえると」

「やっ」


 なんで私が会社の仕事でもないことで残業しないといけないの!


「そうじゃないと各所への影響が出てしまうんです!」

「……おい、それって私に関係のある各所か?」


 無言で頷くので、思わずため息が溢れる。

 つまり、うちの子たちにも影響が出そうってことだな。

 それで私が怒る前に私にやらせようってことか。


 さて、その場合私が動く事は必然になるのか。

 ……だが、数も多いし面倒だな。

 そもそも、今回の件は政府の連中が外交とかトロトロやってたからだろうが、あと防衛に関して優柔不断にしてたからだろがい。


「……いや、そもそも今の時代で無駄な争いをしようってなる国が邪魔だな」

「あの、宵闇さん?」


 聞こえん。

 無駄な争い、戦う相手は魔物だけにしとけっての。人は争うものとはいえなんでわざわざ永続的なリスクを背負ってまで国土や権利を取ろうとする、自分で責任なんか取れねぇくせに、最終的にそれで滅ぶくせに。


「あ〜考え出したらイラついてきたわ」


 よし。決めた。


「この際だから、全部まとめて躾けてやろう」

「宵闇さん!?おーい、私の仕事増やす気ですか?あれ?聞こえてない?お、おーい!」


 となると、全部どこか一箇所に捨てた上で徹底的に反抗心を潰えさせその恨みや屈辱を次の世代に継がせないようにしないとな。

 もちろん、滅ぼしたりなんかしないさ。

 大事なリスナーがいるからな。

 ただ争いはやめましょうよ!時間がもったいないするだけだから。


「とりあえず最初は目先の極国から始末だな」


 よし、一日だ。残りの国も含め合宿が終わる前までに終わらせるぞ。

 そのためには……準備はいらねぇな。

 今回は別に九重はいなくてもよさそうだし、変に考えず叩きのめすだけで良さそうだからな。


「時間は有限、時は金なり。この夜が明ける前に極国は全て沈める」

「あ、駄目ですね。宵闇さんを説得するより政府の人を説得するほうがよさそうですね」


 背後で困った表情をしてる人を無視して、一目散に部屋から出て、殲滅の旅へと出発した。


 まだ夜は、あけない。




 ある都内のビル、その一角。

 そこでは極国の工作員が、指示を出していた。


「先ほどから本体との連絡が取れません」

「むぅ、まさか、宵闇霧江がもう」

「まさか、各所に宵闇霧江の関係者にちょっかいを出しているのに、それを全て無視して、本体を潰しに行くなど……」


 そんな悪い空気が流れるそこへ、私は現れる。


「そうなの、私、それを全て無視しちゃったの」

「「えっ?」」


 声が聞こえて振り向いた時にはもう遅い。


「8.9秒」

「……な、何の時間だ」

「それがお前らの絶望までのタイムだ」


 そうしてジャスト8.9秒、無音のままビルは中にいた工作員もろとも吹き飛んだ。

 もちろん、瓦礫は残しませんし、ちゃんと無関係の人間への配慮はしてますよ?

 じゃないと5秒以上かかるわけがないのだ。


「さて、とりあえず本部と指示役は消したんで、あとは有象無象の群れだ」


 そんな感じで、十分かそこらの時間で立て続けに各地で爆発や悲鳴が上がったという。



「あ、相手は一人だ!囲め!」

「いや、囲まれてんのはお前らだわ」


 ◯空包囲弾!じゃないけど、そいつらの周囲を魔法の炸裂弾で包囲して一斉砲火した。



「これからこの国は我らのものになるのだ!」

「ここにてめぇらのものなんか、一つも、ねぇんだよぉ!」


 腕を一振りすれば、魔弾が無数に放たれ、その弾丸は彼らに無数の小さい穴を開ける。致命傷以外なら生存できるくらいの小ささだ。

 まぁ、歩けはしないだろう。


「くっ、これでもくらぇぇ!」


 そんな残った魔法使いの人間が最後の抵抗で魔力球を投げつけてくるので、気にせずキャッチ。


「ぼ、僕のだぞっ!」

「じゃあ返すわ」


そしてそれを投げ返した。爆ぜた。

あいつは馬鹿なのか。



「てぇっ!」

「ほい」

「ぐわぁっ!?な、なぜだ!完全に死角だったはず!」


 ただただ走りながら、的確に身を隠す奴らに一発魔法を打ち込んで沈めていく。

 岩の裏や地面の中、水中やそこらに身を隠したくらいで私の死角を取ったなんて、思い上がるなよ?

 え?普通は死角の人間をノールックで撃ち抜けない?白い悪魔は普通にやってたぞー。私だけじゃないぞー。



「ま、待ってくれ!お、俺には家族がっ!」

「私、結構平等主義なんだ」

「そ、それがどうかいたしましたか?」

「えっ?だからみんな平等に私にひれ伏せ」


 そうしてそいつの頭を踏みつけ、ついでにたまをドライブシュートした。頭じゃないぞ。

 そいつは星になった。

 ちなみに私は平等主義ではない。だが、その言葉は色々と便利で好きだよ。


「さぁ、みんな平等に、そこをなくしましょうねぇ?」

「「「い、嫌だぁぁぁぁぁ!」」」


 その後無事、その場の人間全員星となり、漢となったのだった。



「や、やっ、やぁっ!」


 最後の方はこんな感じで悲鳴なのかなんなのかわからない声を上げる奴らばかりだった。

 まぁ、命乞いを聞いてやるつもりは毛頭ない。


「その根性、叩き直してやる」


 近場にちょうど落ちてたサッカーボールを拾って、火の魔法と合わせて……


「ファイヤキリちゃんトルネード」

「ぷぎゃぁっ」


 ほんでもって、もう一発今度は魔法の出力上げて〜


「爆霧ストーム!」

「わぁ、わぁっ!?わぁぁぁぁぁ!」


 チュっどーん


 丸焦げになって木の棒に布団みたいに吊るした。

 もちろん、サッカーボールに殺傷能力はありましぇん。

 実害は焦げただけである。



「もう、もうやべばじょうよぉ!命がもづだいなぃ!」

「お前が言うなよ」


 とりあえずマグマフィスト。


「この戦いを終わらせに」

「来たのは私だよ」


 もっかいマグマフィスト。


「よ、よくも我らの同志を!人間は死んだら二度と生き返れないんだぞ!」

「死んでねぇよ」

「栗散歩のことかぁ!」


 ブゥゥゥン(重低音)シュワーー


「マジで誰だよ、栗散歩って……」


 というか何の下りだよ、今の。

 そんでもって、なんでかわからねぇけど咄嗟に消し炭の魔法を使っちまった。

 あっ、髪が炭になっただけで、ちゃんと生きてるぞ。多分。


「お、お前は、俺にぃ、殺されるべきなんだぁ!」


 そうして髪を炭にされたそいつは苦し紛れか何かの魔法を放ってくる。


「バカヤローーー!」


 そんな魔法打てば、反撃しちゃうだろぉ!

 魔法、というか魔力だけで押し返しそいつを吹き飛ばして海に沈めた。

 マジで、何もしなきゃそんなことにならなかったのに、バカヤローだよ。


「モロタで宵闇ぃ!」

「バーロー」


 オメェも見逃してやったのによぉっ!

 倒れたふりをして私に一矢報いようと立ち上がって剣を振り上げたやつに、小さな魔法の針を打ち込んで昏倒させた。

 原理は魔力を一気に流されたことによるもの。それだけである。



 そんなこんなでその日のうちに極国の工作員、その全てをしばき、全員纏めて豚箱に送った。


 そして五日目の合宿配信が始まる前に事務所に戻って寝た。

 事務も後処理も全部丸投げして一人ゆっくり眠るのなんかいい。

 サボってないもん、むしろ働いたもん。あとはお前らの仕事だもん。


 そんな免罪符のもとゆっくり眠りにつくのだった。




・・・・・・・・・・

後書き


衣替え、してました。

オマケで部屋の模様替え(本やらフィギュアなどの配置換え)。

そんでもって朝が億劫過ぎてもう……よし、言い訳終わり。


今回は深夜テンションで書いたからかどこかで聞いたようなネタばかりなのは勘弁してください。


ちなみに平等主義の下りは、ホントはスティールしたかったが奪うものがなかったので、大人しくドライブシュートした。

その下りでファイヤトルネードした。ついでに散歩さんを消し炭にした。キリちゃんトルネードはウォッチネタ。

あとバカヤローはどっちかと言うと金髪の人というよりかは白い狐のあの感じです。まぁ、言い方とテンションが違うだけ。ネタは金髪の人。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る