第79話 裏:合宿四日目、全面対決前夜
九重に白と黒の魔法を教えたその日のその足で、私はin◯リーを口に加えて飲みながら、冒険者協会の本部、その前まで来ていた。
ちなみに本部は幕張辺りにある。ちなみに官邸は今も昔も同じ位置だ。
地理とかはどうでもいいから置いておくとして、今私はそこに来ているわけだが
「電話の内容的に、残業確定だな」
あのときかかってきたのは会長からお願いの電話だった。
何でも、極国が動き出したそうだ。
かなり急に動き出したため、こちらも対応に遅れが出ているとのこと。
「はぁ。面倒だ」
確かにあの国は侵略を目的にしてるが、なんで今動き出すよ。……いや
「まぁ、極国が暗躍してるってわかってた時点で、私も色々と手を回してるんだがな……」
それのせいだよなぁ、したら私も悪いかぁ。責任取らないとな。
ちなみに、その手回しというのは合宿だったり、工作員の排除だったりするんだけど。
工作員はたまたまいたからとりあえず排除しただけだが、合宿には裏の意図があったんだよね。
私という力を警戒して見ているのだとしたら組織ならどうするか。
一つは私を無力化する方向。
もう一つは私自身に手を出させないこと。
無力化は、まぁ無理だろうな。
できるんならとっくにやってるだろうし。
手出しさせないは案外簡単で、取り引き脅し、まぁ色々とあるだろう。私には結構あるからな。
その中でも一番わかりやすく一番確実なのは、Sumaの従業員、または配信者を捕まえて人質にすること。
そうされるともちろん私は手を出せなくなる。
「それをさせねぇために、今回は軽くだが手を回したからな」
まず、狙いとして簡単なのは社員。会社に行けば必ずいて、かつ一般人で拘束も問題にはならないだろうよ。
次にVtuber。同じく一般人だが、身バレ対策は徹底しているから位置に関しては社員よりもバレにくいがそれだけだ。
最後に冒険者、それもランクの低い子たちだな。翔たちは問題ない。むしろ防衛の戦力として数えるわ。
それの対策として、合宿に色々と手を加えた。
一つはSumaの抱える強者、翔たちの位置を固定し見えるようにする。シマミが映ったのはたまたまだが問題ない。
これで同行を見つつ、特訓と称し実力に不安のあったユキナ辺りを任せつつ、一部社員もここに置いている。要は囮をしながらも守らせる。
もう一つは九重だな。
九重は割と切り札だ。ワープは貴重で、いつどこにでも行ける遊撃要員。
何かあればそこに飛んでいくように言ってある。会社は私の作った本気結界があるから最低でも五分、最大でずっと破られることはない。接触したタイミングで九重をワープさせれば会社は問題ないだろう。
その確証があるから、あえて今は会社を開けている。
……ちなみにそういう役割をさせるだけあって、今はみんなで会社で泊まりをしている(させている)。一週間ぶっ続け配信なんてやることが、ね。仕事がいっぱいあるんですよ。
買い出しは九重がやってくれてるし、一週間は我慢してもらおう。
私だって忙しいんだからな。
とりあえずこの二つは仕込んである。他にも光子とか色々と手は加えているが、初期プランの仕込みはこの二つ。
傍から見れば無防備に見えるのかもな。光子も南のダンジョンを開けてるし、攻めるには絶好のタイミング。
人質は攻める直前に取れば良いとでも考えるのならな。
だから「なぜ今」、じゃなくて「今だから」が正しいな。やっぱり、なぜ今って疑問はおかしかったか。
なんなら私が攻めるように誘ったまであるな。
「……というか、もしかしなくても配信事故起こさなきゃもう攻めてきてた可能性あったり、する?」
……まぁ、そんなわけないか。
「じゃ、どうするか、話を聞きに行きましょうかね」
私はそんな長い長い思考を止めて、目の前の協会本部の扉を開いた。
「「「お疲れ様ですっ!」」」
……入った瞬間、まるで組長でも迎えるようなカーペットの端に沿って立ち並ぶ、スーツ姿の中年以上の男たちが背筋を伸ばして大きな声で私を出迎えた。
ほんで、そんなスーツ姿の中年たちが、この国の政府の人間たちだった。
「……おう、お疲れ」
この国のトップたちが揃いも揃って冷や汗を流しながら、一介の社長に頭を下げる光景は……私からしたらもう慣れたものだった。
かつて私を取り込もうと色々と悪いことをしていた生奴らは全て私が尊厳から存在意義まで破壊し尽くした。
結果、過去一まともな(まぁ、もともとまともだったけど)政府が誕生したわけだ。
あっ、一応言うが私は政治には一切関わっていない。関わるだけ無駄というものだからな。
関わるのは私たちに超不利な何かが起きたときだけ。例えば冒険者は有無を言わせず他国の侵略の道具として扱う、みたいな。
「お疲れ様です、宵闇さん」
「会長もお疲れ。で、要件は何だ」
「はい、電話口でもお話しさせていただきました極国についてです」
……会長によると、極国はすでにこちらの国へ侵攻を開始。軍の数は一千万。
そのほとんどが冒険者だ。例外は指揮官とかそういうポジションだけで、一千万もの冒険者が物量で攻めてくるわけだ。うちの国はダンジョンかっての。
「それで、私たちに勝てると思っているのか?」
「さぁ?」
だが、それに対して恐れることも驚くこともない。むしろこの程度で驚けるかっての。
ランク6相当が十人いますとかなら話は別だが、そんなこともない。
仮にいたとしても私を超えることができなければ話にならないだろうよ。
「少なくとも、宵闇さんの周囲で色々と暗躍してるらしいですが」
「対策は立ててある。家の誰かが人質にでも取られたら私は手を出せなくなるからな」
下手したら手を出させなくする可能性すらある。
「愛国心とかはねぇけど、今のところは幸せに暮らせてるし、色々と都合がいいんだよ、この国は」
だからなるべく海外に逃げるなんて手段もなければ、この国を捨てるなんてことは最終手段だ。
それに、守るべき子たち、守るべき場所がある。それだけで戦う理由は今のところ十分だ。
「んで、具体的にどうすんだ?私が殲滅すりゃ良いのか?」
「そうですね。できればそれで、もちろんこちらからも何人か寄越しますけど……いります?」
「……いらないな」
一人のほうがやりやすいからな。
「では、二時間後に彼らは上陸するそうです」
「撃ち落とせばよくねぇか?」
「まだ海域に侵入しただけで撃墜すると、こちらの正当性が危ぶまれますね」
だけではねぇだろ。その時点で完全に侵略行為だろ。まぁ、政治的観点から下手な選択は取れないってことだろうけどよ。
「じゃあ、地を踏んだ時点で滅ぼせば良いのか?」
「少なくとも軍隊が我々の国の地を踏んだのならそれは侵略行為と誰もが認めるでしょう」
軍隊が国境を許可なくまたいだら誰がどう見ても侵略行為では?やっぱ今の時点で沈めちゃう?
「まぁ、そっちの分野は専門外だ。好きにしてろ。その代わり、私の戦いに口は出すなよ」
「わかってますよ。では……」
バンッ
そうして話が終わりかけていたその時だった。
勢いよく部屋の戸が開けられ、一人の人間が飛んできた。
「なっ!?どうしましたか!」
……気配が急に現れたな。
「おい、会長はお守りを頼むぞ」
私はすぐに何が起きたのかを理解し、この場を会長に任して叩き上げられた扉の先に出た。
そこには、筋肉の塊のような2メートルを軽く超えている大男とローブを深く被った少し埃っぽい男の二人が立っていた。
まぁ、今のタイミングで協会本部に強襲する人間は十中八九極国の人間だろうな。
「一応聞いとくが、何のようだ?」
「……おい、なぜここに宵闇霧江がいる!」
「……ホントに子供みたいな女だな。こんな奴がホントに強いのかよ」
元気の良い二人だなぁ。
あ、そういや今の私は小さい方に戻ってる。九重との練習やってる間に戻った。
それはともかく
「誰が子どもじゃい!」
失礼なやつだなぁ!
いきなり現れて初対面の女性に対して子供みたいな女ぁ?舐めてんのかワレェ!
「まぁ、冗談は置いといて、私がここにいることは知られてなかったみたいだね」
というかこの口ぶりからすると私はどこかに誘き出されてる予定みたいな……えっ?何もなかったよね。
「何にせよ、捕まえるか」
私は有無を言わさず、ローブの男に詰め寄り、頭を鷲掴み、そのまま壁に叩きつけた。
「ァがっ」
ローブの男はそれで白目剥いて仰向けに倒れた。
それに念の為拘束の魔法をして、振り向くと大男が迫っていた。
「てめぇ!」
無防備、ただの突進。
「弱いわねぇ」
振り向き少しジャンプして左人差し指を胸辺りに突き出した。
「ゴハッ」
ただそれだけ、大男もローブの男同様に白目を剥いて倒れた。
この間5秒程度のものだ。
ざっとランク4程度の実力だろうな。
だがランク4は普通に貴重な戦力だ。上手いことここでかち合って良かったのかもしれない。
「お見事ですね」
「会長、早く調べろ」
称賛の言葉を一蹴して、さっさと調べるように言う。それを受けて苦笑い気味に二人を連れてどこかへ行った。
「馬鹿な奴らだ。宵闇様がいるのにこの国に攻め込むなんて」
「いや、宵闇様のお力を他国は知らないんだ。だからこんな無謀はことができるんだ」
その一部始終を見ていた一同は口を揃えて「馬鹿なやつ」と極国の人間を憐れむ、のだった。
・・・・・・・・・・・
後書き
設定とか色々と手間取り遅れました。
なお、まだ納得してるわけではないので、今後修正予定。
これ以上は自分が我慢出来ないので(フルボッコだどんタイム)一度これで上げます。
大幅な変更をすることはしない(できない)ので普通に読み進めてもらっても問題ない。
ただ社長は色々と仕込んだ、極国攻めてきた、返り討ちにします。だけを理解してれば大丈夫です。
雑談。
急に秋になった、寒い。
オリパ怖い、金ないなった。
ライブ、行きたかった、ケド良かった。
新作とかやろうか悩み、設定だけ書いてたら朝になった。
昼飯忘れ駄目、絶対。朝昼抜きで三日以上過ごしてたことに気持ち悪くなってから気づく。
以上
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