第24話 謎空間探索。私、探検
「む~湧き止まらないなぁ」
「呑気に言ってる場合……なのか」
え~今の状況、目の前から大量の羽虫の魔物が押し寄せてきました。
それを私は結界で防ぎ、無手の拳で粉砕したのだが、収まらずにここ数分間ず~っと結界一面が緑色の血の雨となっていた。
ハッキリ言って気持ち悪い。
「はぁ。どこから湧いてるのかわからないけど、このままじゃ嫌だなぁ」
別にこれが一日中続いたとしても私としては問題ないのだが、そんなに続くのは精神的にも絵面的にも嫌だ。
だから、結界ごと移動してみているのだが、スポナー的なのが見つからない。
で、原因を探しながら探索しているのが今の状況ってわけだ。
「調査隊も流石にここはわからんだろうし」
ホントにめんどくせぇ。
「うーん『スモーク』」
煙を結界外に焚き、視界を塞いだ。
「これで倒れてくんねぇかなぁ」
一応魔物も生物だし、煙焚けばそれなりに減ってくれそうだが。
蚊取り線香的なのイメージしたので、しっかり燃えたときに発生した煙だ。
「あの~それって私たちまで危なくありません?」
「それはない。魔法で二酸化炭素を酸素に変える魔法はあるから」
植物の呼吸を参考にして作った。その辺はイメージなので詳しくは知らん。
だが、効果は保証する。
密閉空間で焚き火して、一日中過ごせたし、焚き火も燃え続けたからな。
「それ、実は画期的な魔法では……」
「だから、これで虫が死んでくれりゃぁなぁ」
そろそろ良いかな。視界が無い状態で確認なんぞできないので、煙を晴らす。
「お~~一掃したわ」
「あ、あれ、見てください」
その先に視線を向けると、先程まで襲いかかってきていた虫の親玉みたいのが倒れていた。
「どっから湧いて出たんだか」
「倒しかたはともかく、これで進めますね」
ここに潜ってから、さっきの虫のせいで進めなかったからな。
ようやくまともな探索ができるってわけだ。
「記録用に映像とか撮りますね」
「筆記だけじゃ駄目なのか?」
「はい。ここは未知の空間です。この映像一つで、研究も進むかもしれませんし、何より未踏の地の映像は貴重なのです」
そんなもんか。
まぁ、私には関係ないかな。
「電源はその辺の石を使えば永久なので、ここからは全て記録します」
「それが仕事だもんな。……だったらさっきのも撮ってたのか?」
「……いいえ」
……いや、まぁ気持ちはわかる。
急な展開に、あんなキモ案件、目を反らしたくなるよな。
「さ、先に進むか」
もうこれ以上、あれは思い出さないようにしようか。
風景が草原なだけに、リアルでトラウマになるようなもんだからな。
あれを動画にするなら一面モザイクだぜ。
私は慣れてるけどよ、あんなの常人ならトラウマに残るレベルだから。調査隊はそういう仕事だからある程度耐性がある感じだろう。
「悪趣味だなぁ」
ここの探索、大丈夫かねぇ。
それから進み続けて、体感三時間ほど。
出口には確実に近づいていた。
景色は一切変わらず、問題も特に無く進み続けては来たが、そろそろ疲労が見え始めてきた。
いつものダンジョンなら気にしないが、今回は足場が草原で若干沈む。
だからかいつもより少し多めに体力を持ってかれていたので、疲労が出てきたわけだ。
「ただなぁ……止まるのはあんまりよろしくないんだよなぁ」
このイレギュラー、それなりに嫌~なことしてくるからな。
休み始めた途端に襲ってくるとかしてきそうだし、そもそもどこからか遠隔で魔法を放ってくる以上は何とも言えないのが現状だ。
「疲れてはきましたが、まだ問題はありません。息があがってきたら流石に休ませていただきたいですが」
今はまだ大丈夫だな。
だが、できれば万全の状態でいて欲しい。
だから、なるべく早めにゴールに着きたいもんだ。
「ま、まだまだ距離はあるんだがな」
探知で掴んでいる感じでは、東京から新潟までの直線距離くらい。
「歩きにはちときついわな」
ショトカしてーけど……駄目だな。ってなると、だ~いぶ時間かかりそうだなぁ。
「うーむ。しゃあない。使うか」
「え?何を使うんですか?」
「魔法だ。知ってるかはわからないが、翔が使っていたあの高速移動の魔法だ」
「あっ、知ってます。落武者との戦いで使っていたあれですね」
そう。あの魔法。
高速移動の魔法。まぁ、あれとは少し違うが、ほぼほぼ同じ魔法。
「自分の周囲の空間の速度をあげる魔法。その応用魔法『アクセラレーション』」
自分の周囲の空間の速度を上げる。それだけでは特に何もない。というか、実践では自殺技に近いので意味ないが、応用したアクセラレーションは別で、高速移動を可能にする魔法に変わる。
「翔のやつを基準にして話すと、この魔法は予めある程度の動きを定めて、それをなぞるように動くんだ」
「それのどこが、周囲の空間を加速させる魔法なんですか?」
「この魔法はな、なぞるように動くとは言ったが、正確には、加速された空間を道にする魔法なんだ」
そしてその道のなかでは、1の速度が100の速度になる。50㎞の速度で投げた石が5000㎞の速度になって飛んでくる。つまりそういうことだ。
この魔法はその道を作り出し、維持する魔法。
「へぇ~それを今から使うんですね?」
「あぁ」
この魔法の弱点としては、自分が速くなるわけではないので細かい調整ができないこと、そして維持するのに膨大な魔力を使うこと。
翔はこのコスパの悪い弱点を、細かく動く範囲を設定すること、また維持する時間、自分が動く時間まで設定することで余分な魔力を使わず、軽くすることで使用可能にしている。
ついでに、その魔法をオリジナルの魔法に組み込み、予め仕込んであるためそこまで発動までに時間をかけないという工夫もしていた。
「私の場合はその辺を気にせず使えるからな」
ここから、探知でわかるゴールまで一直線に道を作り、それを維持し、あとはそこを駆け抜けるだけ。
「ってわけだから、結界張るぞ」
翔も使ってた通り、結界は必須だ。
風圧や重力等の力が凄すぎて、素で使えば首を折って死ぬぞ?
「絶対にそこから出るなよ」
結界を調査隊に張り、かつその上から岩で包む。
これは視界を制限するためである。
普通に酔うぞ?私は動体視力が凄いから問題ない!
「はい!」
よし、あとは、私がこれを担いで、動き始めるだけだ。
「『アクセラレーション』スタート」
ギュォッ
翔のものとは比べ物にならない速度で社長たちの姿は消え、光となった。
「フィニッシュ」
高速移動で、私たちは探知に映っていたゴールの前に到着した。
周囲の風景は草原から、火山のような場所に変わっていて、目の前にはここに入ったときの入り口のようなものがある。
「よ、宵闇さん」
「あっ、忘れてた」
結界と岩のバリアを解除して、調査隊の皆さんを出した。
「おぇ」
「気持ち悪い……」
「乗り物酔いみたいな感覚です……」
四人全員、その場で倒れた。
酔ったらしい。いや、すまん。
「あんだけ高速で動くと、車酔いみたいのに加えて、時差ボケみたいな感覚もあるから脳が処理するまで気持ち悪くなるんだよな」
最初にやったときは、気持ち悪すぎて思わずもどしてしまったよ。
「ま、まぁ、休んでて良いぞ」
「はい、すみません」
私としてはここのクリアリングをやっておきたいのでこの間にやってしまおう。
球状に結界を張り、私は一人で周囲の探索を始めた。
「ここは、火山の麓のちょっとした洞窟みたいな感じか?」
灰色の壁や天井は火山灰か何かでできたような感じかな。
「魔物がいたような跡はないんだよなぁ」
こんな洞窟みたいな形状をしていて、出口のような穴もあるのに、何かがいたような形跡はない。
「そもそも天井低いんだよな」
2メートルとちょっとくらいだ。人が入るのにはちょうど良いが、魔物が入るには少し狭い。
「だからといって、崩れるような気配はないっと」
問題ないかな。
「となると、ここを抜ければ良いのかな」
目線を向けるは出口の穴。
出口とは限らないが、入り口と同じ形状な以上、そう願うしかないだろう。
「調査隊の皆さんの体調が回復したら、行きますか」
この先が出口だろうが、そうでなかろうが、特に問題はない。
まぁ、遅くなりすぎると仕事がなぁ……。
「あとは……私の集中力とかがもってくれるかだな」
そろそろ疲れ、ではないが、集中が切れそうだな。
切れると、色々と雑になるからなぁ。
「さて、回復までもう少しかかりそうだから」
出口の先に少し、ちょっかいかけとこか。
「『サンダー』」
電撃を放つだけの魔法を、出口の穴に放つ。
穴を抜け、奥のなにも見えない空間に光ともに吸い込まれるようにして、弾けた。
「ん~ここみたいに別の空間に繋がってるなら、これが消えなきゃおかしいんだが」
消えなかったな。
人に反応して転移させるのか、それとも普通に何もないのか。
「だが、探知には魔力的な何かがあるって感じてるんだがなぁ」
探知はこのゴールに魔力的なものを感じたから反応していたのだが……
「ん~やっぱり通ってみないとわからないよな」
この先は調査隊の皆さんを待ってからだな。
じゃ、私も少し休みますか。
近場の腰掛けられるくらいの岩場があったのでそこに腰をおろして調査隊が回復するまでの間一息ついた。
収納から取り出したコーヒーとパンを嗜みながら。
「ふぅ。落ち着くぅ」
苦すぎず、甘すぎない丁度良い加減のこのコーヒー。
それと、仄かな甘味とフワフワの食感のパン。
「これが良いのよ」
はぁ、落ち着く。
「……ふむ。さてと、食べ終えたし、あっちも回復したみたいだから、行きますか」
小一時間ほどの休憩の後、私たちは足並み揃えてその穴の前に立っていた。
「準備は良いか?」
「もちろんです」
「よし、んじゃあ、離れるなよ」
いつもよりも低い声で放たれたその声は、調査隊に緊張感を与えた。
意図はしてない。だが、社長がこの先のことをそれだけ警戒している証拠だ。
「行くぞ」
そしてその先へ足を踏み入れた。
「なんだこりゃ」
穴を抜けた先は、洞窟の先でも、地上でもない。
「雲の上、か」
天空の地であった。
・・・・・・・・・・
後書き
回復したんで再開します。
休んでる間でモチベも回復したし体調も回復したし、アニメも少し見れてインスピレーションとか出てきて休むのって大事ですね。まぁ、今回のは意図してないけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます