第54話 開封配信。私、雑談しながら



 その後、さくっとミコヒメとユウナの撮影はしたんで、あとはどんどん開けてくだけだ。

 ちなみに、二人のブロマイドだが、ユウナは私と拳を交わしてた(物理)。ミコヒメは崇めてた。


 というわけでここからはコメントを返しながら行こうか。

 ……コメントを返しながら淡々と手はブロマイドを剥き続けてるよ。もちろん人手は足りるわけないので私も一緒になってな。


 ……まぁ、それは良いとして今私はちょーっと困惑してる。


 ・

『社長のヤンチャ時代について』

『みんなの面接の時とかどんな感じだった?』

『社員募集してまっか?』

『最近ダンジョン潜れてる?』

『配信者これから増やす予定とかある?』

 etc

 ・


 なんかおおよそ配信者に聞くような質問がねぇなって。ついでに全部私絡みだなって。


「じゃ、一つずつ答えていく?」

「そうですね」


 うん、私は良しとしてないぞ?


「ヤンチャ時代について、そうですね」

「はいはい!私、一番苦戦したやつの話聞きたい!」

「あっ、それはアタシも気になる!」


 翔とユウナはその辺気になるのか。

 苦戦ねぇ。


「ではそれでいきましょう。社長、答えられるのであればどうぞ」

「そうだねぇ。苦戦した敵……」


 あるよ。もちろん。けど、どこら辺まで話したもんか。


「一番は間違いなくあれだけどなぁ」

「えっ?怖い」

「けど気になるね〜」


 まぁ、話すだけなら構わんか。


「この戦いは割と本業として冒険者してた最後の方。そのくらいの時期にあったやつなんだが」


 思い返すと中々酷いやつだった。

 ホントに私事ながら良く倒せたなと褒めてやりたいところだ。


「どこだったかまでは覚えてないが、そいつはいきなり私の前に現れた」


 そいつの姿は言葉には表せない無みたいな感じだったな。

 こっちの攻撃は全部すり抜け、まるで概念か何かと戦ってるみたいだったなぁ。


「グ◯ーザやん」

「しっ」


 それは私も戦いながら思ったわ。


「結局、私の攻撃の大半は効かない。オマケに体力も無尽蔵ときた」

「社長の攻撃が効かないなんて!」

「それの想像がつかない私たちからしたら一周回ってちょっと笑えてくるよね〜」


 無言で頷く冒険者組二人。

 若干の冷や汗を流している。

 それを汲み取ったクルシュミコヒメの二人はそこに突っ込むことはしない。

 何せ、いつか冒険者は、そんなのにいつか会うということ。そしてそんなのに遭遇したら命の保証はない。

 笑い事では済まない。だから、それには触れられない。私もそれは理解してるんで二人に合わせて触れることない。


「結局、そいつを倒すのに一月かかったな」

「いや倒したのかよ」

「おう、微量ながら一応ダメージ的なものは受けてた。……まぁ、大人モードの私出力の玉座くらいでね」


 一応言っとくが、前にゼウスの時に使った威力は簡略詠唱で速度を上げて威力を下げたものだ。基本はそれだけで十分だから使わないが、その時はそれを抜きにし、ちゃんと練った玉座の魔法だ。


「地形が変わる威力を食らって微量って……」

「ちょっと次元が違うよね……」

「んでだ、それが効くとわかってからいくらか試してみたが与えたダメージよりも自然回復の方が早くてなぁ」

「キ◯ト君かな?」

「そんなんチートやチート!チーターや!……えっ?ここまで聞くと普通に勝てそうにないんだけど?」


 まぁ、一番苦戦しただけあってチートだったわ。


「そうだな」

「結局、どう倒したの?」

「んー、ゴリ押しだな」


 まず最初の一週間、休まず玉座の魔法を連打し続けた。


「えっ?」

「あれを連打?一週間も?休まず?」

「ちょっと何言ってるかわかりませんね」


 だって、攻撃しないと回復し続けちゃうからさ〜ひたすら撃ち続けてたよ。

 幸い、それの攻撃自体はそこまででもなかったからダメージ無視して撃ち続けた。


「んで、途中で気づいた」

「何に?」

「そんだけやっても10%削れたくらいってな」

「無理やん!」


 うん、このままじゃ消耗し続ける私が負けると判断して連打を止めた。


「一度退却して、考え直した」


 どうやったらあれに致命的ダメージを負わせられる?ってな。


「答えは?」

「聞く?」

「こ、怖いけど聞きたいかな〜」


 そうかそうか。

 まぁ、単純明快なものだったけどな。


「ゴリ押しだ」

「「えっ?」」


 あいつの存在自体理解できてない自分がいるのに、考えるだけ無駄だってなってね。


「玉座を連打したことで得たものもあったからな」


 もともとそれは、理論上は可能性ってだけのものだった。

 しかしそれは偶然にも玉座の連打の中で机上の空論は確立された理論に変わった。


「玉座魔法の更に上、天魔魔法」

「な、なに、それ」


 魔法を使う翔だけがその異常性を理解し真っ青な顔をし静かに言葉を漏らす。


「詳細は話せないが、玉座は魔法使いの境地とするなら、天魔はそれすら容易く超える奇跡と呼ばれるものに近い」


 その魔法を二週間かけて調整し、完成させたその魔法で、そいつを消滅させたってわけだな。


「と、こんな感じだ。どうだ?」


 語り終え四人を見ると、もう頭抱えてブロマイドを剥く手を止めて疲れた顔をしていた。


「「「「お腹いっぱいです」」」」


 まぁ、そうだよね。


 ・

『なんか聞いちゃいけないことを聞いた気がする』

『だな』

『逆を言えばあの社長がそこまでしないと倒せなかったってことだよね』

『地上に出てくんなよ』

『まず間違いなく世界が消滅する』

『それもそれを倒すために放った魔法でな』

『洒落にならん』

『き〜りちゃん♪その話詳しく聞かせて?』

『おわっ、出た!』

『というか、例のあの人が知らないってことは完全初出し情報かよ』

『いや、聞かれなかっただけじゃない?』

『聞かれても言うなよ……』

『それはそう』

『あれ?何の配信だったっけ?』

『ブロマイド開封しながらコメント返すだけの配信』

『そういやそうだったな』

『社長ってそういう理論とか立てるくらいには頭良いのに、最終的にはゴリ押しになりやすいよね』

『ゴリ押しが全てを解決する』

『ってか気づいちゃったんだけどさ、そんなの相手でも社長ジリ貧負けしかなかったってことなんだよな』

『真のチートはこの人だったか』

『ひ、人?』

『人じゃねぇだろ』

 ・


「心外な、私はれっきとした人間だ。人間ドッグもいっつも健康ですねって言われてるくらい。人間らしいぞ!」

「いや、それとこれとは別だろ」


 ……多少はマシになったかな。


「っていうか、剥く手を止めるな〜」

「あっ」

「忘れてた〜」


 気を取り直して開封再開だ。

 ……翔さんは帰ってくるまでしばらくかかりそうだな。


「さっ、次の質問行くか?」

「あっ、そうですね、軽いの軽いの……社員とか配信者の募集はしてないのか?」


 あ〜それか〜


「うーん、まぁ、大丈夫か。まず、社員の募集はしてない」

「なんで?」

「応募人数が多すぎる。ほんで、企んでる人間とかが来るのも目に見えてるから下手に募集かけられないんだよ」


 増やしたいのは山々だけどなぁ!


「あれ?じゃあ、九重ちゃんは?」

「私の推薦。というか一応は養子縁組した子だからな」

「つまりそれくらいの信用がないと雇えないと」


 まぁ、そういうことだな。

 VTuberとかその辺は繊細だし、冒険者はもっと繊細なものだ。

 たかが怪我一つ、それだけでも冒険者は危険なんだ。

 確実な信頼が持てる人間以外は今は入れられないな。


「あれ?となると今の社員さんって……」

「ほとんど初期メンバーだ」

「わぁお」


 ・

『えっ?それってめちゃくちゃ凄いのでは?』

『会社としては本当に凄いと思うぞ』

『まぁ、一応初期メンしかいないのは良いことばかりとは言えないけど』

『まぁ、ちゃんと増やしてはいるみたいだけどね』

『ほとんどが一体何割を指しているのだろうか……』

 ・


「って感じだ。そのうち募集はしたいがな」

「じゃあじゃあ、配信者の方は?」

「そっちはだな、そろそろ奴ちゃんやミコヒメたちがデビューして一年経つからな」

「おっとぉ!」

「これわぁ?」


 まぁ、これ以上は言えないから濁すか。


「まぁ、それはこれからかな」

「期待して待っててね〜」 

「何目線だよ」

「先輩目線だよ」


 確かに翔は一番の先輩だが……お前先輩か?


「失礼な感じ……社長、何考えたの?」

「お前が先輩てw」

「いっ、言ったなぁ!およそ社長の見た目してないくせにぃ!」

「ふざけんな!私はれっきとした社長じゃぁ!」


 取っ組み合いじゃあ!いたっ!てめぇどこ引っ張りやがる!


「あぁ〜あ」

「似た者同士、ですね」


 おい、ユウナ、何呆れてやがる!

 そしてミコヒメ!私はこいつとは似てないからな!


「……とりあえず先に進めちゃうよ〜」


 ・

『可愛いかよ』

『えぇな、こういうの』

『てぇてぇな』

『気心知れた良い仲だなぁ』

『微笑ましい目で見てる二人』

『仕方ないから進行する一人』

『ミコヒメママ、どう見ても手のかかる姉妹を見る目なんよ』

『ユウナもに似たような感じだな』

 ・



 そんなこんなでコメントを返しながら開封を進めるが、一向に激レアは出ず、ラスト1カートン(一人につき)となった。


「あぁ〜そろそろ手が痛くなってきたよ」


 ポキポキ

 グキグキ


 って、どんな音鳴らしてんの?というか誰?


「あっ、私です」

「ミコヒメか」


 じゃあ何でもない。

 これがユウナとかなら意味が変わってきそうでな。


「さぁ、コメント返しもそろそろ終わりかな」

「ですね〜」


 さて〜何かな?

 ……あれ?何で私が答えるって考えてんだ?違うだろ、私たちへの質問だろ?ほとんどが私関係ばっかりでおかしくなっちった。


「じゃあ、これかな」

「えっと、社長の歌みたとASMRを聴きたいんですが?……だそうです」

「却下!」

「えぇ〜面白そうじゃん、やろうよ社長」


 ふざけんな、翔は良いがなんで私がやらんといけんのだ!


「一応理由は聞いておく?」

「私は配信者じゃないねん!私は社長だ!」

「だそうです」


 ・

『関係ありません』

『ないですね〜』

『そんなの関係ありません。私たちの期待に答えてください』

『アンケート取れ。それで決まる』

 ・


「なるほど、アンケートですね。じゃあ」

「マテマテマテ。まぁ待て。そんなのしなくても私はやらないぞ」

「はいはい、できたよ〜みんな投票してね〜」


 速いな!?いや、待ってくれ!


 アンケート

 社長に歌みた、ASMRをしてほしいか否か

 :してほしい!

 :しなくて良い!


「待て!ホントにまっ、むぐっ」

「ちょっと静かにしようね〜」

「そうだな。こういうのは視聴者に決めて貰うほうがいいだろ」


 翔、ユウナが私にしがみつく形で止めてきやがった!というか、口塞ぐのやめろぉ!

 下手に振り払えないから質悪いなぁ!


「ムクグググゥ(は〜な〜せぇぇ!)」

「何か言ってますが気にしないでね」

「そういうことだ、早くしろよぉ」


 くそぉぉっ、こんな結果がわかりきってることぉぉぉ!やめろぉぉ!


「はい、五万票超えたし投票締め切るよ〜」

「ンググッ!?(五万!?)」

「では、結果はこうなりました!」


 アンケート

 社長に歌みた、ASMRをしてほしいか否か

 :してほしい!99.9%

 :しなくて良い!0.1%


「ですって」

「社長?まさか、これで断るなんてこと、しないよね?」

「ぬぐぐぐぅ」


 二人から解放されたのにこんな声しか出ないなんてぇ。


「じゃ、じゃあ!この配信で激レアブロマイドが二枚出たらやる!」

「えっ?じゃあ、これ」


 えっ?


「えっ?あっ!ぁぁぁ!」


 話の折を見て見せようとしてたのかな?

 そんなタイミングでミコヒメのカメラにそれが映し出された。


「わぁっ!凄いよミコヒメ!夜霧ちゃんの激レアだよ!」

「だ、だがあと一枚、それにこの場にはいない夜霧ちゃんのだし……」

「そ、そうですよね。これで確率的には……」

「きたぁぁぁぁぁぁ!」

「「「「!!?」」」」


 ちょっと待て!翔その雄たけびはまさかじゃないよな!ノリだよな!ネタだよな!


「私のきたぁぁぁ!」

「まじかよぉぉぉぉ!」

「みんな〜!私、やったよぉ!」


 ・

『良くやった!』

『褒めて使わす』

『公開処刑確定+歌みた確定+ASMR確定』

『やたぁぁ!』

『何歌わせる?!』

 ・


「それは……後で読むから書き込んでいて」


 ・

『任せろ』

『一番歌わなそうなやつだ』

『歌上手いからな、何歌わせても良いよな』

『とりあえずみんなで上げてけ〜』

 ・


 あ〜お祭りだな〜


「社長が遠い目してるよ」

「まぁ、そうだよな」

「悲しいなぁ」

「ふぅぅぅ〜」

「小躍りしやがってこの野郎〜!」

「なんで私だけ!?」


 なんとなくだ!とりあえずムカついたからだ!そしてお前がこんな企画をしたからだぁぁぁぁ!


「ねぇ、とりあえず社長、これ、呼んでよ」


 ……はぁ〜しゃぁない。


「翔、ずっとずっとありがとな。たくさんお前には助けられたな。感謝してる。これからもよろしくな」


 恥ずかしいぃぃ!なんでこんなの書いたんだ過去の私ぃぃ!


「そ、そっか。こちらこそいつも感謝してる、ありがとう(め、面と向かって言われると恥ずかしい(*´∀`*))」


 目を合わせられないどころか、顔もあげられねぇよ!


「「「……なにこれ」」」


 ・

『これが初期メンの絆か』

『ユウナが置いてかれてるけどな』

『初期メンの中でもここの関係はなんか特別な感じがあるよな』

『てぇてぇ』

『他四人がボーゼンと置いてかれてる』

『その辺の話聞いたことないが特別感あるよな』

『社翔はこれだからやめられん』

 ・



「あ〜しばらくこの二人は使い物にならないから、残り全部開けちゃうよ〜」

「多分もう出ないかな」



 結局残りは何も出ず、最後まで二人は顔を沈めたまま。

 そして配信時間も終わりとなり、締めとなる。その間の話はマジで何も入ってこなかった。


「はい、今日は長々とお付き合い頂きありがとうございます」

「たくさんの収穫があったね〜」

「買ったかいはあったな」

「もう二度と止めてくれよ……」

「うん」

「あ、あはは……二人が静かなうちに、あれに関して発表しちゃうか」


 ……あれ?

 あれってなに?


「みんなが勝手に決めた感じだけど、社長の歌みたリクエスト、それは〜これだよ!」


『ロリ神』


「……………」


 開いた口が塞がらない。

 静かに膝をつき、精一杯の抵抗


「嫌だぁァァァ」


 ブレイクダンスみたいな抵抗の舞をして全身で嫌だを伝えてみた!


「◯シルかよ」

「これならまだ獣食うほうがマシだわ!」

「じゃあ虫食べる?」

「食べたことあるから却下!」

「あるんだ……」


 あるよ!ちょっと、食べる機会があってな……じゃなくて!


「嫌だ!せめてもっと普通なのを!」

「VTuberの時も歌ってなかった?」

「それとこれとは違うの!」

「何が違うかわかりませんが、決まったことですので、やらなかったら、どうなりますかねぇ〜」


 て、てめぇ!脅す気かクルシュ!


「さぁやりましょうね」


 ミコヒメも子供みてぇに諭そうとすな!


「諦めよう、社長」

「翔、お前もやるか?」

「やっ」


 なんでだよぉぉ!


「あっ、そろそろ時間だぞ」


 あっ待て!まだ話は終わらないぞ!だがら終わらせようとするなユウナ!


「今日は楽しかったよ〜」

「待て!何終わらせようと……」

「じゃあ、みんなで挨拶して終わろっか」

「なんて言って締めよっか」

「じゃあ……ゴニョゴニョ」


「行くよ〜せーの」

「「「「社長、お疲れ様」」」」

「おちょくってんのかぁ!!?」


 この配信は終了しました。



・・・・・・・・・・

後書き


歌みたは流石に歌詞を書くとかはできないからコメント欄の反応で伝えていく感じになるかな。

というわけで社長に歌わせるのはロリ神レクイエム!有名な曲でかつイメージ的にそれっぽいから。


そしてもう一曲予定中。未来へ(または虹色)のフリューゲルでもどうかと……。

こっちはみんなに引き摺られて強制的に歌わされてみたって感じで。


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