第21話 始めて~のソロ配信。私、淡々


 色々と面倒な手続きは一先ず終えた。

 あとは後日となるので、今日はもう書類と戦う必要はなくなった。


 が!

 まだ私には大切なものが残っている!


「ソロ配信かぁ~嫌だなぁ」


 一応、生配信だ。

 理由は、色々と後付けで言われるのが嫌だから。生配信はそういう言いがかりの一部を防ぐ効果もあるのだ。……タ~ブンネ~。


「告知はしてないから、人が集まる前にサクッっとやって、商品広告もやって終わろう!30分もかからないさ。さぁやろう」


 事務所に帰る足取りはかなり重かった……。



 事務所に帰り、社長室に入る。


 まぁ、入ると当然のように九重がソファーで動画を楽しんでいる。

 そして、私の机には撮影の器具、紹介する商品等々、色々と置いてあった。


 使い方は知っているので、問題はない。


「はぁ。さて、今は9時。10時スタートで良いだろ」


 それまでにセッティングとか、話す内容とか決めておこうか。


「そういや、あの動画はどうなった?」


 一度上がった以上、取り下げるのは難しいので、タイトルとか編集しただけで特に手を加えていない。


「え~っと……これだな」


 社長の未公開動画と名で公開されているそれ。


「……うわぁ」


 すんごい再生回数行ってる。

 100万をすでにオーバー。

 というか、公式のチャンネル登録者が二割増しなのなに?


「まぁ、公式のチャンネルの切り抜きとかは許してないからな」


 うち、大型の企画は公式じゃなくて、主催の子のチャンネルでやるから。それどころか公式は特に何の企画もやらないであくまでお知らせとかそれくらいなんだよ。


「うーん。面倒だな」


 だからといって、これからは商品宣伝のコーナーとか、九重次第だが、公式で何かしらを出す可能性が出てきた。

 なので、切り抜きとかオーケーにするか。


 収益化は……しない。 ここで儲けても仕方ない。それに切り抜きさんに対しての収益関係とか面倒だもん。


「商品広告がたくさん広告されるのは良いことだからな」


 ここで、公式は収益に関与しない。

 つまり切り抜きは再生数分の利益を100%得られる。

 タダで切り抜かせてもらった上に利益は美味しい。だからたくさん切り抜かれて、それはそれで良い広告になるというものだ。


「と、その辺は置いといて……これ紹介すんのか」


 VTuber部門がメインではあるが、ダンジョン配信者のコレクション装備とか名シーン切り抜きカードとか、チェキとか。


「どう、紹介しよう」

「普通にやれば良いだろう」

「……」


 しっかりこっちのこと聞いてるのね。

 イヤホンらしき物を耳に……あれ?ケモ耳部分って、それも耳?イヤホンは人の耳につけてるけど、そっちの耳からも聞こえてんの?


「いや、よそう」


 そんなん、作り物?の体に対して考えても無駄やろ。


「……普通にねぇ」


 まぁ、私も1ファンとして、これを紹介すりゃ良いだけか。

 難しく考える必要はないか。


「よっしゃ、やったるか」


 手元の紙に台本のようにツラツラと書いていく。

 好きなように、ファンの目線から、それを書いていく。


 そして10時を向かえた。



 ・・・


「はい、どうも、突発的に始まりました。知ってる方も多いと思いますがSumaの社長の宵闇です」


 突発だから人はいないし、待機もいない。


「今回は、まぁ、察してる方も多いでしょう。先程公式で流れたあの未公開動画の件を説明しようかなと…………あれ?なんかすげぇ人増えてね?」


 ゼロだった人数が1分も経たないうちに1万ほどに伸びている、いや、数字が止まらない!


 ・

『社長だ!』

『お前ら、囲め!逃がすな!』

『公式で突発とは、やってくれたな』

『伝書鳩も送れ!拡散させろ』

『ソロ配信か、おもしれぇじゃないか』

 ・


 速いんだが?あれか?チャンネル登録してるやつらは通知がきて、すぐに、か?


「暇かよ……そしてそんな暇が10万越えと」


 速いわ。

 私のプラン返せ!

 終わる頃にこれくらいの予定だったんだが!?


「仕方ない。大人しくやるか」


 もう、私はこいつらを気にしない。


「話を続けるがあの未公開動画は私が協会から依頼を受けた際に撮ったもので、決して今日撮ったものじゃないです」


 ・

『その釈明って、何の意味があるんだ?』

『今日の場合、今回みたいにダンジョン封鎖される度に秘密裏にあぁいう魔物を倒しているということになる』

『うんうん。それで?』

『あのクラスの魔物となると、それなりに利益が生まれるんですよ。だから、秘密裏に処理した上にそれを協会が裏で買い取っている、なんて考えられるし、社長が売却しているかもしれないわけです』

『あぁ~ギルドの連中、そういうの気にするのか』

『そういうことです』

『それに、調査のためと封鎖している度にあんなのがいるって考えると、なぁ』

 ・


 まぁ、概ね理解してくれているようで助かる。


「そういうわけで、説明のために今回は動画を撮ることになったんだ。まぁ、流石にこれで終わるのも味気ないよな?」


 ・

『はい!』

『当たり前だろ?逃げる気か?』

『そうですよねぇ?この為だけに動画を出す分けねぇよな』

『こっからが本題なんだろ?』

 ・


 まぁ、私からしたらこっからがオマケなんだがな。


「前々から検討してた、これから売り出す予定の商品を紹介していこうかと」


 ・

『まさかの社長ショッピング』

『絶対に買ってしまうかも』

『買ってね、お前ら。って言われたら買う自信がある』

 ・


「まぁ、毎回私が紹介するわけではないが、今回は初回なんで私が紹介していこうと思う」


 机の横に置いてある商品の一つ目をカメラに映るように持つ。


「まずはこれかな。Suma所属のVTuberの商品。アクリルスタンド。以前発売させてもらったものとは別バージョンとなっています」


 ・

『前回はクルシュちゃんを買わせていただきました』

『わりとすぐに売り切れてプレ値ついたのは覚えてる』

『その後二次生産分を出したのは神だった』

『それに加えて一次生産分と差をつけてくれたから、一次生産頑張って買った人にも救いがあったよな』

『そして二次生産分も買ったと』

 ・


「そうだな。転売対策で色々としたが、流石に全部は殺しきれなかったから、欲しい人にはしっかり二次生産分をと。それでも頑張って一次生産買った人が損をしないようにと」


 まぁ、一次生産分のプレ値は今も凄い。

 特にクルシュとかは定価の20倍はしてるな。


 だが、転売ヤーから買う人はいない。

 何故なら、それをするのはファンではないからだ。


「ファンからファンへ渡るのは良いが、自分の利益のために本当に欲しい人が損をするなんてことはあっちゃいけない」


 あとは配信者たちにそういうところから買わないように、買うなら正規の中古ショップからって注意させたので、結果転売ヤーは中古ショップに売るしかなくなり、利益はそこまででなかった。


「購入制限つけたから転売ヤーもそこまで儲けられないどころか生活費2日分も稼げないって分かれば減るだろうってね」


 ・

『マジでザマァだった』

『希少価値を保ちつつ、欲しい人は二次生産分から手に入り、転売ヤーには儲けを出させない』

『上手くいったのはファンたちが協力したお陰だったが、良い戦略だったと思うよ』

『フリマアプリから買うのはファン失格とまであの頃は言われてたからな』

『今はそうでもない。というか、対策をしてきたよな』

『必ず売り手に質問を投げる習慣な』

『ファンなら知ってて当然な物を質問するやつな』

『引退するから売りたい、なんて人もいるからな。まぁ、値段と相談だったり、売り手も買い手も相手を選ぶことで上手く行ったわけだが』

 ・


 そこは本当にファンの協力のお陰だわ。


「普通こういうのは上手くいくもんじゃないから、ある程度抑制して数を減らすだけの計画だったんだがなぁ」


 上手く行きすぎたよな。

 こういうのを教育が行き届いているファンとでも言うのかね?


「対策はするけど、100%の対策は無理だからあとは買う側の問題って投げただけなんだがな」


 まぁ、私としては悩まなくて良いのはありがたいことだ。


「というわけだ。今回も方式的には同じ感じで行くぞ」


 一次生産分は普通のアクスタ。

 二次生産分は裏面にその子のサインをつけたアクスタ。


「値段は一次が2000円、二次が2500円だ」


 二次生産分は受注生産、加えて少ししたら公式のホームから通常販売もさせてもらう。


 少しでも速く欲しい、とかそういうのは先着順の一次生産を買ってね?ってわけだ。


「こちらの販売に関してはこの配信が終わった後、公式のホームページから情報を出すのでそちらに」


 ・

『は~い』

『必ずちぇっくしま~す』

『社長も色々と頑張ってるのがよく分かる』

『私は大人しく二次生産分を買います』

『頑張って一次取りに行きます』

 ・


「はい、続いての商品は、ダンジョン配信者部門の子のグッズ。食品玩具売場に置かせてもらう、コレクション装備ですね」


 パッケージと、ピックアップした中身を机に置いてそれらを映す。


「結構リアリティ高く作らせました」


 こんな感じ、とカメラに実物を近づけて細かいところを見せていく。


 ・

『レベルたけぇ』

『よく再現したなぁって感じだ』

『これサイズ的に八分の一サイズのフィギアに持たせられそう』

『あぁ~良いね』

『いつも誰かが作ってる制作者ファン』

 ・


「というわけで作ってきました」


 ・

『えっ?』

『るぇ?』

『えぇぇ』

 ・


 そういう用途も考えて作った部分もある。というか、そのためのサイズ調整も行った。


 だから、作れるのさ。


「どうよ(ドヤァ)」


 ・

『すげぇ』

『なんでここまで躍動感が出るんだ……』

『ついに隠さなくなったな、社長』

『これを越えるクオリティを作れる自信ない』

 ・


 作ったのは翔のフィギア。


「ずいぶん前に発売されたフィギアをばらして、この前の翔を再現してみたよ」


 たまたま見つけた不良在庫。

 それを使って前々から作ってたのが丁度よかったから、ちょちょいと改良したのさ、さっき。


「結構上手く行ったと思ってるよ?自信作」


 ・

『確かオーロラブラストだったな。それまでしっかり再現されてる』

『表情もどうやったらそうなるんだよ』

『いや、表情とか弄ってんのはヤバすぎ』

 SHO.ch『えっ?なにこれ、欲しい』

『こっちを商品化すべきでは?』

『あっ、翔ちゃん』

『本人が欲しいと言っている』

『いや、俺もこれ欲しいよ』

 ・


 えっ?なんか、流れが嫌な方向に向かってる気がする。


「いや、これは商品化しないぞ?というか欲しいならあげるぞ?翔」


 皆さん、頼むからその懇願だけはすんなよ。


 ・

『商品化希望』

『頼む!お願いだから、それを買わせてくれっ』

『社長!ご検討のほどを!』

 ・


 あ~嫌だ。


「次々!これは終わり!」


 ここで切ります。絶対にやめろ?それ以上言うな?分かったな。



 もう疲れたな、よし、そろそろ流れを変えようか。

 カメラから目を背け、未だにイヤホンで動画を見ている九重に目を向けた。



・・・・・・・・・・

後書き


予約投稿忘れてた。昨日遅れず、今日遅れたってだけだった……。


明日明後日は遅れる予定です。次の日の昼とかまで遅れる可能性ありです。

一先ず休まず毎日は継続できてますね。体調は大丈夫だし、突然崩さなきゃ続けます。

皆さまも体調には気をつけてくださいね~

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