第51話 続々:九重通販
「では、次行くぞ」
お次はちょっと楽しみにしてた二つ。
「ブロマイドとポストカードだ!」
・
『前二つよりかは無難だな』
『待て、同志のこのニヤケ顔、何かあるぞ!』
『お前、九重ちゃんのこと見すぎだろ』
『可愛いやろ!』
『それはともかく、そういうことなのは間違いない』
『どんなものなのかなぁ〜』
・
「まずはポストカードだが、由実る先生の描き下ろしだ。全てに社長のサインも入れてあるらしいぞ」
「実物あるよ〜」
「私が描きました(ドヤァ)」
「これが生産者の顔な」
「おぉ、じゃあ写真を取って貼ろうか」
「やめてーー!」
・
『草』
『顔出ししてる先生とはいえ、流石に嫌か』
『わしゃ野菜ちゃうわ!』
・
「というのは流石に冗談だが、実際良いイラストだ」
実際、可愛いしカッコいい。
しかしランダム要素はこちらにはないので、欲しい人は買ってくれということで紹介は実物を見せるだけの予定
「ここのおヘソとかどうよ?」
……だったが、まぁ、先生本人がいるから終わるはずはない。
「チラ見せが可愛いし、プニプニしてるの良いね!」
「……なぜ見せる必要が?」
「おいおい奴ちゃん、そんなの語るまでもないだろ?」
「はぁ……」
その辺は奴ちゃんにはわからないみたいだ。
我は理解しているから黙って頷くだけだ。
「こっちは普段やらないロングストレートにされて、頬を赤らめてる。こういうの好きだろ?」
「黒髪ロングなんてたくさんいるだろ?」
「チッチッチッ。わかってないなぁ〜」
「なんだこいつ、殴りたくなったんだが?」
「奴ちゃん!抑えるのだ!」
うざいが、言ってることもやってることも正しい。我も可愛いと思うもん。
・
『悔しいがよくわかってやがる』
『どれも性癖に刺さる描き方をしやがる』
『プニ腹はえぇぞ』
『ストッキングもえぇよな』
『清楚な社長も良いよなぁ!』
『五種類しかないのに、様々な性癖持ちが魅せられてやがる』
・
好評そうだな。
「こちらは全5種類描いたけど、本当はあと十個位描いたからボツになった絵はあとで私のSNSで公開するからチェックしてね」
「なぜみんな揃ってボツ案を見せに行くんだろうか」
「埋葬のため?」
・
『見た人が喜ぶからだよ』
『世に出れなかった可哀想な絵たちが浮かばれないからだよ』
『絵描きとして認められないわけではなく、社長が嫌だって言ったような絵もあるわけだろ?そりゃお前、そそるだろ』
・
そういうことだぞ、奴ちゃん!
「声に出してないのに、ここまでわかりやすいものってあるんだな」
伝わったみたいで良かった。
だが理解はしてくれなかったか。
「商品の詳細は、全5種類で1枚300円で五枚セット1200円だ。ランダム要素はなくて、欲しいものを選んで買えるぞ」
「オマケのポストカードも付けたかったなぁ」
深くため息をつき、残念そうに耽る先生。というか、作ってたのか?作りたいじゃなくて付けたかったってことは、作ってあるのだな……。
「そんなのも作ってたのかよ……」
奴ちゃんも同じように思っててくれたみたいだ。
「当たり前じゃん。こっちはランダム要素なしだって言われて断られたけど」
・
『つまりそれもボツ案の絵として公開されるわけですな?』
『楽しみだ』
『いぇ〜いめっちゃ見るぞ〜』
『有料が無料に!?これには社長に、いや由実る先生に感謝だな』
・
「突っ走って描き過ぎだよ〜もっと話が進んでから描こうね」
「だって筆が進んだんだもん」
「子供みたいに言うな」
不貞腐れた顔をしてる先生をクルシュが宥めるように注意してそれを突き放す奴ちゃん。
それを黙って見守る?というか鑑賞する我。
話は進めたいがこのやり取りもまた良くて……
「九重ちゃん、こっちは良いから番組を進めてくれ」
「はっ!奴ちゃんからの頼みなら仕方ない」
「……九重ちゃん黙ってこちらを伺ってたのって、ただ私たちのこと見入ってただけかよ」
……バレてしまったら仕方ない!
ここは割り切って〜
「ブロマイドの紹介に行くのだ!」
逃げるのだ!
・
『逃げたな?』
『誤魔化したな?』
『逃げるな!ちゃんと見入ってましたと言え!』
『恥ずべきことではないんだぞ!』
『大人しく認めるんだ!』
『奴ちゃん好き、と言いなさい』
・
「奴ちゃん、好きだ!」
「い、いきなりなんだよ……」
あっ、コメント見てなかったから、これじゃ我がただ告白したみたいではないか!
ツッコミ待ちだったのだが、ここは……
「奴ちゃん、いちファンとして大好きなのだ!」
ファンとしてを入れて誤魔化そう!
「そ、そうだよな。いきなり好きとか言い出すからビックリしたぜ」
よしっ。
「誤魔化したね〜」
「まぁ、間違ってないから良いけど、面白いから告白とかすれば良かったのに」
クルシュちゃんと先生は黙るのだ!我はいちファンだ!ファンとして、配信者が特定の誰に肩入れする状況は作りたくないのだ。社長とか他の配信者は別だが。
「さぁ、ブロマイドだが」
・
『ゴリ押しやがる』
『まぁしゃあない』
『次も気になってるしな』
・
「これらだ」
サンプルとして今この場にいる二人のブロマイドを用意した。
「全部見せるのは面白くないからな」
「奴ちゃん、シンプルで可愛い〜」
「クルシュ先輩こそ、可愛いじゃないですか」
二人とも良いので後でこれは保存するのだ。
紹介用に、貰った、ものだから我がどうしようが勝手なのだ。
「そして、開封用のも用意したのだ」
「二人分ね」
「先に詳細を説明すると、1セットランダム五種類が入ったものが500円。一箱なら25セット1万円とお得になってるぞ。種類はSuma配信者全員だ」
ちなみに我は入ってきた給金を使って1カートン(十ニ箱)を注文したぞ。一箱でだいたいコンプリートはできるが、ヨイヤミさんの言っていたヨイヤミさんのサイン入り、メッセージ入りのやつが欲しくて豪快に買ったのだ。
これは今度の配信用に使うと決まっている。
というか、その条件でヨイヤミさんに購入を許されたのだ。
なぜヨイヤミさんに許しがいるかって?これの届け先が会社になるから、そして保管先がヨイヤミさんの家だからだ。
まだ我家ない。というか、家を買うどころか借りることのできる金銭的余裕がない。グッズとかメンシとか配信サイトのプレミアムとかでお金が吹き飛んだのだ。
それに、会社に寝泊まりしていたからあんまり気にしてなかったのだ。
「というわけで早速開けるぞ〜」
「お〜」
「見守り組はコメント返信してるね〜」
「私はそういうのはしないよ、配信者じゃないから!」
・
『背景が社長ww』
『全員関係者ってこういうことね』
『奴ちゃん可愛いぃぃ!』
『背景の社長と一緒にピースしてるのホントに純粋で良き……』
『クルシュちゃんはカッコいい社長を背景に応援してる感じかな?』
『これは他の配信者のも必見だな』
『フルコンプは絶対です』
・
「よし、準備が整ったぞ、開けるぞー」
「じゃあ、私から行くよ」
ハサミで丁寧に袋を開けて、ブロマイドを取り出す。
「はい!ぷふっ」
「えっと、翔ちゃん、奴ちゃん、夜霧ちゃん、ツクヨミさん、コードレスちゃん(VTuber部門第5部)の五枚だな」
……翔ちゃん、なんでドゲザーしてるのだ?
「怒ってる背景使って、土下座するのもどうかと思いますが、これ以上ないほど良いですね」
「他の四枚全部まともな可愛さしてるのに」
「コードレスちゃんはイキってますけどね」
コードレスちゃん(フルネーム:コーネリア・ドミニオン・レスタルム・鈴)は、見た目がヨイヤミさんとどっこいどっこいな小ささをしていて、性格も小さい子供そのものだ。……(一応成人済み)。
クソガキの性格からイジられキャラとしても定着してる。
何をしたのか知らないが、ヨイヤミさんにはかなり怯えてる。
「残業確定で落ち込んでる社長をバックに高笑いとか……」
「後で大量の仕事が行くんだろうな〜」
・
YoIYaMi『もう送った。大量のサイン書きの仕事と、これからやるイベントの資料とかな』
『あぁ〜あ』
『やんなきゃ良かったのに』
『ま〜た同期のミコヒメママに助けを求める姿が予想できるよ』
『やね〜』
YoIYaMi『ちなみに、巫女姫にもイベントの資料を送った。今は手を貸せない』
『完全にトバっちりを受けてる人がいるんですが』
『ま、まぁ、どうせやらないといけなかったものですし?』
『それが早くなっただけだ。うん』
『せめて、特別手当を上げてやれ』
『……あぁ、だからミコヒメママ最近新機種のゲーム機買ったのか』
『あ〜そういう』
・
もうやってたよヨイヤミさん。
「あんまりなま聞かないようにしないとな」
「そうだね〜」
……よし、次だ次〜
「我の分を開けるぞ!これだ!」
出てきた五枚は……
「コードレスちゃん、クルシュちゃん、ユッケちゃん、クスリちゃん、っと……あっ!」
「えっ?なにこれ」
ラスト1枚、それは激レアバージョン奴ちゃんのブロマイドだった。
「こんなの知らない……ちょっと見せて」
「だ、駄目なのだ!これは厳重に保管を……」
滅多にないものなのだ!しかもこんなピンポイントで奴ちゃんのが出るなんて!は、早くスリーブローダーカード立てを用意して……
「えい」
「あっ!」
「あっ、やっぱり社長のサインと一緒になんか書いてある。えっと……『いつもお疲れさん、まだまだ私たちの予想を超えていってくれよ』もしかして社長からのメッセージ入りのレアブロマイドってこと?」
・
『えっ?マジ?』
『もしかしなくてもそれが全員分存在するってことだよな』
『やばっ!』
『あれ?これって隠し要素として伏せておくやつでは?』
『たまたま抜いてしまったわけか』
『この驚きようからしてめちゃくちゃレア度の高いってことがわかる』
『全員分に社長からのメッセージが入ってるってことだな』
『なにそれ、あったけぇ』
『お前ら買い占めは駄目だからな』
『一人一カートンまでだからな』
『は〜い』
『それ以上は買えませ〜ん』
『ちなみにカートン何箱?』
・
あぁ、しまった……こんなところでお披露目となるとは……我当日に店舗に買いに行く予定もあったのに、これでは買えないではないか。
「とりあえずこれは我のものだから良いとして」
「良くない、とりあえずこれは私が貰うから」
「なして〜!こんなレア物一生手に入る気がしないのだ!中古は嫌だ!自分で当てたものがいい!」
「これは私に向けたメッセージだ。なら、貰う権利は私にある」
ぐぬぬ、奴ちゃんにそう言われると……ん?奴ちゃん、心なしか頬が赤いような。
「はっ!照れて」
ドンッ
我の耳(狐耳)の間をナイフが通過した。
我の髪が軽く持ってかれた。
「それ以上言うなよ?」
黙って首を縦にブンブン振るしかなかった。
怖いぃ。けど、照れてる奴ちゃん可愛いから許す。
「さて、後で社長に言って新品に私のサイン付けて送るから」
「どうぞお収めください」
・
『手のひらクルクルドリルやん』
『潔いなぁ』
『欲望に忠実きーつね』
『まぁ、プレミアにプレミアつくし、それが推し直々にくれるってんだからしゃぁない』
『安いもんさ、激レアブロマイドの1枚くらい』
『めちゃくちゃ渋ってたのが嘘みてぇな顔してんのな』
・
貴様ら!好き勝手言うがな!逆に、断れるなら断ってみろ!我は無理だ!
「社長も、こういう形じゃなくて直接言ってくれりゃ良いのに」
カードを優しく抱くように持ち、それを書いたヨイヤミさんへ向けた満面の笑み。
あぁ、尊い。
ほら、見てみろ、通話の先にいる二人も黙ってしまってるぞ!
「よし、注文完了!」
「クルシュちゃん……」
そんなことなかったのだ。
というか、クルシュちゃん、なんで今購入してるのだ……。
「……あっ、販売前に完売してるのだ!?」
・
『クルシュちゃん、静かだと思ったら……』
『クルシュちゃんはともかく由実る先生はなして?』
『さぁ?』
『完売マ?』
『マ。アーマー・ゾーンも楽亭ももろもろ逝ってるよ』
『くそ、二箱しか買えんかった!』
『こんなの社長想定外だろ』
『これを見越して大量生産してたろうに』
『これは豪運狐が悪い』
『まさか、あんな暖かーどがあるなんて思わんやろ』
『ブロマイドやがな』
・
こ、このままでは追加購入なんてできないぞ!
ピリリりりリリリ
……ヨイヤミさんなのだ。も、もしかして追加生産のお知らせか!?
「出ても良いか?」
・
『このタイミングだ。社長しかないから良いぞ』
『ちゃんと確認できて偉い』
『さぁ、ちゃんと増販の告知をするのだ!』
・
「もしもし」
『おい……やってくれたなぁ』
「完全に事故なのだ」
『わかってるが当たらせろや』
「理不尽だ……で?何のようなのだ?」
『発売前増販が決定した。超特急で生産元に掛け合って、何故か準備万端だった先方が快く受けてくれた。流石に倍は無理だから初回生産の数と同じだけ増販になった、以上。一応宣伝しろ』
「ありがとうなのだ〜」
『はいはい、余計な仕事を増やしやがって……』
プツン
ここから先は小言のオンパレードそうなので切るのだ〜
「というわけで、皆の予想通りヨイヤミさんが迅速に動いてくれたおかげで追加生産確定なのだ〜」
・
『発売前だぞ?』
『社長だから当然』
『まぁ、ブロマイドならな』
『生産元もちゃんと備えていてくれてたってわけか』
『じゃないとこんなトントン拍子でできるわけないからな』
『よっしゃ、絶対確保するぞ』
・
「第3次生産は未定だから欲しい人はしっかり予約をするのだぞ!」
「相変わらず手が早いね〜」
「私買ってくるわ。そして開封配信で出たブロマイドをそのままイラストに起こす配信するわ」
「ぜひとも見させてもらうのだ」
「えへへへ……」
奴ちゃんはしばらく満面の笑みを浮かべたまま動かず、他の三人は発売してからのことに思いを馳せるのだった。
・・・・・・・・・・
後書き
どうあがいても社長グッズ配信が長くなりすぎる。まだ二つ残ってるかつ、発売日配信もあるのに!最初ツクヨミさんの酒を入れたのが少し悪いけども。
あと、社長グッズの件が一段落ついたら、現在出してる登場キャラの名前を纏めた表を作る予定を今作りました。
今回のコードレスちゃん、ミコヒメママを突っ込んだことで気づいた、開封配信なんてしたら半分くらいの配信者名一気に出さねぇといけないじゃんって。
開封配信で名前だけ出したら忘れるのは間違いない。から表を作ることを決めました。
この関係上歌みたとASMRネタとかはもうちょい先になりそうです。
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