第38話 ボス戦。ユッケのターン
「こんにちわ皆さん。紺色の金色。紺金です」
「みんな~おはよ~。ユッケだよ!」
・
『こんにちわ~!』
『おはよ~』
『お~新装備?いや、案件装備かな~』
・
「気づくの速いね~」
「皆さんお察しの通り、今回は案件配信となります。『ブラックソード』、黒剣さんの装備の宣伝です」
・
『いつも使ってる装備のところだね』
『黒剣さんとは、結構な大口ですなぁ』
『装備はホントにちゃんとしてるからなぁ』
『装備買い換えの時期に合わせてしっかり宣伝いれてくるのホンマ商売うまいわ~』
・
「それと、今回は付き添い?で、先輩が来てくれました!」
「どうも、クスリです」
・
『クスリ先輩や!』
『おいおい、ユッケちゃん大丈夫かよ』
『いや、よく見たらすでに脚が震えてるで』
『案件配信なんだからしっかりな~』
『めっちゃ頼りになる先輩がきたね』
『ユッケちゃんが戦力になんなくても、クスリちゃんがいればモーマンタイ』
・
「というわけ、本日はよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「うぶっはぁっ」
「「…………」」
・・・
そんなオープニングで心配は凄かったがいざ戦闘になるとなんの支障もなく魔物をなぎ倒していく。
結局のところ、警戒をして、話し相手をしているだけで何も起こることなく、三十階層まで到着した。
普段ならここには寄らないが、今回はあくまでも案件。
そのため、丁度良い力で丁度良い見栄え。試す相手としては三十階のボスが最適というわけである。
「ここまで問題なし」
「やっぱり使い慣れてるっていうのもあって、スムーズだよね」
そう、問題はない。
おそらく、装備には何も仕掛けられていない。
事前に点検と言って一通り見たが問題はなかった。魔法的にも物理的にも問題はなかった。
となると、自分たちの仕業という証拠を見せない事故で仕掛けてくる可能性が高い。
「となると……」
やはり確実に通る、ここのボス部屋で仕掛けてくる。
そう予想をたてて、二人に気とられないように気を引き締めた。
「さってと」
・
『ボス戦やな』
『盛り上がってまいりましたよ~』
『ここまで大して性能等を見せる機会がなかったが、ここなら多少は見れるだろう!』
『強すぎて、案件?知らんな?になってるもんな』
・
「そうだね……うん、今回は性能を見せるためにも一人ずつやろうかな」
「えぇ。そうですね。私たち二人でやればまた性能を見せられずに終わりそうですから」
ちなみにだが、二人が今回身に付けているのは防具だ。
動きやすさ、通気性、耐久力を兼ね備え、そこにファッションセンスを取り入れた装備品。
バトルドレスのようなものだ。
それの耐久力や動きやすさを見せるためにも、一人で大立ち回りをする必要がある。
「……」
狙うなら、この辺だと辺りをつけたのはやはり、一人になるということ。
それとは別に、三十階のボスというのもポイントである。
「じゃあ、先私行くよ」
「わかりました。では、私は皆さんにこれから挑むボスについて軽く説明しましょう」
三十階のボス、それは『スルーウルフ』という魔物。
まず、前提としてこの魔物は透過という行動を取る。
そのためかなりの手練れでも即撃破とはならず、無傷での勝利はなかなか難しい。
そういう評価の敵だ。
自身の体を透過させて、冒険者の周りを自由自在に走り回り、隙を見つけたら攻撃しに来る。
攻撃をしようとしてもすり抜けてしまう。
倒しかたは、透過していないタイミングで弱点である鼻に攻撃を当ててスタンを取るやり方や魔法で透過をする前に叩いて倒すやり方などがある。
「今回はやっぱり、ユウナ先輩の近接意識かな」
・
『流石に本人の前では本人のトレースは使わないか』
『まぁ、相手と今回の状況なら仕方ないよな』
『集中してけよ!』
『カッコいいとこ見せてこう!』
・
「……よし、行くぞ!」
その一歩を踏み出し、ボスのいる場所に侵入した。
「ブレードモード」
ユッケちゃんの使う武器は可変式のガンソード。
剣、大剣、銃の三つのモードを切り替えることのできる特注品だ。
今回は通常剣で行くようだ。
……最近、これって社長の作ったものかと疑っている。まぁ、それは紺金ちゃんの盾も同様だけど……その辺は置いておこう。
「『マジックシールド』」
それに加えて、魔法による防御強化。
ユウナのような立ち回りをする上で、被弾や自傷によるダメージの軽減が大切になってくる。
動き自体は再現できたとしても体の構造はどうしようもないから、そこは別のもので補っているのだろう。
あっ、ユッケちゃんがおそらく私たち三人の動きをベースにしたスタイルを築いているのは知っている。
というか律儀に、真似しました!なんて加入当初に言われたからね?
それに悪乗りして私たち三人が少しずつアドバイスをしたこともある。
おっと、考えすぎたわね。始まるわ。
「行くよ!『ファイヤショット』!」
ボスに対して先制の魔法を放ち、そこから一気に詰めに行く。
『オォーン!』
「外した、引こう」
今回は上手く行かず、魔法が当たる前に透過し魔法が空を切ったので、詰めるのをやめて後ろに引く。
透過した際、ある程度の距離を保つことが大事だ。
こちらから攻撃を加えられない状況なら無理に攻めてカウンターを決められるのが最悪である。そのため、決して攻めずに、攻めてくるのを待つ。
「……」
『ウルッァ!』
「しっ!」
飛びかかってきたタイミングで剣の側面で胴体をぶっ叩き野球のバットのように振り抜く。
『キャンっ』
「やぁっ!」
吹き飛んだスルーウルフに追撃をかけるために一気に接近、追撃の一振、剣による横なぎを加える。
「手応えはあり」
結構良い攻撃が入った。
けど仕留めきれなかったから離れて、また透過したわね。
ボスであるためそんな一撃程度で死ぬほど柔じゃない。
多分これを十数回繰り返すことになるだろう。
「……次はもっと威力を上げる。ユウナ先輩なら今の何倍もダメージを出せた」
「なんか、かなり偶像が強いみたいね」
「いえ、実際、今のユウナさんなら一撃で仕留めたでしょう?」
まぁ、そうだけど、それはユウナだからであって、ユッケちゃんが出せる威力じゃない、はずだ。
・
『ユッケちゃんはいつも翔ちゃんたち三人のと自分を比べて威力とか高めようとするからね』
『比類なき向上心の持ち主だからね』
『というか、翔ちゃんたち三人の技術を全て半分の出力でも、ものにして使えるのがおかしいんだけどね』
『一部組の魔法と、力と、立ち回り。それらを掛け合わせたのがユッケ』
『というか、それ全部を完全に再現したら普通にバケモンやろ』
・
「……イメージしろ」
『グルル……』
「あの力を、あの人を」
「居合い?」
「みたいですね」
間合いを図って周囲を透過しながら走るスルーウルフの中心で居合いの構えを取るユッケちゃん。
多分だけど、ユウナの一撃の威力を居合い抜刀によるカウンターで近しい威力にしようとしているんだと思う。
けど、ユッケちゃんの剣は刀ではないし、そもそも鞘もない。
それで、どう威力を底上げするかだ。
「『エアロバレル』」
……なるほどね。
魔法による剣の射出。
それによって擬似的に居合い抜刀を再現し、身体能力と魔法で強引に威力を底上げするわけか。
確かにそれならユウナの一撃と同じだけの力を出せるだろう。
『ぐるぁっ!』
そんな中、スルーウルフは飛びかかり、ユッケちゃんの肩に噛みついた。
・
『ちょっ!?』
『ユッケちゃん?!』
『噛まれた!?』
『だ、誰か~助けてあげて~』
・
いや、あれで良いんだろう。
「逃がさないよ?」
周囲の空気が凍るような殺気。
それがわたくしのところまで感じられた。
「はぁっ!」
その一声と共に放たれた一閃は、噛みつきがら空きとなった胴体に放たれ、切り裂いた。
「お見事」
「ちょっとヒヤッとしましたが、問題ないですね」
あの一撃、魔法による射出の勢いが強すぎて細かい調整ができないのではないだろうか?
だから噛まれることによって密着し、避けようのない一撃、もとい調整の必要がない一撃として振り抜いたというわけだろう。
「ふぅ……」
ため息と共に切られたスルーウルフは地面に落ち、姿をドロップに変えた。
・
『お、おぉぉっ!』
『お見事!』
『ホントに一撃で』
『ユウナならこれくらいって言うんやろな』
『足りない分を他のもので代用してそこまで威力を引き上げて、一撃と……』
『け、怪我してない?大丈夫?』
『思いっきり噛まれてましたけど!』
『これは流石ゴリゥーナを尊敬するユッケちゃんだな』
『ユウナならこれをなんてことのないようにこなすってま?』
・
「ふぅ……はぁ。どうでした~?噛まれたけど、ほとんどダメージないよ!」
あっ、そうでしたね。
「少し肌を見せますが……多少の凹み位はあっても、牙は通してませんね」
「あ、あの……あ、あっぁ、あっ」
「あぁ……すみません」
「いえ、わたくしの方こそ申し訳ありませんわ」
目をクルクル回して、あ、しか発せずその場で立ち尽くしたユッケちゃんに、わたくしは紺金ちゃんとなんの謝罪かわからない謝罪を交わし合った。
次は紺金ちゃんの番だ。
・・・・・・・・・・
後書き
憧れの人が前に立っていて、それに加えて今回みたいな行動を取られたときって、どんな言葉を発するのかイメージできなかった。ので、言語にならないにした。それならイメージついたし、書くがわも楽で良いなって(小声)
……あれ?3日経ってる。
というのを先ほど気づき急いで出した次第です。
もう出来てるしアニメみるか~とか言って夜更かししたせいで爆睡かまして、日付感覚バグったのもあるけど。
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