第53話 後日談開封配信。私、拉致られる
あの九重の配信で私のグッズの情報を出し予約ページ等が解禁され、そして案の定というかなんというか即日完売した上に、鯖落ち追加生産、あとはなぜかやることになった宝くじ当選発表のセット等の問題で忙しい日々を過ごした。
そして気づけば発売日。
そんな日に私は珍しく家に帰ろうとしたところを捕まり、強制連行されました。
「はい、という経緯で私ここにいます」
・
『えっと、お疲れ様?』
『大変だねぇ』
『珍しく帰ろうと……その字面がヤバイことに誰も触れないの怖い』
『えっ?社長家あるの?』
『あるらしいぞ?豪邸。メイドさんに管理させてるくっそ広い家が』
『そんな家があるのに普段から事務所に寝泊まりする社長の鏡』
『いや、帰ってくれ』
『なお副社長も同じような感じらしい』
『なお九重ちゃんは家がないので事務所に寝泊まりしてるらしい』
『草』
『えっと、これ何の配信だっけ?』
『ミコヒメママと翔とユウナとクルシュちゃん四人での社長ブロマイドの開封配信……にクルシュちゃんが九重ちゃんに連絡して社長を拉致……連れてきてもらったって状況』
『拉致ww』
『まぁ、違いない』
『実際そこまで抵抗してないから問題はないんだろうな……家に帰れないってだけで』
『それは問題なんだよなぁ』
『そもそも拉致った時点で問題なんだよなぁ』
『それはそう。だけど社長だし』
・
「突然ごめんなさい社長。どうしてもって聞かなくて。あっ、初めてだから自己紹介しないと。私、SumaVTuber部門第5部の巫女姫(以後カタカナ表記)です。よろしくお願いします」
ミコヒメ、お前が悪くないのはわかってる。うん。むしろこいつらを止めようとしてくれただけありがてぇよ。
というか、誰に自己紹介してんだ?挨拶は私が来る前にやったよな?……まぁ、置いておこう。
「いや良いよ。どうせ明日は今日の発売に伴った作業で忙しくなるだろうから家に帰ろうって思っただけだから」
「ほら、謝りなさい」
「ごめーん」
「さーせん」
「めんご〜」
覚えとけ、てめぇら。今度絶対、謝らせてやるからな?
「んで?なんで私を連れてきた」
「今日はみんなでブロマイドの開封式だよ?せっかくなら社長呼んで再現撮影しようってね?」
「ついでに、もし自分のメッセージカードが出たらその場で社長に呼んでもらおうかなって」
なんて気恥ずかしい企画に呼んでくれてんだこらぁっ!?
「ま、まぁ出たらですから」
「ミコヒメ、それはフラグって言うんだよ〜」
私もそう思ったよ。
まじで、ホントに回収しないことを祈ってるよ!
・
『ミコヒメママ以外誰も謝る気がないの草』
『社長を恥ずかしさで殺す企画』
『やめたげて』
『まぁ、出ないだろうし?』
『なお、獲得報告は出てる模様』
『まだ百件程度だがな』
『初日でそれだけありゃ十分だろ』
『そんな獲得率のものをピンポイントで抜けることねぇだろ』
『九重通販の奇跡』
『あれがなきゃそう言い切るんだけどなぁ』
『仕込みはないのにあれはやぶぁい』
『式に直すと、X(メンバー数)分の1×2万セット分の1』
『普通に無理ゲーなん草』
『それをやってのけた九重ちゃんがえげちぃだけ』
『それはそう』
・
「よっしゃ〜早速開けてこー」
「おーー」
……ちなみに私が不安な理由は撮影場所に連れられてきたときに見た積み上げられていた1人1カートン購入したであろう四つの箱である。
「量が多いから最初の方だけ反応して、後半はコメント返しながら開けていくよ〜」
「量、な。一人1カートンもありゃな……」
「ん?まだあるよ。各サイト1カートンずつ購入したから一人3カートンはあるね」
「じゅ、12カートン、だとぉ」
1セット5枚が一箱25セットで1カートン12箱だから、5×25×12=1500。
さらにそれが12カートンあるから1500×12=18000(ブロマイドの数)
激レアブロマイドが当たる確率が10万枚分の1。それが18000あるから100000÷18000=5.5(小数点第二位以下切り捨て)。
つまり約5分の1で誰かのは当たるということだ!
「や、やべぇ、これなら誰かしらが当たってもおかしくねぇ」
い、いやだが!ここにいる奴のが当たる確率はかなり低い!Suma配信者は40人以上いる。
配信者の数を40としたとき、5分の1に40分の4がかかるから、ここにいる誰かのが当たる確率は50分の1!
まだ現実的じゃない!
「だ、大丈夫だ、大丈夫だよな……」
私の心配を他所に開封式は始まった。
「さぁ、一つ目行くよ〜」
最初は一人ずつ順番に開けていく方式なので開けていくとのこと。クルシュ、翔、ミコヒメ、ユウナの順番だ。
ノーマル版のここにいる四人分が出て、さっき言ってた再現撮影をしたらコメント返しながらになる。
「はい!あっ!私だ〜ついでに翔ちゃんも!」
「おっ、じゃあ再現撮影行こうかー」
「……ふと思ったんだが、クルシュとミコヒメはどうやって再現撮影すんだ?」
二人は今回普段の撮影用のものしかないだろ。モーションキャプチャーとかなければ3Dモデルもスタジオじゃないから使えないだろ?
「そんなこともあろうかと、お借りしてきました、この絵!」
パッっと画面に映し出されたその絵。
丁度ブロマイドのポーズと同じポーズをしている。
だが、そんな絵、描いてもらった覚えも、描くと聞いた覚えもねぇぞ?
「……誰に?」
「え?由実る先生に」
「あのやろぉぉぉ!」
そういや言ってたな!ブロマイド出たやつイラストに直して描くとかなんとか!それか!
「というか早くねぇか!?」
「朝イチで届いて、それを速攻配信してたよ?」
「それでもどんだけ速筆なんだよ!」
「あぁ、それでも予め私たちの分は優先してもらえるように頼んだからね。何なら今も配信続けてるんじゃないかな?」
あいつ色々とおかしくねぇか?行動力バケモンか?体力無尽蔵か?というか仕事はいいのかよ……。
「由実る先生に関わるとロクなことにならねぇ」
・
『なお、ついさっき半分を描き終えた模様』
『そして折り返し。配信は継続中』
『流石由実る先生やな』
『社長が表立って苦手な感じだすだけはあるな』
『業界一の速筆って言われるくらい速いからなぁ、あの人』
『あの、十時間以上配信を続けながらすでに二十枚以上の絵を仕上げてるってマジですか?』
『最近、社長効果で同接増えたって喜んでたなぁ』
『ロクなことにならねぇとか言いつつ仕事の腕は買っている社長』
『実際ろくなことにはなってない模様』
『※嫌いではない』
『当たり前だ』
『嫌いなやつの言ったことなんて覚えてるわけない』
『そういや社長仕事しながらもしっかり配信見てるんだね』
『コメントもしてたしなぁ。あっ、コメントなかったときは忙しくしてたからか』
・
……なんで私に飛び火してんだ?
「社長ってツンデレなんですか?」
「ちゃうわい!」
いきなり何を言い出すんだミコヒメ!
前にも似たような聞いたことがある気がするが、絶対に違うからな!
「だって、好きなのに嫌いって言うのってツンデレってリスナーさんが」
「ほぅ?」
それで私がツンデレだと。ほうほうほう。そう吹き込んだやつがいると、それがリスナーだと。
・
『やべっ』
『間違ってはない』
『間違ってはないがやべぇ』
『俺のハザードが止まんないんですけど!?』
『逃げろ逃げろ、死にたくなけりゃ知らないフリしろ』
『そもそもなんでツンデレ嫌なんだ?』
『いや、だって、今までの苦言全部裏返して取られるって考えたら、なぁ』
『なんだそれ、可愛いかよ』
『それは嫌だな』
・
「ちょ、社長、そんな時間ないんだから早く撮影するよ」
「……命拾いしたな」
翔に怒られ、画面を睨むのは止めた。
とりあえず翔から撮ろうか。
「というわけで……社長!」
ん?なんだ?撮影するんじゃなかったのか?
「昨日ダンジョン配信の撮影用のカメラ壊れちゃった(*ノω・*)」
「……は?」
何言ってんだこいつ?
ダンジョン配信用のカメラとか30階層位までなら攻撃を食らっても壊れないくらい頑丈なんだぞ?
ついでに言うならそのカメラ去年買い換えたよな?それがどうして壊れたんだ?
「いやぁ〜実は昨日練習風景を撮影しようと思って録画回してたら勢い余って、ね?」
「……何やってんだよお前わぁぁっ!」
声を荒げるがそれは許せよ?だってあれ特注品で買い換えるの結構面倒なんだよ!
少なくとも今から注文しても一ヶ月はかかるんだよ!それをどぉぉして今言うんだよぉぉぉ!
「お前確か明後日ダンジョン配信だよなぁ!」
「はい、そうです」
自然と正座できてるのはなんかムカつくが今はいい。
「もっと早く言ってくれねぇとこっちが色々面倒だって言わなかったか!?」
「前にも言われたような?」
「それなのに今ここで配信してると……しょーお?」
「ごめんなさーい」
パシャッ
シャッター音?なんで……あっ、私お怒り、翔土下座、これもしかしなくてもブロマイドのまんまでは?
「……このためにわざとか?」
「うん」
「で?あの話は?」
「ホント」
「お前わぁァァっ!!」
ヘッドロック、つむじをグリグリ。
もちろん、ドリル並みの速さでやるよ。
「いたいたいたい!?ハゲちゃぅぅぅ」
「こんなんでハゲるかってんだ!むしろ私がストレスでハゲそうだわ!」
「すーみーまーせーん!!反省してるから許してぇぇ!」
「い〜や駄目だ許さない」
さらに速度上げてホントに軽いドリル程度の速度で擦る。
「あつぅぅ!?ま、待って!?焼ける!燃えちゃう!?」
「燃えても問題ねぇだろ!?」
「ちょっと、煙で始めてるよ!!やめっ!?」
……この辺でやめてやるか。
高速グリグリする手を止める。
「うぅぅ……ちょっと焦げた」
「いいだろ別に」
例え燃えても、なんなら禿げても問題ないし、お遊びの内で良かったな?
・
『これは自業自得』
『カメラ壊したは駄目だろ』
『明後日どうすんのかね』
『というか、翔ちゃん大丈夫そ?煙出てるよ?』
『その速度と強さでやっても焦げるだけだぞ』
『やってることはちゃんと危ないのな』
『信用してるとも言う』
『策士?』
『確かに頭良いけど普通にやれよって話』
『俺もヘッドロックされたい』
『お巡りさーん』
『どうも、家県自宅市警察です』
『ただの自宅警備員やん』
『とりあえず冷やしてあげたら?』
・
「うぅ……氷で冷やさないと」
「だから早めに言えって言ったのによぉ」
「ユウナだって、同意してくれたじゃん」
「アタシは別にお前が一人痛い目見るだけだから好きにしろって言っただけだからな?」
だろうな。ユウナは割とそういうのはしっかりしてるからな。
ユウナっていつもふざけてるし、無茶苦茶してるけど常識人寄りではあるんだよなぁ。
「あの、社長。準備できたのでクルシュちゃんとどうぞ」
……ミコヒメ、さっきのに動じずに準備してくれてありがとな。ほんっとに助かるよ。
「えっと、クルシュはいつも通りしてる私に応援してる感じか」
「じゃ、撮りますよ」
パシャッ
「結構良さげだね〜できればもっとかっこいい感じが良かったけど、まぁ、ダンジョンでもないからいいかな」
冒険者してる私って格好いいのか?
自分では普段と変わらない感じなんだが……。
「……まぁ、どうでもいいか」
「さぁ、どんどん行きますよ」
「お〜」
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