第15話 質問コーナー。私、答える。
あれだけ驚いたあとだ、なんというか、こう、スッキリしてるようななんというか……まぁ、頭がスッキリしてるよ。一周回って冷静になるやつだね。
「疲れたのは間違いないけどね」
「続けるって言った側からいきなり根を上げるのか?」
そんなこと言われても疲れたものは疲れた。
というか、原因は社長!粒子砲をぶっぱなされ続けたようなもんだからね!
というか、社長のバック、政府なんかよりも数段ヤバイ人たちがいたんだけども?
「まぁ、頼もしい上司なのはありがたいけどね」
社長が辞めない限り続く会社になりそうだ。
将来安泰が固くなったのはありがたい。こと、不安定な業界だからね。
「どした?いきなりお世辞なんか呟きやがって」
「呟いちゃ悪いですか」
「悪かねぇけど、脈絡もなく急に呟きやがって……」
ん?なにこの反応、照れてる、のか?
いや、なんというかこの反応は、戸惑ってる、のか。
「この反応は想定外。だけど……これもこれで良い」
「きめぇ」
でもやっぱりこっちの方が安心するわ。
さっ、進行しないと。
「はい、質問はいくつかするとして、まずは社長!私から質問するね」
「おう。良いぞ?」
「どんな女がタイプだ!」
「私は女やぞ!」
そうだよね~最近見たやつに引っ張られ過ぎたかぁ。
「じゃあ、質問を変えて、ズバリ、結婚願望は!」
「はっ、んなもんあるかよ」
「いや、予想はしてたけど、なんでそんなに吐き捨てるように言うのさ」
唾でも飛ばしてるみたいな反応するね?
というか、なに?恨みでもあるの?
「男はどいつもこいつも、やれ胸だタッパだケツだの、見た目で判断しやがって。その上私の見た目はロリだなんだで、変態ホイホイじゃねぇっての。ロリで平均的にお胸があるから変態共に群がられて、キモいのウザいの。そのくせして幼馴染みだの許嫁だと、彼女だのがいるだとぉ?ふざけんな。んな男は殺せ!ただの変態やぞ?そんな変態のどこが好きやねん。変態不審者さ~んはとっととブタ箱に入っとけ。というか私の年齢知ってからさらに興奮するのなんなの?というか知らないままくるのやべぇだろ!というか世の中のロリキャラを愛でるやつらは良いけど現実でやんなよ。紳士だの侍だのほざいて私に襲いかかるやつらキモいんだよ。というか製作者!本物のロリが現実にいたらそんな平穏に暮らせねぇよ!毎日毎日ねっとりした視線があって、偶然を装って接触しようとしてきたり、何度警察に突き出してやったと思ってんだ!というか、悪いことやってないのに警察に顔覚えられてた時期あるんだからな!警察も私を変態ホイホイみたいに使うんじゃねぇよ!使うまでもなく捕まえねぇと警察なんていらねぇんだよ!私じゃなかったら現実で同人誌みたいなことが行われてたかもしれないんだからな!働けサツぅ!というかどいつもこいつもロリだの合法だの舐めやがって!私はロリじゃねぇっての!幼くもねぇし!子供でもねぇ!」
わぁ~凄い恨み辛みが出てきましたね。瞳が真っ黒でしたよ?
低身長でいつまでも若い社長はそういう感情ばっかり向けられてきたから恋愛は駄目そうですね。
「マジで社長が結婚できなかったら、世の中の自称紳士とかロリコンさんたち、責任取って処されてくださいね~」
さすがにこれはふざけなしでちゃんと責任取ってほしいですね。
「じゃないと矯正して男として終わらせますよ?」
・
『さぁ、みんなで謝ろう』
『くやしいでござる』
『シュール過ぎるよ社長』
『やめて欲しいでござるよ!』
『ホントにごめんなさいぃ(土下座ぁ)』
『無責任にキャラ作ってごめんなさい』
『愛でるのも現実では迷惑、か。やってましたすみませんんん!』
『お巡りさ~ん、ここら辺の人たち一掃しちゃって大丈夫ですよ~』
『はい、皆さん、住所教えてね。今から逮捕しにいくから』
『いや、自首します』
『なのでそのペンチを置いてもろて』
『矯正だけは勘弁を』
・
うん、反省してるね。
けど、しばらくこれ(ペンチ)は持ったままにしとこうかな。
「って訳だから社長戻ってきてくださ~い」
「はっ!……うん、次だ次。次の質問」
「アハハ~そうだね。次は視聴者から募集したやつだね。えっと……普段何時間寝れてますか?だって」
それは……聞かなくてもわかるような気がするんだ。
「平均3時間。長くて6時間。この前みたいにくっそ忙しいときは完徹だ」
「はい。闇が深くなりそうなので次~Sumaの社員の中で一番信用を置いている人は?同じく配信者は?」
社員さんは恐らく聡子さんかな?
でも配信者かぁ。
「社員は当然だが副社長の聡子だ。信頼してるよ……そして、よく一緒に完徹で仕事終わらせる戦友だよ」
目が遠いですね~社長に質問するとほとんど遠い目になるのなんなんでしょう?
闇が深いし多すぎません?
「は、配信者の方は?」
予想は翔さん、または翔さんの同期でしょうか。皆さん一番最初のライバーなので信頼は厚そうですから。
「ん~~」
少し悩み、腕を組み目を閉じる。
しばらくして目を開けて答えを出す。
「そこは全員かな?歴とかそういうのは関係なく、私はみんな信頼してるよ。もちろん、お前もな」
「ぇぅ……」
なんて不意打ち!
可愛いのに、格好いい!
というか、社長、そんな風に私たちを見てるんだなぁ。
「ありがとうございます」
「礼を言うのはいつも私の方だ。ありがとな」
・
『エェ話や』
『理想の上司じゃねぇか』
『社長やっててくれてありがとよ!』
『この人が社長やってる理由はこれよ』
『社長になってくれてありがと~!』
・
「あ~柄にもねぇこと言うもんじゃねぇな。恥ずかしいわ」
「嬉しかったですよ、社長」
「あっそ。じゃ次だ」
照れ隠し?いや、普通に嬉しいだけか。
口角が上がってますから。
「次の質問は……冒険者になったキッカケ?だそうです」
「流行ってたから、私が腕っぷしと身体能力高いから好都合だった。以上!」
「そんな理由……」
・
『そんな人がランク6』
『あれ?今の言い方』
『やべぇなこの人って、言うほど動機はぶっ飛んでなかったから、やっぱこの人すげぇって思ったわ』
『普通に腕っぷし強かったですが、腕へし折られて止めました。ちなみに腕は治りました』
『えっ?なにこの人、つまり魔力なんかで超人になる前から超人だったわけ?』
『いや、シンプル身体能力高いってだけでスタートしたってこと?』
・
「何人か半端に理解し始めてるから言うけど、私、魔法を覚えたのはヤンチャ時代のダンジョン暴れてた頃で、最初期の頃はぜ~んぶ素手で倒してたよ」
すげぇなこの人。
素手で?最初期の頃というのも気になるけど、これは……なんか聞かない方がいいと言っているので止めておく。
「だからキッカケを持った頃は普通に身体能力が異常に高かっただけだよ」
「いや、異常に高かったのはわかりますけど、素手って」
普通、こう、武器とか装備とかつけるでしょ?
私みたいな魔力のない人や少ない人でも普通に冒険者自体はなれる。なぜなら後天的に強くなる場合もあるからだ。
だとしてもおすすめはされない。一般人が裸でダンジョンに潜れば確実に死だ。
生まれた頃から才能を持っていて魔法を使えたり、社長の言う異常な身体能力を持つ人はいるが、それでも装備もなにもなければ死ぬ。
超人のように進化したにしても体の作りは最初はただの人間。
骨格が強かろうと、戦闘センスがあろうと、力が強かろうと、魔物にそれらは効かないし、噛まれれば腕も命も簡単になくなる。
だから最初は必ず装備を使って倒す。まぁ、魔法を使える人は全部例外だけどね。
倒していくと、目には見えないがレベルみたいな概念が上がり強くなる。みたいなことが起こり、ある程度上がって初めて装備をしなくとも魔物を倒せるようになる。
「そんな概念があるんですが?」
「さぁ?私は普通に素手のノー装備でやってたよ?」
「……」
もう、この人について考えるだけ駄目だ。
この人は生まれたときからの天才だ。
だからその辺は聞くだけ無駄だ。
「本当に凄いな、社長は」
「まぁ、それなりに努力もしたさ」
また社長は遠い目をした。
今度は、懐かしいような、眩しいような、そんな過去を見つめるような目だった。
・・・
質問に答えてなんなりしていて、結局3時間をオーバーして4時間寸前。仕事とかの関係上ギリギリになってきたので締めに入ることとなった。
「って言うわけでどうだった?」
「まぁ、見てくれた人たちはありがとうな。これからもちょくちょく色んな人のところに顔出すから、まぁ、興味あったら他の子たちのことを見といてくれや」
しっかり宣伝もして、私からはもう言うことなし!
「じゃ、みんな~またね!」
「じゃあな」
この配信は終了しました。
「よし、じゃあ、私はこの後仕事があるからな、ここで。今日はありがとな、クルシュ」
「いえいえ、私も楽しかったですよ!驚かされっぱなしでしたが……」
いや、それはすまん。
「ま、お前がずっと期待してくれてた分はできたと思うんだ」
「え?そんなこと気にしてたんですか?」
「多少はしてたんだよ。デビューした頃から私と遊びたかったらしいからな」
あ~伝わってたんだ。恥ずかしいな。って顔してる。
いや、伝わってた訳じゃなくて聞かされたんだがな。
「なら、もっと私と遊んで欲しいな!私の睨んだ通り、社長と遊ぶのは楽しくなる!」
「まだ遊んでねぇもんな?」
「いや、十分遊んだよ。一緒に話して、騒いで、配信を楽しんだ。これは十分遊びだったよ」
……この辺がクルシュの人気の理由なんだろうな。
私も結構好きで動画見るからな。
「ホントに楽しそうに笑う」
聞こえないくらいでそう呟く。
やっぱりそれが何より、大事なことだろう。どこかで楽しいと思えることすらも、楽しいと思えなくなる日がくるんだ。私はそれで、楽しかったものが楽しくなくなって、辞めるなんて繰り返してたからな。
「けど、やっぱり、今度はゲームしようね」
だけど、今はそんなことはない。
楽しいことだけではない。だけど、この一瞬、この楽しさを求めて私はこの仕事を辞めることなく続けるだろう。
「あぁ、そうだな」
少なくとも、こいつらが笑って配信してくれている限りはな。
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