第47話 げ、ゲーマーとして……。私、負けないし



 はい、社長に頭抜かれたクスリです。


 現実が受け止めきれません。


「初めてやった試合の負け方がこれって……」


 ・

『ど、ドンマイ』

『相手が悪い』

『いや、漁夫まで上手く行ったのに理不尽によってスクラップされたの可哀想すぎ』

『今後フラッシュバンとサウンドボム使うと後ろに注意しないとイケない体にされてそう』

『今社長視点映ってるけど、フラッシュバンとサウンドボムの二つがチラッと見えて気づいたくさいよな』

『いや、それでもこの距離から撃とうとは思わんだろ』

『しかも当てとる』

『あ、社長に抜かれたものです』

『おや?』

『安置移動中に、綺麗に逝かれました』

『ご愁傷さま』

『少し離れたところに同じく安置移動してた人もいたのに、その中から私だけ抜かれました』

『涙拭けよ』

『あ、俺もやられました』

『一応聞くぞ?どんなふうにだ?』

『ただ戦闘を終えて回復しながら漁ろうと壁を張ったときに、弾が壁に当ったんだ』

『おや?防いだのか!』

『それでここは不味いって壁張りながら逃げてたら肩抜かれて、死にかけた』

『だが、2発耐えたのか!』

『だけど、油断した瞬間逝かれたよ』

『いや、おめぇはすげぇよ』

 ・


「えぇ、皆さん凄いですわ。わたくしなんて汚い戦法を取って味を占めていたら一瞬でしたから……」


 涙拭こうかしら?

 他にも結構な被害者がいるっぽいですね。

 現在進行系で、かなり気持ちの悪い精密ショットで人が減っていますから。


「ですが、武器ピストルとスナイパーだけでそれ以外がないからもしかしたら、なんてことありません?」


 ・

『確認してきたんだけど、近づいた奴はいたよ?』

『けど、スワイプショットで逝かれてた』

『私の後ろに立つなってか?』

『ホントにそんな感じで撃ち殺されたよなぁ』

『で?んなゴ◯ゴみたいなのにどうして近づきたいよ?』

『弾切れか、安置外で死んでくれることを祈るしかねぇよ』

 ・


 社長はホントに規格外してますねぇ!


「……見ててつまらなくなりそうなので、お二人の視点を見ますか」


 画面をいじって、翔の視点〜


「うわっ……」


 そこには、いつ近づいたのやら、先程まで見ていた光景と似た風景が映っていた。


「これは……寄生、というのでしょうか?」


 つまり、社長のいる場所に近いところでハイドしているわけだ。


 ・

『社長ってわかってないでこれやってるんかな?』

『持ち物も回復とステルス系ばっか』

『こいつ、最後の方になったら安置外耐久する気じゃ……』

『どうしてそんな考えに至るんだよ』

『翔の方の話聞いてきたんだが、隣にいたプレイヤーが突然抜かれて、今から戦おうとした人もやられて、あっ無理だ。って悟って耐久にシフトしたっぽい』

『賢いのか?』

『まぁ、間違ってはないわな』

 ・


 間違ってはないのですが、配信者としてそれはどうかと……まぁ、わたくしが言えた口ではありませんが。


「で、では夜霧ちゃんの方は」


 パパパパパパ


 ……すっごい銃声ですわ〜


「戦闘中かしら?」


 というか、こっちはこっちで凄いですわね。


 見る限り、ひたっすら守って撃ち返して守って撃ち返してを繰り返していますが……


「弾が発射されるタイミングで壁を張ってる……」


 ちょっと、こちらも異次元ですわ〜


「あ、お相手が倒れましたね」


 ・

『というのをもう十回ほど繰り返してる』

『ビックリするくらいダメージ受けんのよね、夜霧ちゃん』

『やってることは普通に社長以上』

『恐らく社長の超精密スナイプも避けてる』

『うそん……』

『音も聞こえないような位置からの射撃なのに、なんで避けられるんだか』

 ・


「……上手いですわ〜」


 もう、何なんですの?この魔境。

 こんなところに初心者なんて放り込むものじゃありませんわ。


「わたくしにはこれ以上言えることないですわ」


 もう、静かにこの戦いの行く末を見守りましょう。



 ・・・



「ひっ」


 スナイパーの気配!

 急停止!


 ヒュン


 目の前に弾が落ちた。止まっていなかったらこれで死んでた……


「ど、どこから……えっ?ホントどこ?」


 も、もう移動したのかな?とりあえず、安地きてるし移動しないと


「ひゃっ!?」


 またスナイパーの気配!?

 というか急停止!


 ヒュン


「あ、あぶなぁ……」


 目の前スレスレ、危なすぎる……も、もしかしてあそこから撃ってきてる?


 視線、というか弾道から逆算して、あそこらへん、安地内の山の上から?

 いや、どんな距離……でも確実に当たる撃ち方をしてきている。


「回復なくなっちゃうけど、遠回りしよう」


 超人から狙われるよりはまし、だよね。



「接敵。ふっ、はっ、ほっ」


 撃って撃って、怖くなったら壁張って身を隠す。

 そんなことを繰り返して一人〜二人〜三人〜と倒していく。


「10キルたっせ〜」


 よ〜し、このまま勝ちきりたいな〜


「安置きてるし、移動は早めにしよう」


 またスナイプされたらたまらないし、回復も実はそこまで余裕はない。

 対面でダメージはないんだけど最初の安置ダメージ結構痛かったからなぁ。


 パパパァン


「いったぁ!?」


 ナニナニ!?何が起きた?!

 死んでないけど体力ミリになっちゃった!これは……


「……花火玉?」


 空に打ち上げて火の粉を降らせるアイテム、らしい。けど今の体力の減り方、直当てされてた?


「いや、索敵用に投げたのにたまたま私が引っかかっちゃったのか……」


 って、まずいまずい!詰めてきてる!


「すっ……ふぅ。やったらぁ〜い」


 頭出して〜手を出して〜撃って〜ちょっと逃げて〜よしっ。


「あと少しなんだけど〜なんかもう一人きてるんだけど……」


 どうする?逃げあり。

 逃げられるかは別だけどね。


「んじゃ、逃げるか」


 顔を出して威嚇射撃しながら、よし、退散。


「よし、なすった」


 漁夫はありだけど、ガッツリこっち警戒してるから無理かな。安置だけ移動しよか。

 その間に回復を探しながら〜


「んげっ!?」


 どこ〜〜ん


 何かに気づいたのも束の間、爆発物を踏んづけて吹き飛んだ。


「し〜んだ〜」


 マジで今日変なダメージの喰らい方多い気がするなぁ。


 ・

『お疲れ〜』

『かれかれ〜』

『なんというか、どんまい』

『不幸な死だった』

『社長のスナイプを狙って避けられるなんて……』

『キルペースも擦りもよかったのに』

『クスリの次が夜霧だとは……』

 ・


「あ〜あ〜聞こえますか」

「あ、そちらもお亡くなりに……」


 私よりも先に死んだのはクスリ先輩だけか。

 いや、初心者だからそんなもんだよね。


「お疲れ様です。どうでした?」

「いや、もう、ねぇ。一瞬でしたわ。倒したと思ったら精密スナイプで一撃」


 あ〜多分あのスナイプしてきた人だよね。

 それはご愁傷さまとしか言いようがないかな。


「で、翔さんは?」

「卑怯な寄生をして生存中」

「うわぁ……」


 汚い……経験者なのにやってることが初心者より汚い。


「で、ひょっとしなくても寄生先はあのスナイパーの人ですよね」

「えぇ、そうですわ。ちなみにあれは社長で間違いなさそうですわ」

「……えっ?」


 あ、あの人社長?えっ?名前がとかじゃなくて家の社長ってことぉ?


「……あっ、ホントっぽい」


 というか、こんなプレー決めてくる人が何人もいてほしくない。

 あの人ならなんか納得できる。


「あと何人ですかね」

「9人です。翔さんが勝つためにはこれが半分になった辺りで、安置外ギリギリで生存ムーブして耐久ですかね」


 まぁ、動いたら抜かれそうな圧を放ってますが。


「へぇ。耐久も考えるんですね」

「そうですね。ただ戦って勝つよりも難しいですね」


 ・

『普通にむずいで〜』

『しっかり回復ペースを計算したり、ダメージを受けるタイミング等々、考えることも計算することもたぁ〜くさん』

『けど、翔もそうだけど、クスリも夜霧もみんなできそうな気配があるの草』

『ま、まぁ頑張れってことで』

『耐久は精神的な勝負でもあるからな。見てるこっちもハラハラするぜ』

 ・


 私たち三人ができるかって聞かれたとき、私はともかく、お二人ともできちゃうんでしょうねぇ。

 突発的にできるものではありませんが、普段からそうやって現実で戦っている翔さんやクスリさんレベルならできるでしょうねぇ〜。


「あっ、動きましたね」

「……早いです、けど」


 そのタイミングでゲームが動き出した。


 翔を見つけて狙おうと顔を出したプレイヤーがそれに気づいた社長のスナイプに抜かれて倒れた。

 だが、それで他プレイヤーが社長に気づき撃ち出した。


「うわぁ……間接的に人を倒してますわ」


 ちょっと上手いのが凄い。

 結果的に自身へのヘイトはない。気がかりなのは社長が恐らく翔さんの存在に気づいたことですかね。

 ちょくちょく戦いながら下を気にするような動きを見せてますから。


「あと6人……いえ、今しがた5人になりましたわね」

「三十秒で四人消えるなんて……」

 

 ゲームスピードが早い。そら社長のスナイプがあるとはいえ早い。

 安置がなくなるまであと5分以上あるのに。


「あっ!翔が安置外に出ましたわ!」

「このゲームスピードを考慮して早めに出ましたね!」

「回復は……今の持ち物なら三分程度は耐えられますわね」


 さ、流石、回復量と安置外ダメージをさっきこっそり教えただけなのに計算が早い。


「あっ、一人アサシンキルされました。あとよにっ、いえ!それをさらにスナイプしました!あと3人!」

「この減り方は異常ですわね……」


 ホントに。大会でもこんな速度で消えませんよ。

 絶対に外さないスナイパーって怖いですね。


「あと一人どこですかね」

「先程まで見えていたのですが、さっきのアサシンキルのときに見失ってしまいました」


 社長も見失っているからか、結構周りを見てる。


 ダァァンッ

  

「あっ!?」

「嘘っ!?」


 そしてその一人は社長の真上から社長をショットガンで撃ち、寸前で気付いた社長は避けきれず瀕死になっていた。


「こ、これは!」

「空を飛んでいましたの!?」


 空を飛ぶアイテムはある、だが、自由度は低くここぞというときにしか使い物にはならないものだ。

 それをあのタイミングで気づかれずに使って奇襲を決めるなんて!どれだけ上手いの!?


 パァァンダァァンッ


 苦し紛れにノンスコープで撃ちますけど、流石に何度も当たることはない。

 社長の弾丸は外れ、そのままトドメのショットガンが炸裂した。


「しゃ、シャチョ〜〜!?」


 ・

『な、ナニぃぃっ!?』

『まさか、あの社長が!?』

『だ、誰だ!あいつ!』

『名前は……桜……』

『ひょっとしなくてもあの人じゃねぇか』

『あ〜例のあの人ね』

『なんであの人たちサラッと紛れ込んで試合荒らしてんだ……』

 ・


「あ、あぁ……一宮さん、でしたか……」

「え、一宮って……あの人たち何でもありですね」


 ありえないですよ。本当に。うん。私って強いはずなんだけどなぁ……この人たち見てると自信なくします。


「で、でも!まだ翔が生きています!」

「そ、そうです!あの位置なら耐久頑張れるかも……」


 ちゅっどぉ〜ん


「「あっ」」


 翔の視点に移った瞬間、画面が爆発して、ゲームセットした。


「ぇ、えぇぇ」

「な、何が……」


 ・

『えぇぇぇ……』

『音的に、グレネード、だよな』

『お、おう。けど、一体どっから』

『翔はグレなんて持ってなかったよな?』

『おう。なかった。全部回復だからなぁ〜』

『じゃ、じゃあ、誰が』

『んっ!?お、おい!キルログを見ろ!』

『え、えっと……グレネードで社長が倒したぁ!?』

『な、なにぃっ!?』

『え?いつ投げたあの人』

 ・


 コメントを見たり、自分で確認して見ると、倒したのは社長。えっ?本当になんで?


「さっきやられた社長のグレネードがなんで……」

「さ、流石にわからなかったので、リプレイで確認してみますわ」


 社長が倒れる少し前に戻し、そこから見てみる。


「一宮さんが社長を撃ち、瀕死にし」

「咄嗟に即死は回避して、撃ち返したけど当たらない」

「ん?」

「あっ、社長、投げてますわ」


 スナイパーを撃ち、外し、撃ち殺される寸前、投げまでのフレームの短いグレネードを狙って翔さんの方に投げてますね。


「ぐぁぁっ」

「あっ、死人がまた一人来ましたわ」

「オノレディケイ……シャチョォォォ!」

「何を言おうとしてるんですか!?」


 ・

『あっ、卑怯な戦法で勝とうとして道連れされた人だ』

『お疲れは言わないよ〜』

『ドンマイマイ』

『いやぁ〜グッジョブ社長』

『どこぞのデュエリストみてぇな断末魔だな』

 ・


「ぐすっ……気づいたら足元にグレが、回復の時間的に逃げられなくて、ひっぐ」

「戦法はともかく、最後は華々しく散りましたわね」

「まぁ、一応お疲れ様です」


 こうして、波乱の試合は終わりを告げました。



 ・・・


「うっし、ラス2!一人はさっき安置外に逃げてった翔だろうし、あと実質一人。どこだ〜」


 少しときは戻り、社長。

 社長含めラスト三人になった頃。


 翔の位置は補足しているので、他一人を探してスコープを覗く。


「どこ……」


 ふぉっ


「っ!?上?!」


 咄嗟に立ち上がり、横にキャラを動かす。

 そのかいあってか、瀕死にはなったが、即死は免れた。

 だが、私の武器はスナとピストル。

 どうあがいてもラッキーノンスコスナを当てる以外勝ち目はない。


「当たれ!」


 引き金を引くが当然明後日の方向に飛んでいった。


「チクショォォッ!」


 だがタダでは死なん!


「翔!お前も道連れだァァァァっ!」


 ポイッダァァンッ


「ぎゃっ」

 

 死んだ……って!おい!こいつ桜じゃねぇか!

 くそぉっ、なんでいんだよぉ……


「あっ、道連れ成功」


 ……


「まぁ、翔に勝たれて煽られるよりはましか」


 さて、仕事すっか。

 休暇とはいえ書類とか整理しないとなって……ん?


 そんなとき一枚の書類が目に止まった。


「そういや、私のグッズの販売って……」


 ……休暇延長してぇぇぇ。



・・・・・・・・・・

後書き


戻ってきたぞ!

最近ずっと忙しくて、気温とかのせいで疲労も蓄積してたりと駄目駄目だった……。

なんとか持ち直して投稿してます。

今後もこういうことがあるかもしれませんが、暖かい目で見ていただけると嬉しいです。



ここからは独り言。


カードゲームのサ終キツイって……

昔バディファさんとかで食らったんですが、今回は7年以上やってたDBHとか辛いって。

遊戯はやってないんですが、DMはやってて、今熱が復活してきたんです。頼むからお前は終わらないでくれよ……。

他のカードゲームはコレクションくらいだから良いけど、ガッツリ遊んでるカードが終わるのは辛いですね。それが思い入れや思い出がたくさんあるとなおさら……


……独り言以上です。

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