三章:社長、何が相手でも無双する

第36話 見守り回。私、いるだけ~


 家で休んで、その後再び特訓に付き合ったりしていたら気づくと夜は遅くなっており、翔たちを九重に送らせて、私たち三人は私の家でお泊まり会となった。


 お泊まり会とはいえ、こうは同じ部屋にいさせるわけにはいかないので、一人、別部屋で干した。


 話したいことがあれば、明日話せば良いからね。


 とはいえ、久しぶりの親友、それも同性との話は盛り上がり私たちは夜遅くまで話した。


 そして翌日。


「確か、今日よね。案件配信」

「案件?」

「あぁ、企業が人気の人に宣伝、広告を配信してもらう企画」


 実際はもうちょいあるが、だいたいこんなもんだろう。


「へぇ?それで、それを見るってことは、何かあるんでしょう?」

「そうね」

「あ、そうなんだ。普通に見るんだと俺は思ってたんだが」


 確かに、理由なく見るときもあるけど、二人がいる前で見るほどではないわ。


「ちょっと相手がキナ臭くてね」

「へぇ」

「ちょ、二人とも目が怖い!」


 そう?確かに桜は企んでるって言うか、なんというかそんな目になってるけど。


 えっ?私、憎々しい、忌々しいって目で見てますが?


「それが怖いってんだよ」

「「あ?」」

「すんません」


 女性に怖いだなんだ言わないの。

 嫌われちゃうよ?


「こうちゃんは置いといて、詳しく聞かせてよ」

「えぇ、良いわよ」


 かくかくしかじか○△□っと。


「なるほどね」

「確かに怪しさMAXだぜ」

「だから一応見てるの。九重がすぐに行けるよう構えてはいるけど、念のためね。どうせ今は暇でもあるし」

「暇なら、コメントで遊びに行こうぜ」

「良いわね」

「アカウント持ってるの?」

「当たり前だぜ。桜は?」

「持ってます」

「私は公式のアカはあるんだけどなぁ」

「うーん、それだと面白くないな。……せや、公式のアカで俺たち三人でミラー配信しよう」

「許可がない」

「霧ちゃんが社長だからモーマンタイ」

「相手方だっつうの」

「そこは私たちのパワーで?」

「相手の配信を映さず、雑談しながらなら良いだろ」

「なんでそういうのを知ってるのかしら」


 私たちは見てるだけ、あくまでも配信で映すのは私たちの雑談だけ。

 それなら、まぁ……最悪、私の仕事が増えるだけだし……いや、それが良くない。暇な期間に仕事を増やしてどうする。


「というか、私たち三人も映して大丈夫そ?みんな立場とかあるんでしょ?」

「私は休みなんでオッケー」

「一応大丈夫だ。迎えが来るかもしれないくらいだぜ」


 こうは良くなさそうだけど、桜は大丈夫そうね。プライベートだから仕事は関係ない。まぁ、行きすぎたら言われるかもしれないけど。


「私は今さらだし」


 仕方ない。一応、智子の方に連絡して……セッティングをしますか。


「窓から住所とかばれないようにしとくか」

「私たちが揃っているってわかれば押し掛けがくるのは目に見えてるよね」

「oh……スターは辛いぜ」

「「やかましい」」

「親友は辛辣だぜ」


 まったく、実際そうなったら面倒なのは間違いない。

 それは本当に面倒だから勘弁してもらいたい。


「あとは、カメラの位置……三人が映れる位置だから……この辺かな」


 今座っている椅子の正面。

 立ち歩いたりなんなりするときはそのときは逐一位置を調整するってことで。


「雑談中はメイドには入らないように伝えるから、欲しいものは予め。後から必要になったら自分で取りに行く感じで」


 まぁ、部屋を出たら用意してるんだろうなぁ。

 エスパーか?ってくらい優秀なメイドさんだからね。


「オッケー」

「じゃ、俺はマイクやスピーカーを用意してくるぜっ」

「いる?それ」

「おいおい、俺はダンサーだぜ?歌って踊りたいときくらいあるだろ?」


 確かに、ある、のか?

 まぁ、リクエストみたいのがきたらやりますかね。

 用意しておくか。


「なら私はお茶とお茶菓子を用意しておこうかしら」

「そうだね。よし、持ってこよ……あるね」

「えぇ」


 気づいたら置かれてました。

 食器から茶葉や替えまで。


「……あとはカードゲームでもやる?」

「そうね……トランプとかウノとかDMとか遊戯とか?」

「お?やるか?」

「おん?万年最下位のこうが私に勝てると?」

「おんおん?私にカードゲームで勝てると?」

「「それは無理だ(ね)」」


 カードゲームというか、表情とかそういうのを読んできたり思考誘導してくる桜に勝てるわけがない。

 勝てて運良くトップの引きとかで勝ちに行くくらいで……ババ抜きや7並べ、ウノに関しては本当に桜の勝率は100%である。


「まぁ、クソザコ運のこうに勝てるからビリにはならなくて良いけど」

「俺はもうクソザコ運とは言わせねぇぞ!」


 そういって前回のカードゲームでは全敗に喫した。


「今に見てろ!俺のロイヤル・ストレート・フラッシュが火を吹くぜ!」

「「??」」

「……言ってて恥ずかしくなった」


 うん、わかる。聞いてるこっちも恥ずかしいもん。


 ピロン


「聡子から返信きた……『構いません。後処理を社長がやってくだされば』か。……後がしんどそうだが、まぁ、始めますか」


 準備はできてるし、忘れてても別にそのときそのときでゆっくりやってけば良いから。


「じゃあ、あっちが始めたらこっちも始めますか」




 ・・・


「お、お久しぶりでぃったぁ噛んでゃぁ」

「ちょっと、緊張しすぎだって。すみません、クスリさん」


 わたくしたちは今回の案件のために、ダンジョンの前まで三人で来ていた。

 カメラはまだ回してないが待機画面にはしてある。


「いえ、大丈夫ですよ。ゆっくり、落ち着いてからでも」

「は、はい……改めまして、お久しぶりです、クスリさん。今日はよろしくお願いします」


 最初に噛んだりしたこの子がユッケちゃん。

 前髪ぱっつんのショートで背丈は少し小さめ(普段の社長よりは大きい)で活発で元気な子、というイメージの子だ。

 コラボというか、会うこと自体久しぶりで、ユッケちゃんは私たち(初期メンバー)のファンらしい。

 なので、わたくしだけでなく翔やユウナと会うときはこうなるとのこと。

 それ以外なら比較的まともなのだが。


「紺金ちゃんも、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そして、こちらの落ち着いている子が紺金ちゃん。

 こちらは平均的な背丈で、セミロングで丸眼鏡の知性的なイメージが似合う子だ。

 実際、面倒見がよく世間体もよく、何というか、委員長?という感じだ。


「とはいえ、案件を受けているのは貴女方二人で、わたくしは付き添いみたいなものです。ですから気にしないでいただけると幸いですわ」


 宣伝などの広告はわたくしはしない。

 あくまでも援護や道中の安全確保、そしてカメラ担当がわたくしの仕事である。

 まぁ、言ってしまえば実質カメラマンのようなものですわね。


「そ、そうは言っても……」

「コンちゃん?クスリさんがこう言ってるだから、そうしよ?」

「そ、そうっすね。カメラ、よろしくお願いします」


 そこで支援などの援護に対してではなくカメラという辺りは配信者らしいというか、なんというか。


「えぇ。バッチリ撮りますわ」

「じゃあ、始めよっか」

「では、始めますよ」


 ……さぁ、ここからが本番だ。

 二人には気づかれないように、何時もと同じように。


 もちろん嫌な予感や悪い話は二人にはしていない。

 話して、下手な警戒はかえって危ないし、確信があるわけでもない。

 だから、そんなことで二人を不安にさせるわけにはいかない。


「3、2、1……」


 配信が始まった。



 ・・・


『プロモーションを含みます』


 とそんな表示が出てきてクスリの方の配信が始まった。


「よし、私たちも始めましょうか」

「いつでも良いよ」

「俺も、いつだって良いぜ!寝てる時でもトイレしてるときでもなっ!」


 いつでもカメラ回ってるようなことしてるもんね。

 いや、そういう人ってわかってるから、こうには聞いてないんだけどね。


「じゃ、カメラ回すね」


 ……うん、回ってるね。

 最初は桜がカメラを回して、画面には私一人である。


「さて、突発な配信でまだ誰もきてないと思うけど、自己紹介しますね」


 ・

『いるぞ!』

『一番乗りー……じゃねぇのかよ』

『うおっ!あの時の美人さん……』

『あれ?やっぱりこの人って社長?』

『公式チャンネルで生があると聞いて、仕事止めて来ました』

 ・


「いや、速いわね……もう1万。あり得ないわよ」


 まだ1分も立ってないわよ?しかも予約とかも待機とかも何もないところからよ?


「まぁ良いわ。人がいるならそれはそれで良いわね。私はSuma代表取締役社長の宵闇 霧江です。始めてのかたがいれば以後お見知りおきを」


 ・

『ホントに社長だぁっっっ!?』

『マジでぇぇぇ!?!』

『あんなロリがオトナノオネェさんに!?』

『あり得ねぇ』

『なんか口調から雰囲気まで全部違うやが?別人って言ってくれ』

『全年齢対象社長、か』

『どんだけ属性盛るんだよこの人……』

 ・


「では、今日は今配信中である紺金ちゃんとユッケちゃんの動画を見ながら、雑談でもしようかなと……いえ、雑談配信?ミラー配信?をしようと持ちかけられて、今に至ります」


 ・

『つまりはそこに誰かいるということか』

『誰だ?』

『そんな風に社長を誘うってことは、翔ちゃんか?』

『いや、ユウナの可能性もあるぞ?』

『というか、これどこから撮ってるんだろう』

『事務所じゃないな』

『どうせ翔ちゃんだぜ』

 ・


「では、今回一緒に雑談する二人をお呼びしますね。ってことだからカメラ入ってきて良いよ二人とも」


 二人を呼び、私を中央として、両脇に空いた椅子を引き腰をおろし、その顔をカメラに入れた。


「自己紹介、いるかな?」

「いるいる」

「名乗らせるのだ!」


 そうだね。どうぞどうぞ。


「ありがと。ご存じの方も多いでしょうがはじめまして、女優の一宮 桜です」

「俺を知らないやつなんていないよな!天下無敵の最強ダンサー!その名も、こう・し~ろ……うっ!イェーイ!」


 ・

『…………?』

『(・_ゞ)』

『…………』

『???』

『!!( ; ロ)゚ ゚』

『( ・д・)』

『?!????!?!???』

 ・


 あ~またこのパターンね。


「まぁ、前にも話した私の親友の二人よ。女優の桜とダンサーのこう。今日はこの三人で雑談をしてこうかなって思っています」

「ねぇ、これ視聴者息してる?」

「俺の輝かしさに眼を奪われ、息をするのも忘れてしまったか!」

「どちらかというと桜だから安心しなさい」

「いや、俺も結構凄いだろ!」

「まぁね」


 どれくらい凄いのか最近知ったばっかりで、具体的な話を聞いたのも昨日だったんだけどね。

 だから、実際二人は大物だ。……私は知らん。


 ・

『…………』

『(ーдー)』

『あ、い、う、え、お、あ、い……』

『これが、現実、か?……すまん、俺ももう召される』

『ま、まて、俺をおいて、いかないで……ぎゃぁぁっ!』

 ・


 あ~


「復活するまで時間かかりそうだし、そのまま行きましょうか」

「そうね。いつも通り話してたらそのうち戻ってるよね」

「いや、待ってやれよ……」


 そんな風に始まった三人の雑談配信。

 これが後に言うFirst 社長ショックであった



・・・・・・・・・・

後書き


折角なので、二つ同時にスタート。

同窓会、ではありませんが天才たちで配信はしたい。ってことでこうなった。


明日で4月?もう?速い……卒業ソングでも歌おうかね?それとも飲み会かなんかの方?いや、どっちも歌わねぇよ。だって僕は星の方を歌うから。それか迷い星の歌。


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