第76話 裏:合宿三日目。アテナさんの末路?


 庭でばかすかやってるなか、私はスマホで配信を見ている九重と一緒にほとんど土下座くらいまで頭を擦り付けて謝罪の意を見せるアテナから色々と話を聞いていた。

 服はテキトーにシャツと体操服でも与えた。ちょっと可愛いと言うかなんというか、まぁ、そこは置いとくとして。


「で?私を探してたみたいだけど?」


 私が質問を投げると、アテナは小さく頭を上げて恐る恐ると言った感じで話し始める。


「お父様とお兄様がご迷惑をかけたようで、そのお詫びを渡すために今回この地上に参りました」


 ……お父様、お兄様。

 父は確かゼウスか。んで兄?アテナの兄って言ったらアレス、だったか?まぁ、ゼウスの家系図は子供が多いからな、正解かは分からないが多分その辺だろう。


「ゼウスはともかく、お前の兄に迷惑をかけられた記憶はないんだが?」

「実は、兄が色々とダンジョンをいじっていたようで、宵闇さんはそれに巻き込まれる形で被害にあっていたようです」


 あ〜つまりあの不思議現象はこいつの兄の仕業ってことか。


「んで、お詫びで降りてきて、いきなりうちのやつ殺そうとしたわけか?」


 と、話の内容を戻した瞬間。

 再びアテナは、というか今度こそ土下座で私に謝罪の言葉を叫びだした。


「ほんっとーに!申し訳ありませんでしたぁ!」


 ……なんだろう、翔を感じる。強いし、まぁ良い子なのは分かるんだけど、色々と残念臭がするこの感じが。


「うむうむ、やはり我と同じようになるな」

「そういや、九重もこんな感じになったか?お前のときはもう少し友好的だったろ」

「拒否権はなかったがな」


 そりゃ、逃げることを許した覚えはないからな。ワープで逃げても先回りして捕まえるくらいのつもりはあったし。何が何でも従業員にするつもりはあったな。


「それで、本当に詫びのためだけに来たのか?」


 と、冗談は置いといて、これが本命だな。

 わざわざ娘を寄越してまで私のところに謝罪をさせにくるほど暇なわけないだろ?


「えっと、本当にお詫びのためだけです。そのついでにこっちの時間感覚で言う百年ほどの休暇をしてきていいぞって」


 ……あ〜なるほど。


「ゼウスのやつ、気を利かせたな」

「む?どういうことなのだ?」

「本当の詫びはこいつ自身だったってことだ」

「「えっ?!」」

 

 なんでアテナまで驚いてんだよ。

 だって、詫びの品の一つも持たせずただ娘を休暇のついでに詫びのためだけにここまでこさせたんだ。どう考えてもそういうことだろうよ。


「た、確かに、そう言われてみればそんな気がしてきました」

「そんなテキトーで良いのか神」


 ゼウスもゼウスだ、説明の一つくらいしてやれよ。気づかずこのまま放逐してたらどうするつもりだったんだよ。

 いや、私が放逐することなんてないと踏んでのことか?どちらにせよ、良いように使われてるようでムカつくな。


「とりあえず、一週間ほど待て。それからは働いてもらうからな」

「は、はい。何でもします!」

「む、ということは我の後輩!?」


 そうなるな。九重、やけにテンション高いな?後輩欲しかったの?


「後輩ができるということは、我の仕事も幾分か減るということ!つまり!推し活が捗るということ!」


 ……それで良いのかお前は。

 まぁ、一人増えるだけで劇的に変わることではないが確かに幾分かは楽になるな。

 ……その分また色々と仕事が増えるがな。


「さて、アテナさんや?」

「さ、さん?は、はい、なんでしょうか」

「何でも、するんだったよな?」


 そのセリフを聞いて、過去の自分のセリフを思い返して、その上でサァっと顔が真っ青に、というか真っ白になってる。


「な、何をするつもりでござりますがな!」

「語尾めちゃくちゃだぞ〜」

「わ、我の後輩になにをするつもりだぁ!」


 九重、お前もお前だ。気が早いなおい。まだ後輩じゃねぇぞ。

 それに別に変なことをさせようとは思わねぇよ。


「九重 、お前には白魔法と黒魔法を覚えてもらう」


 というか、教えてっていったのはお前だったよな。


「む?それはありがたいが、それとどう後輩が関わってくるのだ?」

「えっ?的」


 何気なく言ったその言葉。何気なさすぎて二人とも目を点にしてそれを噛み砕いて飲み込むまでしばらく無言。

 しばらくして、二人は見合わせて発狂に近い悲鳴?を上げるのだった。



 ・・・


 私はアテナ。

 ゼウスの子で、戦の女神。


 今回はお父様とお兄様が地上にご迷惑をおかけしたようで、その謝罪と久しぶりの休暇のために地上にやってきたのですが……ここはどこですかね?


 魔物と呼ばれる生物が多数生息して、蔓延って……戦いになる予感ですね!


 戦の女神というだけあって、私は戦いが好きです!だから、この状況は大変、嬉しいというかなんというか。

 今回のお目当ての宵闇さんという人はかなり強いようですし、一度お手合わせをしたいものです。

 お兄様も何故か、絶対に神器は持って行けとうるさく言うものですからアイギスの槍は持ってきましたが本気を使うことはないでしょう。


 とまぁ、とりあえず近場の魔物で肩慣らしをしながら登っていったのですが、そこで彼らと出会いました。


 手合わせを望むと相手方は悩んでいましたが、宵闇さんを探してるって言ったら、急に構えたから私はそれが準備完了の合図だと思い、そのまま戦闘へ。



 正直、人間のことを侮ってました。 

 あのククリナイフの男はめちゃくちゃ強い、ということはありませんが、ひたすら隙がなく全然詰めきれません。

 その後合流した弓の女に関してはシンプルに強いです。ククリナイフの男よりはマシですが、この力強さは脅威です。

 更にその後合流した拳の男の一撃は冗談抜きで効いた。


 ここまでやるということは、宵闇さんはどれだけ強いのだろうか、と冷や汗のようなものを内心感じていましたが、それよりも今この三人と全力で戦いたいという気持ちが勝り、本気で戦うことにしました。


 そうなるとやはり勝負は一瞬。勝ちを確信した一振りを放ち、終わりかと思った瞬間、私の槍はいとも容易く斬られていました。

 えぇ、アイギスです。本気を出すにあたってフルスペックだったアイギスを弾くでも防ぐでもなく、中ほどからスパッと……。


 それからは、皆さんご存知の通り裸になるまで切り刻まれて、そのままお持ち帰りされました。


 いえ、わかってますよ?私が悪いのはその通りなんですけど、あの人話を聞いてくれないし、容赦はないし、わざわざ殴り倒すことも可能だったのに剣で切り刻むのも、絶対性格悪いですよあの人。


 とにかく、もう私には許しを請うしかありませんので、頭を擦り付けて誠心誠意の謝罪をするしかないです。

 正直、もう怖いです。本当に反省してます。だから許してください!



 えっ?預けられるの?私、えっ?的?え、え?


 そこからは九重先輩が頑張ってくれたおかげで死にかける前に、終われたということだけを言っておこうと思います。


 ・・・


「……頑張ったな、うん」


 大量の汗を流し、息を切らせながら空を仰ぐ九重を見つめながらそうぼやく。

 練習のために出てきた庭は練習の跡がたくさん残っており、陥没でもしたのかという場所さえある。


 あれから九重は若干の悲鳴を上げながら、驚異の集中力を見せて白と黒の魔法を例のベルトの補助ありとはいえものにしてみせた。

 ナインテイル状態の状態じゃないとリソース的に無理なんだと。


 それでもここまで仕上げられたのは異次元だと言っても過言ではない。

 まぁ、ワープ使えるからかなりできる方なんだろうとは思ったが予想以上だったのに変わりはない。


「よし、これで明日以降は奴ちゃんの面倒は九重に任せられるな」

「えっ?!良いのか!!」

「おう、面倒事が増えたからな。それの後処理をしなきゃだから、奴ちゃんを見てられなさそうだからお前に教えたんだろうが」

「我がお願いしたからじゃ」


 それもあるがな。

 あと、わからないものがあってもワープで聞きに来てそのまま反映できるってのも理由の一つだな。


「そういうわけだから、九重、明日からは奴ちゃんのこと頼むぞ」

「任せるのだ!」

「ついでにアテナのことも頼むぞ」

「モチのロンなのだ!」


 ……絶妙に心配なんだよなぁ。

 常識人枠誰か……あっ、光子がまだ家で寝てたよな。あいつに頼むか。


「あとは……そうだな、配信を今やってるが、そっちに映る、というか混ざる分には問題ない。明日からだがな」

「あの戦いに混ざっても良いんだな!」


 食いつき気味に、というか私を押し倒す勢いで食いついてきたアテナを押しのけながら続ける。


「名乗る時は名前だけにしておけ。間違っても神だとか名乗るなよ」

「それは問題ない!……むしろ、あんだけボロボロにされて神なんて名乗れませんよ」


 ……なんか、ごめんな。


「あと、光子に一応監視役をお願いするからなるべく聞いてくれよ」

「あの弓の子か。それは問題ない」

「というわけで、解散。明日のために休んどけ」


 その場はお開き、私は二人をそのままに一人先に家の中に帰るのだった。



・・・・・・・・・・

後書き


いなくなってからがヘタる。つまり、まだ強気でいます。このあと折れます。今やらないのはそういうことさ。



バーベキュー回とか、食事する回結構やってきたけどそういや配信者の普段の食事事情やってなかったなということを思い出した。

そのうち本編でも話そうかと思いますが軽くここで語ると冒険者組は割と普通な食生活してます。

例を上げるとユウナ、奴、ツクヨミの三人。


ユウナ→コンビニ弁やウーバー。それに加えて体を作るためのサバス(カートン買い)。

奴→自炊。たまにコンビニ弁当。

ツクヨミ→酒中心の自炊。または近くの居酒屋で飲んだくれ。


稼いでるんだけど、なんだかんだこんな感じ。ツクヨミやクスリ辺りはたまに高級な店に行くこともあるがやっぱりいつものご飯が良いし、無駄遣い良くないで結局普通に落ち着いてる。

それとは別にみんなでよく焼肉とか行くよ。


と、こんな感じ。自分用のメモの意味合いも込めて書いときます。……合宿終わったら焼肉だな。社長の奢りでAKMONとかジュジュエンとかで。

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