第11話 打ち合わせ。私、こんなんじゃねぇだろ?


 ダンジョン配信が再開し、ほとんど通常業務と変わらない日々に戻り始めた頃、私宛にメールが届いた。


 ・『3D、立ち絵の納品』

 という件名でな。


「来たか……」


 というか、一月いらないのか?

 その辺は良くわからんが、まぁ思ってたよりも早いのは間違いない。


 とりあえず確認して、依頼料とか振り込んでクルシュちゃんと打ち合わせの流れかな。


「さて、どんなもんかな~」


 ファイルを開き、中身を確認した。

 少なくとも今と変わらないくらいだとありがたいんだがなぁ……ん?


「だぁれ~これ~」


 そこにあった体?立ち絵?はちょっと自分でも誰だか良くわからん幼女だった。

 いや、確かにつり目で体格差は大してないが私はこんなに結べるほど髪は長くねぇし、目は青くねぇし、胸部はそこまで大きくねぇし、あと謎の筋肉なに?私ってそんな筋肉ついてるか?いや、ついてない!


「まぁ、良いんだけどさ?私ちゃんと実写してるよね?」


 こんなに違ったら駄目だろう?


「試しに誰かにチェックお願いするか」


 誰が良いかな?

 あ~クルシュとの打ち合わせが確か今日だったからついでに見てもらうか。




「良い!」

「良いのかよ……」


 私と聡子とクルシュとそのマネちゃん社員とで私は一つの資料、というか私のそれなんだけどを囲んで話し合いが行われていた。

 ちなみに、クルシュについては画面越しの打ち合わせであり、中の人はきていない。画面にはクルシュとしての体が映し出されている。

 白髪のツインテールで、少し小柄(私よりは大きい)な活発そうで可愛い女の子。それがクルシュである。


「一緒じゃないといけない決まりなんてありませんよ?」

「けど、私はこんなに可愛かねぇよ」

「いやいや!可愛いでしょ!」

「それはそれで傷つくのだが?」


 いい歳して可愛いなんて言われて喜べるほど可愛い性格してねぇっての。


「これで行くのか?」

「正直、私はその辺はわかりかねますが、出来はとても良く、社長の特徴をしっかり捉えているので問題ないんじゃないですか?」

「私もそう思いますよ」

「ほら?二人ともこう言ってるんだし、ね?」


 ……まぁ、出来は確かに良いし、特徴を捉えているのは確かだ。


「まぁ、問題ないならこれで良いけどよ」

「イェス!じゃあ、これで行こう!」


 反対意見でなかったのでこれで決定で~す。

 くそう。少しくらい出てくれよ……。


「それはそうとして、打ち合わせだ。話を脱線させた私が言うのも何だが、話し合いを進めるぞ」

「そうですね。いくら忙しくないとはいえ次の仕事がありますから」

「そうですね。では、まずはこちらを」


 最初に貰った企画書の改訂版だな。

 日付や、収録場所などの記入が増えた感じだな。


「まず、日時は来週の火曜、三日後です」

「それはこちらも把握してる。場所は確か、うちの所有するスタジオ2番で良かったか?」


 うちの会社は撮影スタジオがそれなりの数所有している。

 冒険者の動画にしても、VTuberにしてもアイドルにしても、毎回毎回借りてはいられないからな。

 三つほど購入したのだ。それだけ儲かってたわけで、先行投資という意味合いでもあったがな。


「1番はちょうどダンジョン配信者の方で予約されてまして、2番です」


 三つのうち二つは通常の撮影、モーションキャプチャー等の撮影はできる。だが、あまり激しい動きには対応できないし、耐久性は暴れるには物足りない。

 そこで三つ目のスタジオだ。

 高級な設備や、細かなところまでしっかりと見せることのできる機材。そして冒険者が暴れても壊れないほどの耐久力を兼ね備えたスタジオである。

 まぁ、ほとんど使わないが。


「スタジオ自体、家での配信が厳しいものがある子が申請を出せば使えるようにしてあるから1番2番はそこそこ使うが、3番はなぁ?」

「何の話ですか?」


 おっと、長々と独り言が。


「悪い、独り言だ。えっと、来週火曜の2番スタジオだな。わかった」

「具体的には、恒例行事の3D御披露目会を兼ねたクルシュとのコラボ配信です。それと、完全に伝え忘れてましたが、御披露目の撮影を明日しましょう。3番スタジオで」

「……あっそっか」


 ほとんど使わないとか言ったのに、早速使う機会が生まれたわ。

 御披露目配信での恒例行事、それを事前に撮影するのだが、それは3番スタジオで行っていた。

 生は流石に事故が怖いため事前にだ。それとなるべく鮮明に表現するためには、やはりそれなりの設備が必要なため、3番スタジオを使うのもまた恒例だった。


「3番は基本空いているので今からでも問題はないですよね?」

「えぇ、大丈夫です。3番を使う予定があったら忘れませんよ」


 うん、私も忘れん。大型イベントか記念イベント以外使わないからな。


「良かったです。では、続きです。当日は二人で、まぁ基本自由に配信してもらって大丈夫です」

「あぁ~クルシュには悪いが、私も仕事があるからある程度時間がオーバーしたら私は上がるわ」

「大丈夫だよ、そんなに時間がかかることはしないから。二時間は取れそう?」

「三時間、まぁ四時間までは大丈夫だ」

「なら余裕!」


 何をするか知らんが、それは良かった。なるべく仕事を終わらせたいところだったが、その後にちょうど副業の冒険者業で仕事が入ってたからな。


「わかった。なら、配信はクルシュに任せるわ。他に必要な用件はあるか?」

「ありませんよ。明日の撮影終了次第告知を出します」

「了解、後は任せた」


 という感じで打ち合わせは終了。

 クルシュとマネちゃん社員は退出し、私と聡子は仕事を再開した。




 ・・・



 137.

 最近の社長、あんまりアクションないな~


 138.

 アクションない→初回アクション放送事故。二回目、翔ちゃんのところで事情聴取。三回目アクション、五十階まで無双


 139.

 お忘れかも、というか気づいてないかも知れませんが、あの人三回しか動画出ていません。


 140.

 おかしいな、もう十回くらいやってたようなイメージがあるんやが?


 141.

 みんなそれは思ってるんよ


 142.

 一回の配信で爆弾を投下しすぎなんよ。


 143.

 そういや、結局、社長のステータスというかわかってる範囲で纏まったか?


 144.

 あぁ~解析班?がいたな。どうなんだろ


 145.

 どうも、社長解析班です


 146.

 どうも、Sumaの冒険者の解析班です


 147.

 ども、ダンジョン配信者の解析班です


 148.

 いっぱい湧いたんだが?


 149.

 よし、146頼むぞ


 150.

 何故に146?


 151.

 145は変態臭い、147はダンジョン配信ってくくりが広いから、Sumaで限定した方がいいと思った。


 152.

 なる


 153.

 よしわかった。146いいぞ。


 154.

 ありがたい!

 では、これまで確定している情報を書くぞ


 社長。本名 宵闇 霧江

 年齢 本人曰く二十代後半(ほぼ確実)。


 本業 Sumaの代表取締役社長。

 副業 冒険者ランク6


 プロフィールはこんな感じ



 155.

 こう見ると普通に見えるバグ


 156.

 普通に、見える?


 157.

 副業のところで無理だった。


 158.

 二十代後半はホントっぽいんよな


 159.

 若く見られるのが嫌なのに鯖読むわけないだろ


 160.

 普通逆なんだよな~


 161.

 一部配信者よりは年下


 162.

 その辺ちょっと気になるから配信でやって欲しい。


 163.

 それは同感。年上相手にはかしこまるのかな?


 164.

 無理、かな?というかしなさそう


 165.

 してくれたらそれはそれで良い。


 166.

 続きを書くぞ。


 これまで見せてきた力は、

 無手の拳(拳圧。物理らしい)

 覇王(威圧。一応魔法)

 回復魔法(かどうか怪しい回復魔法)。

 玉座天命の拳(謎魔法?)


 それに加えて高い身体能力、収納ブレスレットを作った製作能力。


 この辺である。



 167.

 現時点でこれって……


 168.

 バケモンでしかねぇ


 169.

 どう足掻いても最強なんよ


 170.

 これに加えて本人曰くヤンチャ時代なるものがあるらしいじゃん?


 171.

 ドロップ品が全てうん十万するような世界をソロで荒らしまくってたという


 172.

 それを聞いてしまったら、この力がマジで一部だってことを思い知らされてしまう。


 173.

 言ってて思い出したけど、あの人の資産いくらだよ……


 174.

 ……少なくとも収納ブレスレット等のアイテムを売っているとして、それらはいずれも億単位で取引されるようなもの。


 175.

 国家予算越えでは?


 176.

 正確にわかる材料はないので断言はできませんが、うん兆円は越えてるのではないかと


 177.

 それに加えて政府とのコネクションもあるらしい(噂)


 178.

 そうなったら、力、権力、財力、その全てを持ち合わせた最強の人間ではないか。


 179.

 そんなずるじゃん


 180.

 これに挑もうとする馬鹿はもはやいないだろ


 181.

 あるとすれば、ギルドのいずれかか冒険者反対派のところくらいか?


 182.

 あり得るが、そいつらが負ける未来しか見えない。


 183.

 違いない。


 184.

 おい!社長が動いたぞ!


 185.

 なにっ!?


 186.

 次は何をするんだ?


 187.

 この告知だ!~~~~



 188.

 VTuber、だとっ?


 189.

 予想の斜め上に行ったな……


 190.

 現実だけでは飽き足らず、ネット世界まで侵略する気か!


 191.

 確かにSumaはその辺の事業をやってるけど、まさか何の脈絡もなくバーチャルに行くとは、予想できなかったわ。


 192.

 確かにSuma所属の配信に回る、みたいなこと言ってたけど、VTuberの方までとは思わんやん?


 193.

 だが、なぜだろう、悪い気はしない。


 194.

 Sumaの看板VTuberクルシュちゃんのところで配信するらしいな。しっかりバーチャルの体で。


 195.

 あの人、実は非現実から飛び出してきた人だったりしない?


 196.

 アニメや漫画のような性能してんのよ


 197.

 そんだけおかしい人だからか、バーチャルの方がしっくりくるのは俺だけか?


 198.

 安心しろ、俺も思ったよ。


 199.

 でも、今からめっちゃ楽しみだわ


 200.

 おう、絶対普通の配信にはならないはず。


 201.

 あの社長やぞ?普通になるわけないだろ?


 202.

 よし、俺はこのクルシュちゃんや他のダンジョン配信者のことを知ってくる。


 203.

 俺もだ。配信日まで予習してくるぜ


 204.

 俺は寝るぜ!


 205.

 大人しく仕事してるぜ。


 206.

 俺もだ




・・・・・・・・・・

後書き


555を見に行ってて、投稿が遅れました。とりあえず、ギリギリ今日!ということにしてくれ!

あ、あとチラッと見たとき偶然今日のPV数が555だったのは少しびっくりした。何の因果?それとも釘でも刺しにきたか?


今回急ピッチで進めたから明日は1ターン休みます。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る