第34話 三人目の天才。私、手は出さないよ
空から降ってきたこうしろうを目に入れて、二人して安定の?呆れ声を上げる。
「騒がしいわねぇ」
「まぁ、あれがこうちゃんだし」
「んなこと言って、いきなりきてあんな無駄な演出まで作って、あんな恥ずかしいこと言って」
「……あの、そろそろ黙って欲しいかなぁ」
「「えっ?止めて欲しいの?」」
「……美味しい?からそのままで」
「「わかった~」」
と、これでわかったかな?
こうしろうは目立ちたがり屋のかまってちゃんだ。
ほんでもって、普段から見てて美味しいか美味しくないかで態度や言動を変える感じの人間である。
人生常にステージの上をモットーに生きてる人間だ。
やかましいのも、騒がしいのも当たり前だと言える。
「まぁ、いらっしゃい、こう」
「お邪魔するぜ、霧。それにしても久しぶりだな?なんか、でかくなってんな」
まぁ、そうね。
一応、パッと見で私だって理解してくれたのはありがたいけど、感想がそれって……。
「……変に弄られるよりかはいいか」
あ、一応、私の姿に関しては、親友の彼らからすると、小さい私の方が変で、大きいのが普通である。だが、卒業してからの数年はずっと小さい方で会っていたので一瞬、ん?ってなることもあると思っていた。
なお、桜も同じように見ただけでわかってくれた。
「んで?呼んだ手前言いにくいけど、大丈夫だったの?」
「当然。大丈夫だぜっ!ちょっくら行ってくるって言ってから来たからな」
「駄目では?」
「いや、しっかり前後の予定が一週間以上空いてるからな?」
そりゃそうだ。
いくら大スターと言えども、無茶苦茶して人に迷惑をかけることは出来ない。
というか、スターとかそういう人間はそういうことを守るからこそスター足り得るわけであるからそこは当然と言える。
「さて、久しぶりに集まったけど、何してたの?そっちの可愛い子達は?」
「セクハラやめなさい?」
「してないよっ!」
「冗談ですよ」
まぁ、うちの子に万が一そんな目で見ようもんなら少しの間スターにしてあげるよ。文字通りの星に、ね。
「目が笑ってないぜ?冗談だよな?」
「えぇ。今は、ね」
「ヤベーイ」
「ほらほら二人とも、ここで言い合ってると彼女たちの邪魔になるから、家に戻るよ」
「そうね」
「オケ~」
桜に言われて、私とこうは話し合いを中断し家に戻る。
三人と一人はそんな姿を横目にただ黙っているのだった。
・・・
「……今来たけど、何あれ?」
「社長と一宮さんとこうしろうさん」
「少し引いてしまうわね」
三人は家に入っていた三人を静かに見届けたあと、ポツリと話し始める。
「世界レベルのスターが揃うと、空気って言うか、雰囲気?が凄すぎて気後れしちゃうね」
「そもそも社長自身が凄い人なのに、そこにそれと同じくらい凄い人が集まるなんて本来あり得ないですから」
「……こうしろうさんも強いのかねぇ」
「強いんじゃないか?」
…………あっ
「九重ちゃん、いるの忘れてた」
「あぁ、そうです。こうしろうさんがきてすっかり忘れてましたが、どうやってここに来たんですか?」
「急に空から降ってきたよな」
「それは我がワープさせたからだ!」
「「ワープ?」」
……あれ?その説明、私がする感じ?いや、私そんなこと聞かれてもわからないよ?
だから私を見ないで?
「ワープはワープだ。事務所から翔ちゃん担いでここまで、な。面倒事を押し付けられた形でな」
「私って面倒事?」
「そうでしょう?」
「そうだよな」
みんな揃って私をいじめる~
「それはともかく、ワープについてもっと教えてくれない?」
魔法使いとしてはその魔法、気になるんだよねぇ。
社長も使えないみたいだし、それ使えると戦略の幅が広がるんだよねぇ。
「それは構わないぞ」
「やた」
「ちょっと待ってください。その前に、九重さんが緊急時に救援に入る話を聞かせてもらっても?」
「えっ?なにそれ」
「あぁ、さっき言ってたやつか。それは私も聞いときたいかな」
その内容によっては今後楽になったり、安全になったりするからね。
「良いぞ。我の仕事の一つとして、ダンジョン配信中の配信者が緊急事態に陥り、単独ではどうしようもなくなったと我が判断したときに、ワープでその配信者のもとへ助けに入るのだ」
普通にありがたい……。
配信回してる間は何があってもこうやって助けてくれるわけでしょ?
「あ、あと、説明するときにヨイヤミさんから一言。『あくまでも緊急だからな?』って」
「当たり前です。最終手段ですから、それに頼るようなことはしません」
「当たり前だろ?私たちは冒険者であって、腰抜けじゃない」
「そそ。私たちはあくまで私たちの力で攻略するのであって、他力本願で戦うことはないよ」
それにそれを手段として考えてしまえば、きっといつか取り返しのつかないことになる。
安全の確約はない。それが、ダンジョンだ。
確約されていると勘違いすれば、無理をするし、下手をすればそのままやられてしまうかもしれない。
「知っておいて損はないけど、使わないに越したことはないね」
「そうですね」
私たちはそれぞれ持論を述べて、社長の言葉をしっかり受けとる。
「それと、九重さん、貴女が翔よりも腕っぷしが強いと社長にお聞きしたのですが」
「えっ?マジ?」
「それはちょっと聞き捨てならないかな?」
それはちょっと、ね?
これでも私、Suma所属冒険者最強なんだよね。
他所と比べてもかなり強い自信がある。
それなのに、こうもあっさりと上だって言われるのは少し嫌なんだよね。
「なら、私と戦う?」
「おっ、ならアタシも混ぜろ」
「翔ちゃんとユウナ、二人ともか?……問題ない。二人まとめてかかってこい」
ニヤリと怪しげに笑う九重ちゃん。
「二人同時にって」
「流石に舐めすぎだろ?」
私たちはどちらもランク5の冒険者だ。連携自体もそこまで悪くない。
それをこうも余裕ぶられるとちょっと、ね。
「舐めすぎではない。我は、強いからな」
こうして、私とユウナ対九重の対戦が始まった。
「あっ、わたくしはパスで」
私は、ユウナと二人並んで九重ちゃんに向き合っていた。
「どうする?」
「とりあえず、手札を見るよ」
「オーケー」
軽く打ち合わせ、私たちくらい長い付き合いならこれくらいの短いコンタクトで十分、をしお互いそれに合わせた動きや魔法を構える。
「それでは、審判をやらせて頂きますわ。始めっ!」
「先手必勝!」
「『サンダーショット』!」
初手でユウナが接近、それを追い抜く速度の魔法をその後から放つ。
「ほれ」
炎のカーテンが九重ちゃんの正面に立ちはだかり、私の雷を防ぐ。
しかし、そのカーテンを正面から突破してユウナがそのまま切り込む。
「もらった」
「遅い」
「ぐぅっ!?」
「ユウナ!?」
炎のカーテンを突っ切り、肉薄したはずのユウナが突撃とほぼ同時に飛び出てきた。
「余所見は駄目だぞ?」
「いつのま
「コン」
「っ『アクアスラッシュ』」
背後を取られ振り向く時には炎が着弾寸前だった。
それを見てから、ではなく振り向く瞬間に当て勘で魔法を放ち、それが功を奏し防ぐことに成功した。
「『スパイラルハリケーン』」
強力な風魔法を放ちそのまま距離を取る。
「ふむ」
それを警戒してか九重ちゃんはそのまま下がってくれた。
「はぁはぁ……」
普通に舐めてた。
二人がかりでも普通に勝てない。いや、社長が私たちより強いって言うのはわかるけど、ランク5の上の方二人より強い人なんてどこから連れてきてるわけ?
「すまん、翔」
「いや、あれはしょうがない」
その隙にユウナも私の隣まで戻ってきて、反省を告げながら、二人で次の手を考える。
「正直、社長ほどではないけど、ヤバい」
「ホントにな。あ、近接もいける口だ」
「突っ込んでからどうされたの?」
「軽く受け流されて蹴り返された」
やっぱり近接と遠距離のハイブリットタイプか。
「久しぶりの運動だ……ヨイヤミさんにボコボコにされてからずっと寝て動画見て仕事しての続きだったからな、楽しませてもらうぞ」
あっ、当然のように社長は九重ちゃんをボコボコにしたのね。
「ふむ……せっかくだし我も実験するか」
「?」
何かする気?
「本来の力はこのままじゃ使えないのもあるのだが、それじゃもしもの時困るからってヨイヤミさんが作ってくれたのだ」
「あれは……」
懐から取り出したのは……なんだろう?
「あれベルトじゃね?」
「あぁ~……えっ?」
ベルトって、あれね?仮面ラ・ダーが変身するときに使うようなやつね。
いや、なんでそんなものが出てきたのかな?
「これを回して、押す」
『SET:リフレクト』
「おぉぉ」
「「えぇぇぇぇ」」
なんかをそのベルトに差し込んで押し込むと一瞬チカッっと光り、九重ちゃんの手になんか盾が握られていた。
「なるほど、我の反射の再現か」
「えぇっと……」
「ジャッジ!」
「ノープログレム!」
「シット!」
いや、一応武器だからジャッジキルは無理ってわかってたけどさ。
というか、あの盾、社長のことだからただの盾じゃないんだろうなぁ。
「『スパーク』!」
「ほれ」
「っ!?」
牽制というか、お試し程度に軽い電撃を放つ。
それに反応した九重ちゃんが盾でそれを防ぐ。
すると、そのスパークは私に向かって跳ね返り、私の頬を焼いた。
「っ、反射の盾……」
「相変わらず規格外だな、外付けで我の力を再現するとは」
さ~て、本格的にヤバいかも……
傾き始めた戦況に冷や汗と苦笑いが止まらなかった。
・・・・・・・・・・・
後書き
爆睡してました。ので、今回はここまでにしました。
なお、九重ちゃんはもともと九尾のネタをもらったときから某Ⅸを思い浮かべてました。
ちょっと全部見れてないんでそのうちそれも見てこないとな……。
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