第48話 やめろ!くるな!私のグッズぅ!



 あっという間に休暇が終わりました〜。


 事務所にくるの久しぶりだわ。一週間も経ってねぇけどよ。


「おは〜久しぶり〜聡k……おいなんだこれ」


 事務所に入り、社長室に入って、聡子がいるのが外から見えて話しかけようとしたら、それが目に入ってしまった。


「あっ、社長。小さいですね」

「お前失礼だな」

「失礼しました。おはようございます。これでしたね?」


 今しがた届いたであろうその箱。引っ越しの箱くらいの大きさのそれは、何度も見たことのあるところの箱。


 いつもは、家の子たちのグッズの入った箱の中身。

 だが、今回のそれは、間違いなく、


「社長のグッズです」


 箱を開けて、中からスッっと自分の姿をしたアクスタや抱き枕などが……


「嫌だァァァァっ!」

「さ、一緒に確認しましょう?」

「ふっざけんなぁぁぁ」


 完成したグッズは確認用のサンプルとして販売前に送られてきて、それを当然私やそのグッズの子で確認し問題なければ販売に移行する。

 そして、そのグッズは私のだ!


「いつもやってることですよ」

「その通りすぎる!」

「さぁ〜やりますよ」


 嫌だ!嫌だ、けど……これも私の仕事だし、許可出したのも私なんだよ……やるっきゃねぇか。


「まずはアクリルスタンドです」


 いつも通りの私が、社長室の椅子に足を組みながら座ってる感じのだな。

 特別な衣装とかはいらん、っていうのを理解していた翔たちがささっと描いたイラストをもとに作られたものだ。

 もちろん足組してても中は見えないぞ?

 そもそもスーツだし。ピッチリでもねぇし、何ならゆとりあるし。


 ……問題なし。


「続いて、急遽追加されました抱き枕です」

「聞いてねぇけど?」

「今言いました」


 続いて出されたのは抱き枕。

 表面には力尽きて家の床で雑魚寝する私。裏面には大きい方の私が無防備に、だが品のある寝相で寝ているイラスト。


「需要があるんだろうなぁぁぁぁ」

「ですね。だから作ったわけですから」

「許可した覚えねぇぞ!」

「今取ります、許可していただけますよね?」

「ぐっ……許可」


 ファンとしても社長としてもこれは売れると思うし需要もある。断る理由は私が嫌だってだけ。

 個人の意志でたくさんの人の期待は裏切れん。もちろん絶対駄目なら損得切り離してやるが、今回はただ嫌だってだけだからなぁ。


「続いて、社長のペン」

「いつも使ってるモデルのコラボバージョンだな。これ、すっげぇ耐久力高くて、腕も痛くならなくて、綺麗に書き続けられるペンなんだよな」

「社長にオススメされて買いましたけど、本当に良いペンですよね。まぁ、値段は張りますが」

「良いだろ、どうせ経費なんだし、買い替えもほとんどないんだから」

「そうですね」


 ちなみに、オススメのかいあって、わりと家の社員の多くがこのモデルを使ってくれている。

 値段にすると五六千から一万くらいまで。

 それでも安物使ったり、手に合わないものなどを使うなら値段をかけてでも自分に合うものを使おう。まぁ、初期はクル◯ガ使ってたけど。


「まぁ、その分値段がねぇ」

「一万と二千ですから、そこまで数は用意してません」


 流石にただのペンでここまでの値段だ。払う人は限られていると踏んでそこまで用意していない。

 まぁ、流石にな。ただ、ペンの製造会社からはもっと作っておきますね、と連絡が来ている。

 まさかなぁ。


「通常のものと違うのは社長のサインが刻んであるくらいですからねぇ」

「サイン欲しいだけなら次のポストカードで良いと思うんだがなぁ」


 流れで取り出した続いての商品はポストカード。


「イラストはバーチャルのガワを書いてくれた由実る先生でしたよね」

「あぁ。また性癖が出るようなイラストだなぁ」


 まぁ、それが良いんですが!クリエイターは性癖をさらけ出してなんぼだからな!

 ポストカードにはバーチャルの私の描き下ろしイラスト、それに全て複製サインを入れている。


「それと、このブロマイド……なんです?これ」


 一緒に括られて出てきたブロマイド。

 それは、何故か私が背景のそれを家の子たちが思い思いのポーズでツーショットしているもの。

 背景の私は恥ずかしがっているやつや怒り狂ってるやつ、ツンツンしてるやつ、笑顔のやつなどなどいくつかある中で、これだと思うやつを使ってそれに被せるように写真を取り、それを合わせたブロマイド。

 例えば、翔は私の怒り狂ってるやつを背景に土下座してる。

 奴ちゃんは笑顔のやつで笑顔でツーショット風に。

 とまぁ、これが家の子の数だけ種類がある。


「翔にゴリ押されたんだよ」

「あぁ、あのときの……」


 そう、あのときのやつである。

 四人で集まってもなお、妙に気に入った翔がブレずに主張を続け採用となった。


「こちらはランダム五種類セットで五百円。一箱で一万円です」 


 一応、これは大量に用意している。なにせ、手軽だからな。

 あとはコレクション要素の高いものは大量に用意しなければ高騰が半端ないからな。


「直筆サイン入り(サインとそのイラストの子への直筆メッセージ)というのを用意した。完全に伏せてな」


 高騰対策で、あえて排出率の超低い(10万分の1、セットに直すと2万セット分の1)激レアものをいれて、その他の流通数、つまりは流通する一枚あたりの母数を増やすことで、それ以外は高騰を防ぐやり方だ。


 だからといって最初からそれを知らせていれば、買い占めが起きてしまうので、完全に伏せた状態で販売を開始、最初のうちは皆が買える状態にするのだ。


「種類が多いと全員コンプむずいからな。その辺も考慮した結果だな」

「まぁ、好きにしてください」

「次がラストだが……5分の1スケールフィギュア。約三十センチ(148÷5=29.6)」


 デカイなぁ。

 限定千体販売。

 一体三万円。ポーズは玉座の魔法を放つときのものをバーチャルの姿に直したもの。


「誰が買うねん」

「少なくとも翔さんとかは買いませんか?」

「買いそうだなぁ。まぁ、私も推しのそういうのなら買うわ」

「そういうことです」


 ってわけだから、数と値段が値段なだけに、完全抽選販売だな。


 このフィギュアも反対したんだけどなぁ、フィギュアは絶対!って押されて、仕方なく生産数が少なくできるこのサイズにしたんだが、これはこれでなんか嫌だな。

 まぁ、自分ってよりかは自分のアバターに近いわけだから羞恥は抑えられてるから良いが、いざ自分のって見ると、普通に嫌だな。


「これを誰かに買われて、飾られたりマジマジ見られるとなぁ」

「そういうものです」


 今更だよな。うん。


「さて、これで全部ですが、売り上げ、人気次第では次回を計画します」

「いぃやぁだぁぉ!」

「結果が出てしまった場合、嫌は通じません」

「知ってる!わかってる!そしてどうなるかも見えてる!」


 次はないからな!と言いたいが、絶対に売れてしまうことが目に見える。

 今の私に対する注目度、これまでに積み上げたSumaとしての知名度がそれを許してくれないとわかってる!


「やるしか、ないんだ」

「はい、やってください」


 社長としては良くないが、私個人の意志としてはグッズが売れないことを祈るばかりだった。



 ・・・


 ヨイヤミさんから試作段階のグッズが送られてきた。


 販売から数日したら宣伝するから先に見ておいてとのことだ。

 公式配信は三回ほど一人でやって、もう慣れたのだ。最初、つまり二三回目のときはヨイヤミさんは一緒にやろうかと言ってくれていたが、とんでもない。こんな幸せな時間は独り占めしたいではないか。

 毎回毎回、推しの新商品を目の前で触れたり、まだ届いてないやつらに自慢できるのもまた良い。


「そろそろあれをやろうか……」


 公式の配信で、かつ我が社員だからこそできる特権!


「ゲストと称して推しを呼んで話す権利を!」


 実にしょうもないあれである。雰囲気があれだっただけにあれである。


「さて、誰にしようか……翔ちゃんか?それとも奴ちゃん?はたまたユッケちゃん?いや、クスリちゃんも捨てがたい。いや、VTuberの方も……」


 ちなみにではあるが、九重は冒険者組を飛び出して、すでにVTuberの方にまで手を出し、完全にSumaの社員兼職員である。


「よし!決めたぞ!」


 一人には決めきれんかったから二人ほど出演の打診をして、了解を得られたらそのまま呼んで配信だ!

 楽しみじゃのぉ。


 と、これが公式の看板となった九重の姿であった。




・・・・・・・・・

後書き


筆が乗ったので連日更新。ついでに下記の説明のため。


感想の返信に関して、今までは質問や修正、アイデアをもらったときなどに反応していましたが、それに加えて本編とは関係ない話題にも反応していこうと思います。

理由は皆様と話すことで得られるものがあると思ったのと、何よりそうやってネタや独り言に反応してくれたことが嬉しいからです。


本編、本編への感想等は自分が話したがりなので確定してないことや裏設定的なものをぶっ込んで自分の首を締めるかもしれないので戒めのために質問以外は返信しないようにしております。

誓って、感想にマイナスな感情は抱いているわけではありません。


というわけでこれからもよろしくお願いします。


追記:ネタ募集は常にやってますので、ありましたら遠慮せずどうぞ!

たくさん来たら全部はできませんがなるべくやっていきますので。


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