第65話 裏事情の鎮魂歌。私、もう一発!
「休憩時間だし、マシュマロ返そっかな」
「いんじゃね?私はとりあえずカメラから外れるが」
「逃げないで」
「やだ。逃げるね」
一度引き返したところでゆっくり体力の回復のために休んでいるが、私はともかく翔は配信者だ。
代わり映えない時間は話をする。
いつもそうだから、それ自体は良いが、この配信の前の私の動画ってさ?あれだよ?ロリ粛清だよ?それ関連の質問なんか答えとうない!
というわけで私は一度お暇させてもらうよ。
・
『逃げるな』
『逃がすな』
『大人しく裏話聞かせろ』
『そういうことだ。聞かせろ』
『やだ、で済むわけなかろう』
『後日談までが配信だ!』
・
やはり、リスナーたちはそれを望むよな。知ってた。だが、ここで変に答えて調子に乗らせるわけにはいかない。では一言
「……好きにしろ」
「はい、許可が出たんで一件目。ロリ神を歌った前後の社長はどうでしたか?だって」
よし、これは途中からしか翔はいなかったから無問題だな。もちろん私は答えんよ?
「確かね、最初はなんとか歌わないで済むように全力抵抗してたらしいよ」
「んで知ってんだよ!」
「その辺は私たち共有してたし、抵抗されてしんどかったって九重ちゃんが言ってたし」
……まぁ考えてみりゃそうだよな。
一応言うが、あれを歌う前私は当然全力抵抗した。その時に九重が応戦してきたんでデコピン食らわせた。
まぁ、最終的にはちゃんと歌ったわけですが。
「その後ね、歌いきったあと死んだ魚みたいに跳ねてたんだよね〜」
「やっぱり歌い終わったあとも知ってんのね」
そうして歌いきったあと、私はマイクの下で鯉王のごとく跳ねるしかできなくなったぞ。
その辺のことはあんまり記憶にはないが、気づいたら家に帰らされてた。
「これが伸びたら終わりだぁ〜なんて言いながら倒れてたから九重ちゃんが送り届けたって」
「そういうことか」
「なんで本人が知らないのかな……」
・
『コイ王のごとく跳ねてた社長……いい』
『死んだ目でねw』
『容易に想像できてしまう』
『もっとやれ』
『そして当然のように記憶飛んでるぞこの人』
『地味に痛い目あってる九重ちゃんが不憫や』
・
「次の質問。あの替え歌はアドリブですか?だって」
替え歌ね。
「当然だ。ああでもしないと自分の羞恥を守れなかったんだよ……殺意剥き出しにしてやらなければな」
「やっぱ殺意こもってたかぁ」
・
『それでもちゃんと歌ってくれて、サービスまでつけてくれた社長に大感謝』
『愛と殺意と感謝のロリ』
『メスガキ社長めっちゃ良かった〜』
『も一回やってくんねぇかなぁ〜』
・
「おい糞豚共……豚カツにされたくなかったら二度とんなこと言うなよ」
・
『イエッサー!』
『イエスマム!』
『それでもいい……それでもオデは〜』
『ば、馬鹿!行くなぁっ!』
『(ジュワァ)』
『オデく〜ん!』
『美味そうな豚カツになりやがって……』
『それでも、聞きたい言葉があるんだろ……』
・
……駄目だな。こいつらに脅しは効かねぇ。
大人しく触れないことが吉か。
「ちなみに殺意は込めたがちゃんと歌ったぞ。曲へのリスペクトは大事だからな」
「その辺りは流石ですね社長」
「それくらいは当たり前だ」
そういうの忘れたやつがどれほど多くの罵倒を受けて消えてったか知ってるからな。
この業界、そういうのは大切なのよ。……そういうの関係なくそれができないやつは遅かれ早かれ消えるのは間違いないがな。
「次、ビームのところで悲鳴が上がってましたがあれは誰のですか?……私です」
「あれな。あれはもともとやってやろうと決めてたやつだ。海◯はアドリブだが」
こんな事になった原因と言うか、振り返ってみればだいたいこいつが悪いって考えついたから、何かしらしてやんないと気がすまなかったからな。
「ビーム打つの嫌だったから、青眼さんのやつをやりました。元凶になってるコイツに。もちろん、初めからそのつもりで収録に呼んだ」
「え?」
あっ、これは言ってなかったな。
確かにたまたま通りすがったところを捕まえて強制的に連れ込んだけど、そもそもすれ違うように呼び出したのは私の策略だぞ?
「つまり、あの日の仕事は私が仕組んで、その上でマネージャーに協力してもらって誘導して、そこを私が捕まえたんだわ」
「そ、そんな。私が、嵌められてたなんて……」
「それで、あのビームやら何やらを受けてもらったよ」
お陰で怒りは収まってやりきれたんだよな〜。
「あっ、リスナーは翔に感謝しろよ?あれなかったら私サービスやるつもりなかったから」
・
『!?』
『身を犠牲に俺たちのために……』
『ありがとう。お陰でメスガキ属性を見れたよ』
『俺、翔の犠牲を忘れないよ』
『そんな裏話が』
『自業自得の報復劇とはいえ、ドンマイ』
『とりあえず聞き直してくるわ』
『あの悲鳴が俺たちの歓声に変わったんだからあれは素晴らしいものなんだ!』
・
「く、くそう。こ、このままじゃ、私ただみんなのために焼かれただけの人になっちゃうぅ」
おう、それが私の望みだぜ、とは言わない。
私が辱めを受ける原因になったんだ、お前もそれくらいは受け入れやがれ。
「私、歌上手いんだから!」
「いや、そっちかよ」
「あのとき、私の美声を披露してやる!って思ってたのに!私ただ焼かれただけなんて嫌だからね!」
……あれ?なんか違う方向に話が進んでない?
「くっそー……あっ、そうだ!今度久しぶりに全員企画やろ!」
「……そういうのは帰ってから企画書で教えてくれ」
「へぇ〜い。じゃあ、早いところ今日は帰らないとね」
「もちろん、もう何体か倒してからな?」
流れで逃げようたってそうは行くか。
「ちゃんと最後までやるぞ。いいな」
「うへぇ。は〜い」
不貞腐れながらも、休憩を終わりにして翔は先ほど戦ったところへと足を向けた。
・
『……ビーム見せて』
『えっ!?』
¥10000
ロリ社長信者『生ビームを、レクイエムをお願いしますぅぅぅ』
『……なんだこれ』
『まさかそんなことのために一万円を突っ込むとは……』
『なお、これくらいならまだ普通らしい』
『クルシュちゃんとか無言上限スパを投げられることもしばしばあるらしいからな』
『ひぇぇ〜』
・
……なんか見えたな。というかなんかいたな。
ビームやって欲しいって。
「そんなことのために金を使うなよ……」
一応翔には聞こえないようにカメラに囁くように言う。
・
『うひゃっ!?』
『あっ』
『ありがとうございます』
『さっきの信者に感謝だな』
・
それがASMRのようになったのかコメ欄は酷いことに。
さらに悪乗りしたかのような、ビーム催促のコメントがかなり流れてきてる。
「仕方ない。やってやるから、宣言頼むわ」
・
『やたー』
『ワクワク』
『見せてもらおうか、生の鎮魂歌とやらの性能を』
『任せろ』
『霧眼の竜を攻撃表示で特殊召喚!』
『霧眼の竜で飛翔龍を攻撃!』
『喰らえっ』
・
霧眼の竜ってなんぞや。あと、なんか彗星さんとかVTいるのはおかしいだろ他社ゲーやろ。……まぁええか。
「翔〜」
右手にピースサインを作り、そこに魔力を貯める。
準備が整ったんで翔を呼び止める。
「何社ty……待って、その手は、まさかっ!」
「滅びの爆裂粛清弾!」
「まっ、ギャァァァァァァ〜〜〜〜〜」
今日も、ダンジョン内は、春真っ盛りである。
プスンプスン
「いや、私のせいじゃないぞフライングブイ」
「何それ、というかどう考えても社長悪戯心あったでしよ!」
私の粛清弾に焼かれた翔は頭から湯気のような煙を上げながら不貞腐れた顔で私を見ていた。
もちろん、焦げてるよ。その煙だよ。
「ご丁寧にダメージないし」
「表面だけだからな〜」
「あのときは本気で焼きにきたくせに!」
あぁ、あんときはダンジョンじゃないし、恨みがあったからな。
今は要望だし、ダンジョン内だからな、ダメージはないように配慮した。
「けふっ。とりあえずもう少し休んでいい?」
「駄目、早く行け」
「鬼畜〜!(´;ω;`)」
知るかよ。さっき休んだし、ダメージないんだから、さっさと行けよな。
ぐうたれながら翔は焼けた部分を振り払ってから気を取り直し、改めて先程の場所へと足を進めるのだった。
・・・・・・・・・・
後書き
とりあえず、後日談ですね。次でスパルタダンジョン配信はおしまい、にしたいかなぁ。
このあと何やろうとか考えてないけど、終わらせないとな。
疲れがすごくてとか体調悪くて〜とか言って休んでる間に何やら色々と起こるのなんでしょうね。1stライブとか卒業とか殿堂とか台風とか酷暑とか豪雨とか。
関係ないけど、自分、フラグっぽいの建てるとだいたい回収するんですよ。
一番新しいのだと、「楽しみだな、久しぶりに親戚で旅行だ。今回はコロナとか台風とか大雨とかないし〜」なんてボヤいたのが1週間前。今、台風で行けるかきな臭い(涙)。
皆さんは不用意にフラグになりそうなことは言わないようにね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます