第22話 続:始めて~のソロ配信。私、紹介する



「次の紹介、に入る前に一人紹介したい子がいるのでちょっと待ってろ」


 ・

『えっ?』

『副社長かな?』

『誰だ?』

『これで親友出てきたら笑う』

『いや笑えねぇだろ』

 ・


 カメラから離れて、ソファーに座る九重の狐耳を引っ張る。


「痛い痛い!」

「聞いてたな?行くぞ」

「えぇ~まだ途中なんだが」

「仕事なんだが?」

「むぅ~仕方ない」


 というわけで引っ張るのを止めずにそのままカメラに戻ってきた。


「紹介するぞ、Sumaの新入社員の九重だ」

「あぅぅ、耳が痛いぞ……って、自己紹介だな。我は九重だ!」

「とまぁ、新入りなんだが、これからの公式チャンネルの報道担当としてやらせるつもりだ」

「えっ?そうなのか?」

「そうなの」


 ・

『ケモ耳?』

『一人称が我?』

『というか身長でかいな』

『隣に社長だからなおのことでかく感じる』

 ・


 あっ、今さらだが九重の体は最初に会った時より少し変化があり、少し背は縮んでだいたい180cm位。

 それでも一般女性よりかはでかい、というか平均男性よりかはでかいと言える。

 そして尻尾はないが、耳はそのままとなっている。


「まぁ、いいや。というわけだからここからは二人で紹介していくぞ」

「おー」


 ・

『なんか、キャラ濃い子が増えた』

 SHO.ch『なにあの子、知らない。けど、可愛い』

『翔ちゃんが知らないってことは、ホントに最近、それも短期間で入ったってこと?』

『即戦力ってことか』

『大きな子と小さな親のように見えたのは気のせいか?』

 ・


「改めて、次の商品はこいつだ」

「これは……翔ちゃんの記念品だな!」


 翔の五十階攻略記念として、新しいグッズを販売することとなったわけだ。


「ランクアップ記念とかは基本やらないが、流石に五十階突破はお祝いしないとな」

「ほほう、これは落武者との戦いの最後のシーンのフィギュアだな」


 いや、よく知ってんな。

 確かに上位に上がってきやすい内容だけどそこまで時間なかったよな。


「翔ちゃんは冒険者の中でも上位の好きだからな。優先的に見てたから知ってるのだ」

「そうなのか」


 うーん、魔法使いとして、翔の動画に見出だしていたのだろうか?


「まぁ、それなら解説は頼むぞ。次はこれだ」


 出したのは、アクリルスタンドと記念イラストボード。


「おぉ!どちらもかっこいいな!アクリルスタンドは三種類で、どれも良いところを使っている。イラストボードは格好よさと可愛さが同居している、素晴らしいイラストだな」


 ・

『しまったな、言いたいことがだいたい言われてる』

『ホントだな』

『この子も俺たちの同類だったか』

『興奮しながら好きな配信者のグッズを紹介する九重ちゃんも可愛ぇぇよ』

 ・


 本当に、言いたいこととか全部言われてる気分だよ。


「イラストの担当は『丹』先生だ。うちのVTuberの夜霧(やきり)ちゃんのイラストも担当している先生だ」

「夜霧ちゃんか、後で見に行かねば」

「お、おう。とりあえず、丹先生急な依頼だったがありがとうございます。今後とも夜霧共々よろしくお願いします」


 ・

『翔のイラスト紹介してただけなのに色々と凄いな』

『新たに一人のファンが生まれた』

『なんか、九重ちゃん、子供みたい』

『好きな物を見つけて興奮してハマる子供』

『それだ』

『見てて、なんだかホッコリするような、なんというか』

『これ、二人の体を入れ換えると丁度良い感じになるな』

『確かにww』

 ・


「こっちは明日から発売予定だ。一応、先着順で翔の直筆メッセージが添えられてる特別版も販売予定だぞ」

「うむ、欲しいな……」


 いや、お前まだ給料入ってないだろ。

 お金持ってないのに買おうとすな。


 ・

 SHO.ch『頑張って書きました』

『お疲れ~絶対に手に入れる』

『欲しいな、じゃないよ九重ちゃん。手に入れるって言おう』

『買うこと確定かよ』

『隣の親が買ってくれるってよ~』

『てめぇの小遣いで買いやがれ!ってな』

『まだ小遣い渡してなさそ~』

『いや、よく考えてみろ、入社一週間足らずで給料なんて入ってると思うか?』

『それなのに欲しいなんて、お前、仲間だな』

 ・


「一先ず、給料出るまでの少しの間だけ、少しくらいなら買ってやるとするか」

「えっ?マジなのかの?」

「この配信のボーナスってことで」


 一応、私の子供だ。

 少しくらい、財布を開けても問題はない。

 給料が出るまでは無一文なんだ。それを知っていながら推し活を勧めた私にも非がある。

 だから少しくらいなら譲歩してやる。


「やった~!」

「先着分は買えるか怪しいがな」


 だが、そこは確約できん。

 何せ相手は推し活の歴戦の猛者だ。

 私だってこういう競争はやってきたが、勝率は安定しない。

 昔、サインを100枚も書いてないのに先着順とか言われたときは、ぜってぇ無理!って言いきったもん。案の定だったけど。


「そういや、コツとかあんのか?昔はあったけど今はどうなん?」


 ・

『秘密』

『企業秘密だ』

『コツ、あるかねぇ。普通にやって普通に手に入れるだけさ』

『ねぇよ。ごり押しだぜ』

『私も特にないかな』

『くっ、ピュアな民の存在が汚れきった俺の心を突き刺す。すまん。だが、これは戦いなんだっ』

 ・


「そうか。流石にそうだよなぁ~」

「うむ、手の内は最後まで隠しておくものだ。ここは是非ヨイヤミさんに頑張ってもらわねば」


 期待値上げすぎんなよ?最低限、通常版は手に入れるつもりだが、特別版手に入らなくても怒るなよ。


「最悪、本人に直接お願いしに行くとかもできるがな」


 ・

『あっ、ズリィ!』

『職権乱用だ!』

『不正を許すな!』

 SHO.ch『欲しいなら全然あげるよ~』

『本人が良いなら、構わんか』

『それはともかくズルいものはズルい』

 ・


「翔お前、頼んでもないのに私が買ったやつにサインとかメッセージ書いたの覚えてるからな?」

「えっ?」


 ・

 SHO.ch『あ、アハハ~』

『えっ?翔ちゃん?』

『本人が勝手にやったことがある、か』

『迷惑そうにしながらしっかり保存してそうな社長』

『あいつ、また勝手に……保存すっか』

 ・


 いや、保存はしたがそんなんじゃねぇからな?


「まぁ、だから最悪、本人に言えばいくらでも書いてくれるから、期待はすんなよ」

「そ、それは喜ぶべきか否か……」


 複雑そうな顔だな。

 安心しろ、私もファンとしては複雑だから。いや、社長としても複雑だな。


「はい、というわけで買ってあげろよ」


 ・

『は~い』

『は~い』

『買ってね?じゃなくて買ってあげろよなのまじ社長』

『翔ちゃんのフィギュア商品化待ってます』

 ・


「忘れろ?分かったな?」

「そういうときはビームではないのか?」

「やってたまるか!」


 そんなキャラじゃねぇし、私はそんなこと言いたかねぇ!というか、私は配信者じゃねぇからこの歳でそれはちょっときつい!


「え~~」

「文句言うんじゃありません!」

「は~い」


 ・

『仕方ねぇな。許してやるか』

『なんだ、やんねぇのか』

『お前、可愛そうだろ?それをやった子が』

『あれは不可抗力だろ』

『なんのことだ?(記憶喪失)』

『あっ、すまん』

 ・


 ……うん、社長としてなんか申し訳なくなったわ。


「はい、九重は今回はもう良いぞ」

「もう良いのか?じゃあ、続きだ」


 とりあえず、今日はソロ配信の予定なので九重の紹介は済んだことなので帰した。

 帰ったといってもすぐそこのソファーに戻ってスマホとにらめっこしただけだけど。


「はい。私一人に戻ったところで続いての商品だ」


 またまた横から取り出す。


「はい、VTuberに戻りまして、今度はフィギュアだ。今年で一年目の子たちのフィギュアが発売だ」


 こんな感じと、見せながら淡々と説明していく。


 ・

『待ってましたぁ!』

『待ってたぞ!』

『そういや、まだ一年か』

『一年目でフィギュア出せるってのも凄いけどな』

『そりゃ、Sumaさんだぞ?』

『社長様々だよな』

『ホントにな』

 ・


 一年目の子たちは五期生で、クルシュは二期生。五期生の後輩はまだである。さっき上がった夜霧ちゃんは三期である。


「これに合わせて、五期生の子たちのグッズの再販が発売だ」


 横からタペストリーを取り出して立ち上がって広げる。


「んぐぐ、こんな感じだ!」


 ・

『必死に背伸びして見せる社長可愛い』

『なるほど、このための九重ちゃんか』

『理解した』

『本人は不本意だろうがこれでサイズ感がハッキリと分かる』

『ホントだな~』

『もっと、見せて~』

 ・


「他にはデビューの時に販売されたイラストボード、アクリルスタンド、モチーフマークの缶バッチなどだな」


 これら結構好評で、こちらの思惑を外して即日完売だったため、今回再販することになった。


「今回はかなり多めに用意してあるぞ。即日完売は、多分大丈夫だ」


 これで即日完売なら、次からどうしよ、受注販売か?

 それも良いんだが正直、それって次の記念日近い日に届くなんてこともあるからな。


「個人的にこれは嫌だからな。これで即日なら次回から大量発注かぁ」


 予算結構かかるんだよなぁ。


 ・

『よし、しっかり買ってやろうな!』

『そうなったらな』

『社長がこうやって広告すれば皆買うよ』

『少なくとも俺は2個買うよ』

『俺もそうだな』

 ・


 うん、それなら安心して~ってできるかよっての。


「こっちも企業としては採算取れるようにしないといけないからな」


 そればっかりは私の一存じゃなぁ


 ・

『よし、お前ら』

『わかってるぞ』

『しっかり利益が上がりゃ問題ないんだろ?』

『売りきれさせたる!』

『もちろん、迷惑かからない範囲でな』

『あたぼうよ』

 ・


 うーん、なんか悪いことをぼやいた気がするなぁ。


「あ~無理すんなよ」


 心配な声を上げたところで、紹介する物を紹介し終えたので、締めに入った。


「というわけで、お付き合いいただき、ありがとな。今後も定期的にやるので是非見てくれ」


 ・

『もちろん、毎回見ます』

『週一でやってください』

『社長か九重ちゃんのどっちかがやるってこと?』

『どっちでも面白くなりそうやな』

 ・


「あ~そうやね。私かさっきの九重のどっちかだ」


 まぁ、最初のうちはアシストとして一緒にやるだろうが、それは言わないで置こう。


「それと公式の切り抜きを許可する方針に変更予定だから、切り抜きたい人はその辺のガイドを見てもらって。一応言うが、こっちに許可いらないし、収益は100%持ってって良いことにする予定だから」


 ・

『その金でスパチャしろと』

『それでグッズを買えと』

『いっぱい切り抜きます』

『マジで?ありがてぇ』

『よっしゃ、今までの社長まとめしますか』

 ・


「まぁ、そういうことだ。あ~あと不本意だが私のグッズが販売確定したので、欲しい人、いないと思うが一応言っとくか」


 ・

『それが一番欲しいんだが?』

『皆欲しいです』

『どんなグッズだろう?』

『そのための切り抜き収益か!』

『やめろ!破産するぞ!』

『大丈夫。その分社長で儲けるから』

『それなら大丈夫か』

 ・


 おい、私を儲けの道具で見るな?と言いたいが利益が結局こっちに帰ってきそうなので何とも言い難い。


「お知らせもこれで全部だな。では、改めまして、長々とご視聴いただきありがとうございました」



 この配信は終了しました。



・・・・・・・・・・

後書き


始めての昼更新。

明日のやつ、どれくらいに更新できるだろうか……

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