第50話 続:九重通販



「さて、今日は次で最後になるが!次のはみんなお待ちかねのだぞ!」

「今回はSuma配信者みんな関係者だからお口を固くチャックしてるのしんどかったよ〜」

「そうですか?」

「配信者じゃないけど、関係者の人です」


 ・

『みんな関係者?』

『由実る先生も関係者となると……なんだ?』

『お待ちかねってことは、前に誰かが告知はしてたってことか』

『あっ!まさかっ!』

 ・


 気づいたものも出始めたな!


「それでは、発表するぞ!」

「次に紹介するのは〜これ〜!」


 じゃん、カメラを動かして、そのグッズを広げて置いてあるテーブルに向けた。


「本人(イヤイヤ)公認、社長グッズだ」

「ほら奴ちゃん、もっとテンション上げてけよ」

「嫌です」

「じゃあ私上げようかな、いぇ〜い!」

「由実る先生、紹介に入れないからし〜っだ」

「すみません」


 ・

『ぉぉおお!』

『ついに来たのか!』

『我らが社長グッズ!』

『このために収益を貯めていたんだ!』

『紹介はよ!』

『えっ、何これ、霧ちゃんのグッズだ……』

『あれ?なんか変な人が』

『しっ、黙ってろ』

『パッと見で社長が絶対やんなそうな抱き枕映ってんの策略感じるの草』

『OH!Definitely buy it!』

『なんて?』

『絶対買うってさ』

『とりあえず詳細を聞いてから。ホームページガン待ちしてるけどな』

 ・


 やはり、盛り上がり度が違うのだ。

 流石はヨイヤミさんってところだ。

 ちなみに、我はヨイヤミさんは推してない。だって怖いから。というか、親みたいな人を推せるか?無理なのだ。


「皆が待ちわびているので、早速詳細に入っていくぞ」


 最初はやはり、これか。


「アクリルスタンド!普段着のヨイヤミさんが足組んで仕事してるところだ!」

「普段着じゃないぞ、スーツだぞ?」

「いつもはもっとラフな服着てますよ〜」

「スーツが普段着でもなんの違和感もない社長よ」


 普段着ではないが、撮影に出るときは必ずスーツ着てたりしてるから、皆からすれば普段着だ。

 我もちょっと前まではいつも同じの着てると思っていた。働いていくうちに結構普通なもの(パーカーとかジャージとか)を着ているのだと知ったのだ。


「と、これが一種類目。ちなみに絵は翔ちゃんたちがササッと描いたものを手直ししたものだ」

「らしいね〜」

「あの人絵上手いんだよな」

「そうなんだ」


 ・

『見え、とか期待した私が馬鹿でした』

『あの人が見せるわけ無いだろ』

『スーツもピッチリではない普通な辺りしっかり考えてるんだな。男心を』

『ファンがそのうちピッチリなスーツ社長かブカブカスーツの社長を作りそう』

『作ります』

『買います』

『翔ちゃん(たち?)って絵上手いんだな』

『少なくとも原画の時点でしっかり出来てるわけだもんな、こうやって公表するってことは』

『今度お絵かき配信してもらおうかな』

『社長はスーツ姿が普段着』

『じゃなかったんだ』

『それにはビックリ』

『普段着社長も欲しいな』

『ラフな格好……オーバーサイズのパーカーかな?』

 ・


「あぁ、そういえば翔ちゃんから没案の絵をもらってたな」


 昨日か一昨日か覚えてはいないが、翔ちゃんからこのイラストとともに手紙が来てた。


 没案イラスト集。紹介してね?


「とな」

「ちょっとイラストレーターとしては気になるね。早く見せて」

「じゃあ行くぞ」


 ・

『わぁ』

『これを社長が良いって言うと思った?』

『誰が描いたか知らないけど上手いな』

『翔ちゃん、君どうなるかわかってるね?』

『絶対後でアイアンクロー食らってそう』

『だね〜』

 YoIYaMi『そういうことだ。翔、次会ったときは、わかってるな?』

 SHO.ch『あ、アハハ〜。ち、ちなみになんだけど!一緒に描いたのは同期の二人だからね〜』

『話題反らせてないよ』

『二人を巻き込もうとしてるけど無理だと思うよ』

 Kusuri.ch『巻き込んだら許しませんからね?』

『とのことだ』

 ・


 翔ちゃんの尊い犠牲は忘れぬぞ。

 さ、公開していくか。


「こんな感じだ」

「これはカッコイイ」


 奴ちゃんが指さしたのは、剣を構えて戦う姿の社長。

 迫力は高いし、背の低さが気にならないほどの臨場感のあるイラストだ。


「わぁっ、これは怒るね〜」


 続いてクルシュちゃんが指したのは、アイドル衣装風のイラスト。

 ヒラヒラが強く、絶対しないような表情までしてたらまぁ許さないな。


「これは……良いね」


 最後に由実る先生は悪ふざけで描いたらしいビッチみたいなイラスト。本人談、描いた瞬間に拳骨落とされたんだという。


「いつか社長にこの服着せたいかな〜」

「えっ?これを?」

「?」


 噛み合わない、噛み合わない。アイドル衣装を着せたいんだな。だが由実る先生はそっちのビッチみたいなものを見ているから驚くのはしょうがない。


 ・

『ちょっと作ってくる』

『ちょっと描いてくる』

『ちょっと行ってくる』

『やべぇ、何かを焚き付けたみたいだ』

『ほっとけほっとけ、次のコミケが社長一色になるだけだ』

『それは嬉しい』

『悪ふざけで描いて良いものじゃなかった』

『これは実刑追加ですね〜』

『奴ちゃんが可愛い』

『噛み合わない通話組』

『アイドル衣装は真面目に検討してもらえません?』

『嫌だ、と言ったら?』

『無理矢理、外堀を囲い込んで着せるだけさ』

『ビッチ衣装もそのうt……や、やめっ、アッ』

『馬鹿なやつ』

 ・


「どっちも着ないから大丈夫だろ」

「そうだな」


 奴ちゃん言うとおりだ。ヨイヤミさんが着るはずない。着たとしてももうちょっと大人しいやつだろう。


「さて、次に行くぞーこのままやってたら日付を跨いでしまいそうだ」

「そうだな。私はともかくクルシュ先輩は明日配信があるそうなので、あまり長付き合いさせるのも悪い」


 そういうことだ。では次!


「抱き枕だぞ」

「え〜っと、さっきチラッと見たときから思ってたが、よく通してくれたな、社長」

「なにやら、事後承諾で断るに断れなかったとか」

「酷いなぁ」


 それに関しては我は知らぬところだ。

 誰がそんなことしたのかも知る必要はない。


「表面は雑魚寝というか普段の社長、裏面が大人の社長になってるぞ」

「ギャップよ」

「そうだな、イメージ通りの社長とイメージとはまるで違う社長のギャップは大きいな」


 まぁ、我からしたらあの大人のヨイヤミさんはあんまり見たくはないな。

 だって怖いもん。普段のヨイヤミさんですら怖いのにあのときの社長の力をハッキリ見たり食らった身としてはあれを使うヨイヤミさんもそれを使わざるを得ない相手も怖いからその象徴たる大人ヨイヤミさんは恐怖そのものだ。


「だが、我目線からみても、大人のヨイヤミさんは普通に美しいんだがな」

「こんなアニメみたいな人が現実にいたら、イラストレーターとしてはなんか複雑だったね」

「創作を現実が上回ったから?」

「そゆこと」


 ・

『やべぇ、欲しい』

『待てお前ら!これは罠だ!』

『な、なにぃ!?』

『買ったやつから変態が釣れていくという罠だ!気をつけろ!』

『罠だとわかってても行かなきゃいけないときがある!』

『それに、これが商品化されてる時点で大丈夫だ!』

『事後承諾らしいけど?』

『そんなことは意図してないらしい』

 YoIYaMi『なるほどね、そういう考え方があるわけね』

『あっ』

『おい!こんなこと言い出したやつ!』

『ごめんなさいごめんなさい』

『お前は平職員に降格だ!……平謝りだけに?』

『ありがとう、俺なんかを気づかってくれて』

『さむ〜〜い』

『頼むからやめちくり』

『で?結局おまいらは買うんか?』

『買う』

『雑魚寝社長だけでも素晴らしいのに、エロティックボディの社長まで!買わないわけないよなぁ!』

『あれ?これって現実のやつ?それとも創作のやつ?』

『一応現実だぞ?』

 ・


「詳細を説明していくぞ。大きさはこんな感じだ」


 手に持って、我と横並びにさせる感じでサイズ感を伝える。

 我の胸辺りまではあるから……1.5メートルくらいか。

 抱き心地は何故か抜群だ。


「なんでこんな抱き心地が良いのだ?」

「さぁ?」

「触れられないからわからないんだけど、そんなに良いの?」

「あぁ。これ抱いて寝たらすぐ寝そうだな」


 我もそう思う。

 ふかふかで包みこまれるような感覚だ。

 魔法的な力はないのに、眠りにつかせる魔力があるのだ。


「ヨイヤミさん!今度、これ抱いて寝てみてなのだ!」

「あっ、そうだね。寝かせるキッカケになるし」


 ・

『寝れてないんか?』

『よし、今度睡眠配信してくれるよう頼み込もうぜ!』

『いいな。あの雑魚寝が普段の寝相を予想させる!きっと良いものになるはずだ!』

『お、霧の睡眠か?俺も見たいぜ』

『黙って帰れ50460』

『いや…待っ!もうちょい!もうちょい見せt……』

『あの人はともかく、ちょっと寝ているイメージない社長には一度みんなの前で寝てほしいな』

『よし!お前ら!#ゆっくり寝てください社長 で外堀埋めようぜ!』

『よっしゃ!』

『拡散は任せろ!』

『わぁっ、はや〜い』

『流石の知名度だな』

『それでもこの速度はイカれてるけどな』

『流石社長』 

 ・


「余計なことを口に出したような気がするぞ」

「私もだ」


 後日談とはなるが、その#タグは拡散されまくった結果、トレンド一位となり睡眠配信をやりたくないとは言えず、泣く泣くやることになったそうだ。



・・・・・・・・・・

後書き


気づけばすでに50話目。

見てくれる皆様のお陰でここまで続けてこれました。これからもどうぞよろしくお願いします。




追記:募集。

歌ってみたやASMR回をそのうち書くのですが、誰にどんなのが良いかを募集。

特になければ普通にやりますが、折角ならということで募集してみることにしました。

何かあれば感想に書き込んでいただけると幸いです。


何もない場合、歌みたはともかく、ASMRは社畜と一緒、になってしまう!

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