五章:社長、戦う気なので拳を握る
第67話 みんなで合宿。Sumaの合宿。
事の始まりはいつだったか覚えているか?
確か黒鷲との事件が終わった(終わらせた)頃。
紺金とユッケの二人を鍛えるためにも、私は二人に同期三人と合宿を切り出したこと。
そして、なんやかんやで調整が難航し、結果今の今まで放置してしまった。
色々と片付いてきたので、本格的にやろうと言うことで、今日という日を迎えた。
「せーの」
「「「「「合宿だーーーーっ!!」」」」」
私たちは今、私の自宅に訪れていた。
私からしたらただの帰宅なんだが、まぁ楽しいそうだし良いだろう。
「ほら、叫んでないで自己紹介やれ」
「は〜い、こんにちは翔だよ!」
「はい、皆さんこんにちは。クスリですわ」
「ほい!ユウナだ」
「はい、皆さんこんにちは。紺色の金色。紺金です」
「はい!みんな〜おはよ〜ユッケで〜す」
「は、はい!みんな〜ユキナだよ〜!」
「こんやっこ!奴だ!」
「は〜いみんなの涙を受ける傘。雨森 林花です」
・
『わ〜〜!』
『こんなに大人数コラボは久しぶりでは?』
『ホントそう。ワクワクもんだ〜』
『社長から見始めたからちょっと知らない子が、社長、紹介して〜』
『合宿って、ホントに合宿みたいで良いね』
『ツクヨミさんとか来たかったって言ってるね』
『Vtuber部門のみんなも楽しいそうとか呟いてる』
『実際楽しそう』
・
というわけで、前に言った紺金とユッケと、強制参加の同期、ユキナと、指導役の1部組、さらにスケジュールのついた5部組の奴ちゃんと林花の合計八人で今回の合宿配信を行っていくぞ。
「一応、私とは初コラボの紺金、ユッケ、ユキナ、林花の説明?紹介していくぞ」
紺金、ユッケはまぁ、私が出てる配信見てるんなら結構詳しく解説したよな。
じゃあ他二人を紹介しようか。
まず、紺金、ユッケの同期、ユキナ。
ランク2で、周りと比べると力不足にはなるが、冒険者とアイドルの兼用配信者だ。一応所属は冒険者部門だ。
それに関しては、本人がやりたいと始めたことだから、私からは何も言ってない。
登録者はここの中でもかなり上位にあり、Suma配信者の中での顔が広く、よくVtuber部門とのコラボもしたりする子だ。
背は少し小さく……悔しいが私より一二センチほど大きい。ピンク髪のツインテールで、童顔。本当にアイドルって感じの見た目をしている。
武器はダガー。アサシンタイプだ。暗器は使わないが、中々器用な子である。
続いて雨森 林花。奴と同期の5部組の一人。冒険者ランクは3。
おっとり系でお姉さん、という感じの人だ。
青色の混じった黒髪のセミショートで、背は170センチある。
武器は戦鎚。見た目とは違ってパワータイプである。年齢に関してはツクヨミさんに近く、なんだかんだで進行やら解説やらをよくやらされている。
性格に関しては、大人びていて、マイペース。怒らせるな危険だ。
「こんな感じだ」
「社長、誰が危険、ですって?」
「いや、お前、一度やってるんだから」
危険、の部分に納得いかない林花がそこに突っ込んでくるが、ぶっちゃけそれが共通認識だ。
「林花さんはデビューして二ヶ月位の頃、ブチギレ戦鎚フルスイング徘徊、ってのをやったので、同期の私ですらさん呼びしてるぞ」
うん、奴ちゃんがしっかり怯えるくらいには怖かったぞ、あれ。
・
『危険認識は間違いない』
『これ以上ないくらい正しい』
『アーカイブはあるから調べれば出てくると思うぞ』
『めっちゃ怖かった』
『けど、それが良かったのか、怒らせたらヤバい大人っていう印象が確立したよな』
『それから同人では女王として頻繁に出演されてましたね……』
『普通に戦鎚フルスイングで徘徊は怖いんよ。目もイってたし』
・
視聴者からも同期得られてるし私は間違ってないというわけだ。
「ユキナは一杯褒めてもらったよ〜」
「事実言っただけだが?」
「また〜照れちゃって〜」
照れてねぇし、事実だし。
実際、力不足ってのを補って余りあるくらいの配信者としての実力はあるし、可愛いし、グッズとか私買ってるし。
「と、とりあえず、ユキナは実力をつけてもらうからな!」
「強くなったら完璧アイドルになっちゃうよ〜」
「安心して、私の足元にも及ばないうちは完璧は名乗らせないから」
紺金、背後から肩とんしながら、いつもの表情でそんなことを言うもんだから、ユキナも苦笑いして鳴りを潜めた。
あと、ドヤ顔してムフーってしてるの良い。
・
『紺金ww』
『社長照れてるの可愛い』
『この様子じゃしっかりグッズとか買ってたりしてそうやな』
『紺金さん辛辣。バッサリいったね〜』
『ユッケちゃんがドウドウしてる』
『なお、紺金さん平常運転』
『さらに言うと4部組はみんな仲良しです』
・
「さて、紹介も終わったな。じゃ次は企画の説明だ」
「そちらはわたくしがしますわ」
「おう、助かる。というか、私は保護者ポジであって配信者ではないんだわ。今の今まで違和感なかったけどよ」
よし、バトンを渡したらあとは後方腕組みだな。
最初の特訓のメニューでも書いた紙を持ってくるか。
「しばらくはこっち頼むわ」
「任されましたわ」
というわけでカメラから外れて私は家の中にその資料を取りに向かった。
・・・
「はい、バトンを受け取りましたクスリですわ。というわけで企画の説明はこちらですわ!」
Title『Suma冒険者合宿』
企画:紺金、ユッケの二人を始めとした五人を1部組や社長が指導し、強くなろう。
「はい、画面に映っている通り、わたくしたちでみんなを強くしようという回ですわ。合宿なので泊まり込みで行い、プライベートやプライバシーになりそうなその辺とかは後日動画で編集したものをお見せします」
・
『うぉー楽しみぃぃ!』
『朝から夜までは楽しめるということで良き?』
『いぇ〜〜い』
『たっのしみぃぃ』
『もしかしたら途中参加、誰かくる?』
『何日の合宿になるの?』
・
「はい、コメントのみなさんの質問にお答えしますと、途中参加組はいます。フルタイムでずっといるのはここの八人なので、わたくしたちは途中でいなくなったりはしないのでご安心を」
「まぁ、私たち1部組3人、4部組のみんなの日程調整で手間取ったからすぐできなかったんだよね」
・
『へぇ〜』
『一日中ずっとこんな人数での配信を見れるなんて!』
『特訓ってことだから、成長も見れるんだからおじさんニッコリ』
『作業しながら見れる。ありがとう。しばらくの作業のオトモです』
『追加って誰が来るのかな?』
『八人ずっといるって調整大変だったんだろな〜』
『ホントにね。けど、そのお陰でこんな素晴らしい企画が見れるんだから最高よ』
・
「そして、日程に関してですが、これを最初にハッキリ言わなかったことからある程度察してください。……1週間だそうです」
「最初聞いたとき冗談かよ、って思ったけど、確かにアタシのスケジュールちゃんと取られててびっくりしたんだよな〜」
「確かに合宿ですが、とことん本格的にやるつもりですわ」
・
『わぁお』
『1週間ずっとは中々ないよな。就寝とかその辺はやらないとはいえ、かなり大掛かりなイベントだ』
『アーカイブは残る?』
・
「もちろんアーカイブは残しますわ。なんでしたら公式が切り抜き、別視点を後日動画で出すつもりですわ」
「だいたい三視点分だとよ」
「だから気軽に見に来てね〜」
・
『あ〜い』
『仕事中は止めとくよ。後でアーカイブで確認させてもらうわ』
『切り抜き大変だぞ』
『任されよ』
『お、お前は!フッ、ならば私はあちらを担当しよう』
『……なんでそれで理解し合えるんだよ』
・
「うーい、戻ったぞー」
・・・
ホチキス止めした資料を蕎麦を担ぐように持ってきた私はさっさかと資料を配っていく。
「説明とか終わった?」
「はい。最低限は」
「おけー」
じゃあ始めても良さそうだな。
「最初に、紺金とユッケにはこれを渡しておこう」
収納から二つの木箱を取り出し、二人に渡す。
「前に言った武器だ。もちろん私製」
「あっ」
「えっ、つまりこれって」
・
『あっ、察し』
『自重してる?』
『してるわけねぇよな』
『伝説の製作者の武器は相場はヤバイよ』
『ユッケちゃん、生きてます?』
・
呆けるユッケ、少し動揺しながらもそれをしっかりと見据える紺金。反応はそれぞれだが、そんなに恐縮するようなもんでもない。
「どうせ手作りだし、安いもんだよ」
「「それはない!」」
「社長は自分の武器の価値をそろそろ把握しような」
いや、してるぞ?してなきゃ今頃家にあるやつたくさん世に出回ってるからな?
……失敗作の一二本くらい売ろうかな?いや、やめとくか。
「まぁ、なんにせよ、今回の特訓中にこの武器を使いこなせるレベルまで成長するのが目標ってことで」
この武器は奴ちゃんに渡したものと同等の能力を秘めている。
奴ちゃんはなんでかわからないけど使いこなしてるけど、本来身の丈に合わない武器を持つことは武器に振り回されるのがオチだ。
一つの目標としても、これを初日に渡すことは大事になってくるだろう。
「ユッケ、もらいましょう」
「……そうだね。これを使いこなして、私たちは強くなるんだ」
そう。それで良い。
決心した二人はそれぞれ木箱の蓋を開け、その姿を目にする。
片方は、禍々しくもどこか美しさの感じられる暗闇のような黒さを持つ盾。
片方は、機能的な見た目に反し不自然な突起などがついた二対のレイピアのような形状をした剣。
「使い方はそいつらの備え付け収納に入ってるから」
「当たり前のように収納……」
高いんだけどなぁ〜ってボソッと呟く奴ちゃん。それに同乗する感じで翔以外の他六人がコクコクと頷く。
私からしてみればその辺のドロップから量産できるから貴重性はイマイチ感じにくいが、高いのは間違いない。
ツクヨミさんとかは経費として落としてギリギリ手が届いたとか言ってたくらいな。そんなに大きくないのに。
「さて、渡すもん渡したし、早速特訓始めるか」
「もちろんです!」
「望むところ」
「言っちゃうよ〜!」
待てましたと声を上げて、全員がワクワクした空気を出す中、クスリと奴ちゃんは二人してどこか、というかあそこを見つめていた。
「ねぇ、奴ちゃん。あれは」
「……はい、多分、そうですね」
あそことは?二人が見つめてる先には十人ほどの社員がいた。ジャージを来て、何故か私の家の周囲をランニングしてる。
「私のマネージャーいるね」
「わたくしの方も」
「気になる?」
「当たり前ですわ」
そりゃそうだよなぁ。気になるよなぁ。
答えてやるか。それが世の情けってやつさ。
「あいつらも合宿だ」
「「えっ」」
最近、物騒だし、私と九重がいるにしても社員全員をいつでもどこでもは守りきれないからなぁ。だから付け焼き刃だとしても少しは鍛えておかなければならないからな。
「……運動不足解消をさせるためにも、あとは冒険者のマネージャーなら多少は力がないとな」
私はそのことは言わず、そう説明した。
配信者に心配をかけるようなことは言わないようにするためだ。こいつらには自分の身を最優先にさせないといけないから、余計なことを知る必要はないってわけだ。
まぁ、そんな配慮も、翔やユウナ辺りには見抜かれてるがな。だから騒がしい二人は聞きに来ないんだろう。
「一応、普通に出勤扱いだ。あれも仕事ってことで」
「うーん、良いことなのか悪いことなのか……」
「ま、まぁ、マネージャーさんたちが大丈夫なうちは良いんじゃないですかね」
そういうことだ。
「さっ、二人も早く行ってこい」
私はちょっと用事があるんで一日目は指導は聞かれたらやるってことで。
というわけでSumaの合宿は始まったのであった。
・・・・・・・・・・
後書き
リクエストの方をやろうとしたんですが、合宿したいってなって、本編混じらせてのやりたいことを始めた。
リクエストの方はこの合宿内で消化しようかと。
追記:合宿のうち三日間は特に考えてないので何かこれってのがあれば、やってみようと思います。
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