第7話 対五十階。私、解説する
五十階に入ったからと言って、何か背景が変わることはない。
まぁ、それでも先程まで映ることも許されなかった魔物たちは映り込んできたから変わり映えはあるにはある。
「さて、ここが私がこれる最高地点。いつも以上にやる気出していくよ!」
張り切る翔は置いといて、私は奴ちゃんを守りながら静かに見守るとしますかね。
「っと」
私、というよりかは奴ちゃんを狙って襲いかかってきた魔物を回し蹴り一つで粉砕(文字通り)した。
・
『俺冒険者だから知ってるけど、今の奴ちゃんが必死こいて戦うようなやつ』
『ランク5でも苦戦するやつだったな』
『や、ば、す、ぎ』
『もう当たり前のような光景になってきた』
『やめろ、これを受け入れるのは危ない気がする』
『冒険者は特にこれを当たり前とか思うなよ』
『奴ちゃんが戦力にならない世界だぞ?』
『まぁ、常識を失わずに見ている分には楽しいからな』
・
非常識みたいに言われてんねぇ。
「折角だし、解説してこうか」
「あっ、それ私興味ある」
「なら、二人でやってこうか」
とはいえ、雑魚はある程度群がってくるよね。
魔法は使いたくないんだよねぇ。
「やりすぎたらあっちの戦闘にも影響出そうだから止めとこうか」
「何の話だ…」
「さて、実況と行きましょうか」
奴ちゃんのそれは無視して、配信に集中しましょうか。
「まずは、翔のことをおさらいしていきましょうか」
「そうだな。初見もいるかもしれないしそこから説明していこうか」
ちなみにこの間に翔は戦闘を開始しているが小手調べ程度のものなので何の問題もない。
解説することなんてないんだから大人しく説明だけしていきますよ~
「翔は魔法主体ではなく、魔法オンリーのソロ戦闘スタイルだ。これは珍しい」
「あっ、基本的にこの辺はパーティーを組んで挑戦する場所だ。じゃないと危ないからな」
「そそ。パーティーランクなるものはないけど一緒に潜ること自体はありだからね」
まぁ、普通はパーティーを組むのが正解だ。同程度のランクの人と役割を分けて潜るのがセオリーだ。
何せ一人ではできることが限られているから、詰み要素を引き当てると、文字通り詰むからだ。
それとは別に消耗を抑えるためや怪我をしないための安全志向っていうのも関係している。
・
『あれ、でもさっきパーティーシステムはできないとか言ってなかった?』
・
コメ欄に指摘されたか。今から言おうと思ってたからちょうど良いか。
「あぁ、それはシステムはないってだけ。ランク3以下はパーティーを組んだところで潜れる場所は変わらないってだけだ」
「先に言うなよ。今私たちはランク4以上で私がランク6だから奴ちゃんをここに連れてこれてるけど、普通にランク4同士がパーティー組んでランク4の行ける範囲に潜るのはオッケーってこと」
ランク4が三人とランク3が一人のパーティーを組んだときは普通にランク3はランク3の範囲までしか行けないって訳だ。
「話を戻すが、そんななか翔さんはここまでソロだ。普段の配信を見ていればわかるよな?」
「魔法効かない相手とか普通にいるなか、翔は未だソロで魔法オンリーで戦っている。なっ?珍しいだろ?」
もちろん、パーティーでの固定砲台の役割では魔法オンリーはいるが、それはパーティーで前衛などの守ってくれる人がいること前提だ。
・
『そりゃな』
『盾も、サブウエポンも持たないのは翔ちゃんくらいや』
『ランク5の最上位の実力者。それが翔。伊達にSumaの看板冒険者を語ってない』
『前まではSuma最強だったのにね』
『まさか副業の人が最強だったとはな』
『魔法オンリーでどうやって戦うの?』
・
「翔さんの戦いかたは魔法による移動、攻撃、防御の三位一体。それらを全て使いこなし戦うんだ」
口で言うのは簡単だが、なかなかにこれは難しい。
魔法は体とは違い、発動させるのにラグが生じる。
咄嗟に体は反応できても、魔法は発動できない、何てことはざらにある。
さらに魔法には集中力や詠唱など様々な要素が掛け合わされている。
そんな中それを、少なくとも三つ併用運用している上に相手の情報を処理し、また新たな魔法を使う。
「だが、翔は異様にその辺が上手い。だから強い」
私だって併用は難しい。
反射で魔法は使えない。
それを翔はやってのけるのだ。
「はい。魔法オンリーかつソロの冒険者というのはそう言うことです」
・
『へぇ~』
『世間的には翔ちゃんのことをプリンセスなんて呼ぶことがあるんだよな』
『なんで?』
『移動攻撃防御の三位一体の魔法を常に身に纏っているのって、何だかドレスを着てるようじゃない?ってことだ』
『なるほどな』
『あっ、よく見ると浮いてる』
『そうそう。それが移動の魔法な』
・
流石に翔のファンの子はよく知ってくれてるな。
あと、浮いてるのは移動系魔法ではなくオリジナルの魔法だ。
まぁ、それに関しては動画では言えないけど。
「それは良いとして、相手はどんな感じなんですか?」
まぁ、この辺のやつは奴ちゃん知ってるわけないよな。
というか説明し忘れてたが、十の倍数の階層にはボス的なやつがいる。
ボスの魔物って言ってもそれまでとはレベルが一段二段上がった程度の敵だ。
それがある以外は別に十の倍数の階層とは言えども普通の階層だ。
なお、ボスに関しては一度倒すと通り抜け出来るようになる。仕組みはわからんがボス部屋に行かなくても階段がある程度進むと勝手に出てきてくれる。この現象はボスがいる階層のみだ。不思議だよな。
「ここはメタメタなナイトみたいな鳥が出てくる」
「普通に言え」
「え~普通に鎧のようなもので武装した鳥が鋭利な口ばしなのか槍なのかで攻撃してくる階層」
・
『確かにメタ・イトか』
『いや違うだろ。アイアンバードだろうが』
『いや、ここのはアイアンスピアバードとか言う、それの進化種だ』
『名前は置いといて、実際強いのか?』
『強い、はず』
『固くて飛んで貫かれる、って言えばわかるか?』
『あっ、強いですね』
・
都度都度なんか有識者がいるのが話楽でいいな。
名前はどうでもいいが、コメ欄に書かれてる通り強いぞ?私には誤差だが。
「普通の対処法は?」
「何で普通に対処法って言わんのよ」
「社長は普通じゃないからだ」
「ひどない?」
まぁ、確かに普通じゃない攻略してたからなぁ。
「あの鳥の対処法はまず、奴ちゃんみたいな近接戦闘タイプの場合はカウンター一択だな」
「理由は?」
「まず飛んでるやつは基本的にカウンターだが、あいつに関しては生半可なのは効かない。が、腹や内部が弱いって弱点があるので攻撃してきたらしっかりとそこを狙って倒す」
私の場合は魔法で焼き付くした。
「魔法使いは大人しく後ろから近づかれないようにしながら火とか雷とかで倒しましょう」
火で炙り殺しか雷で感電死とかを狙いましょう。
水や土などは効かない。水圧レーザーとかで倒すならまだしも、普通の水じゃ倒せません。弱点付くことを条件にするならどんな魔法でも貫通力があれば勝てる。
だがまぁ、翔みたいのじゃなければ、魔法使いは近づかれたら駄目だからやっぱり火や雷だな。
「次こっちに来たら普通に倒してくれるとわかりやすいんだが」
「えっ?私が見せるの?」
「私じゃできない。翔さんは魔法で参考にならない。なら社長がやるべきだよな?」
・
『そうだな』
『そうですね』
『そうかもな』
『よし、やれ』
『あくまで普通にですよ!参考になる程度のものを見せてね!』
『普通?普通ってなんだぁ?』
『いや、説明できてるし、普通にできるでしょ……できるよね?』
・
まぁ、求められてるのはわかった。
「しゃあねぇ。じゃあ、見せるか」
ちょうど一匹来てるみたいだからな。
「来ますよ!」
奴ちゃんの言葉通り向かってくる鳥。
それを見て、軽く体を反らす。
「よっ」
鳥は私の体スレスレを通過し地面に激突。
激突したことでスタンした鳥の腹へどっから出したのかわからない剣で切りつけ倒した。
「これで良いか?」
「……良くねぇよ」
・
『確かに言ってた通りだが』
『これはねぇよ』
『間違ってはないな。うん』
『んな風に避けれるかっての』
『無理無理。あんなスレスレの回避は無理』
『多分これは盾持ちとかが受け流してやるようなやつだよな』
『そもそも避ける以前に見えねぇよ』
・
注文通りやったよな?
避けかた?知らんわ。
「何が悪かったんだよ……」
「まず、普通の人はあんな避けかたできません」
「あんなまっすぐ飛んでくるだけなんだから避けること自体は簡単だろ」
「なんか反論しづらいなぁ」
実際ちゃんと攻撃モーション見とけば問題なく避けれる。まぁ見てないけど。
いくら早かろうと真っ直ぐしか飛ばない以上回避というのは簡単も簡単だ。
誘い込んでそこから離れるって行動だけで良いのだから。
「まぁ、実力がついたら試してみろよ~」
「そうですね、そのうち試しますよ!そして社長の非常識さを見せますから」
「何でそうなる?」
というか、今の主役を忘れちゃいませんかってんだ。
「なら翔の見てから私のやつを言ってくれ」
「あっ、忘れてた」
だよな。私も忘れかけてた。
・・・
後ろの二人は騒がしいなぁ。
いや、チラッと見た感じ、社長が社長しているって感じだけど。
「まぁ、配信とか諸々考えず目の前に集中させてくれるのは嬉しいんだけどね」
集中して、私を狙う魔物を見る。
「よっ」
アイアンスピアバードは口の中へ直接爆撃を放り込めば良いので、そこまで問題ではない。
突撃の攻撃は風の魔法で足元に落とすように受け流してあとは同じように口に放るだけ。
「次はこっち」
次に立ちはだかるのはダンジョンの天井に頭がつっかえるほどの大きさの壁。
「ギガントウォール。マジで壁」
通称近接殺し。
そう言われる理由はひたっすらに硬いボディーと攻撃方法。
「おっと」
そのでかい図体で倒れて押し潰すというなんともまんまな攻撃を繰り出すのだが、それがほぼほぼ即死なのだ。
対処法は簡単で、倒れさせてその上を越えていけばいい。
討伐する必要もないし、倒れさせればあとははめればサンドバックだ。
「とはいえ、私の場合は魔法で貫くんだけど」
掌をギガントウォールに向けて、渦を巻いて炎を作り出す。
その渦は徐々に回転数を上げていき、やがてドリルのように高速で回る鋭い炎になっていた。
「圧縮、ファイアストーム」
放たれた炎はギガントウォールを軽々貫き、その巨体を後ろへと倒させた。
「ボスまでは温存していきたいかな」
今のは大した消費じゃないからいい。
圧縮は技術、ファイアストームはそこまで消費の高いものじゃない。
ただ何回もやっているとさすがに後々厳しくなる。
「ならばここはこうする」
風を私の周りに渦巻かせ、そのまま走った。
「多少コスパ悪くてもこれ一つで突っ切れれば消費は抑えられる」
走る翔を襲う魔物たちは風によって近づけず、立ちはだかる魔物も風によってサイドに流され強引に道を譲る。
そんなふうに翔は魔物を轢いていった。
……その後ろを当然のように奴を抱えて一定距離を保ってついてくる社長。
なお、魔物は文字通り轢かれてった。
そうしてたどり着いた最奥。
少し開けた空間に、一体の魔物が立ちはだかっていた。
「さて、自分の限界越えちゃう?」
私はその場で魔法を纏い、臨戦態勢に入った。
・・・
そんな翔の後ろで、ボスの射程に入らない程度の位置でカメラと共に見ていた。
「何ですかあれ」
あれとはもちろんボスのこと。
ここのボスは落武者のような魔物だ。
体長は三メートルほど。
攻撃手段は主にその手に持った体長の半分ほどの剣による叩きつけ、そして謎の鬼火的な何か。
「シンプルだな」
「そうだね?けど、シンプルゆえにあいつはそこそこ強いんよ」
まずは普通に早い。
あんななりして普通の人と変わらない動きをして、普通の人間、いやランク3程度なら知覚できない速度で動いてくる。ハイビーンの倍以上はあるな。
「あのなりであの蜂より早いのかよ……」
「多分、奴ちゃんも残像程度しか見えないんじゃないかな~」
「なら、一般視点として話させてもらおうかな」
「私も一応一般人なんだけどな~」
「どこがだよ……」
・
『へえ~シンプルなんだね』
『simple is bestってことだね』
『さっきの社長の方がボス味があったの笑う』
『それはそうww』
『一般人(社長)』
『一般人(ランク6)』
『これのどこが一般人やねん』
『これで一般人なら俺たちはなに?』
『凡人ですらねぇよな……』
『この世の9割9分が底辺のゴミになっちゃうよ……』
『言い方悪いけどそれはそう』
・
まぁ、一般人は無理あるか。
「ま、冗談はよしこさんにしといて、本題かな」
「冗談?……まぁ、いいか。本題って言うのは翔さんとの相性とか、そこら辺か?」
そそ。
小さく二回ほど頷き、腕を組み人差し指を立てる。
「まず相性とかから話すと、どっちもどっち?かな」
「そうなのか?普通にボスが有利かなぁ~って思ってたんだけど」
地味に酷いね?まぁ、普通なら誰でもそう思うか。
魔法オンリーな以上、がっつり近接系は苦手な分類になるかなぁ~なんて思うよな。
「けど違うんだよなぁ」
「どう違うんだ?」
「これは私の考え方なんだけど、私はいつも相手と自分を比べるとき計るものがあるの」
「それは?」
「耐久力、持久力、攻撃力と攻撃方法」
・
『ほおほぉ』
『その心は?』
・
「簡単さ。この四つが分かればだいたい勝ち筋が作れるからだ」
まず一つ目の耐久力。
相手がどれだけの攻撃で倒れるか、その辺を計算して戦うこと。
「例えば、相手はあと二三発で倒せるってなったときに、自分の魔力や体力がなくて攻撃できないって状況になったら辛いよね?」
「確かにな」
「だから最初に、自分の体力や魔力、あとは装備の耐久力を考えた上で、相手を倒しきれるかを考えて戦う。無理なら引く」
・
『無茶して死んだらもとも子もないもんな』
『自分との戦い、だなんて、命がかかっている状況では死を近づけるだけの行為ってわけか』
『確かに、一番最初にそれは考えるな』
『今度から意識するわ』
『すっごい常識的なこと言ってるのがなんかびっくり』
『常識あるんだね?社長』
・
おい?最後の方のやつはなんなんだ?私が非常識人なわけないだろ!
言わないが。
「さて、この観点から見ると、まず相手は全快、かつ落武者とはいえそれなりの装備を着けています」
「え~っと……」
あぁ、忘れてた。
ちゃんと考え方の基準も話しとかないと。
「基準にするのは、自分の全力より下の攻撃。それを1として、数値的考えましょう」
「……う~ん。わからん!」
・
『わからん!』
『わからん!』
『どう見積もれと?』
『あ~その辺の実力を見抜く?的なことをできるのも大切ってこと……でおけ?』
・
お、有識者ニキかな?
それともただのニキか?
いや、それはどっちでもいいか。
「まぁ、その辺の見積もりが立てられないうちは、挑戦やら冒険は絶対にしないこと」
「さっき、私にはやらせたくせに」
「あっ?あんなもん絶対に生きれるという状況下だぞ?冒険のぼの字もねぇよ」
「うっ」
さっきの時みたいに確実な安全が確保された上での無茶はいい。
私がいない状況でのあれは駄目だけどな。
図星なら初めから言わなきゃよぉったのに。
「さて、話を戻すと、別に正確に計れとは言わない。ある程度の目測を立てて、そこから予測を立てる。その上で上振れを考えて立ち回る」
下振れは問題なくても、上振れは生死に関わる以上しっかり考慮しよう。
「少し戦ってみて、確実に予測の倍以上強いって場合は撤退を視野にいれろ」
「わかったよ社長」
わかってくれて嬉しいよ。
「で、私の見積もりだとあの落武者は翔基準で数値は75程度」
「……あれ?私の感覚が間違ってないとヤバくね?」
「全力より下を75回当てるってことね」
・
『う~ん?』
『絶妙にわかりにくい』
『……ヤバいな。社長がそう言うなら強いぞ』
『確かにヤバそうだな』
『通常攻撃換算だとこの倍になるから、体力250くらいって考えればヤバいよな』
・
「ってのが耐久力。次に持久力だが、私は知ってるから言えるが、あいつは体力とかはない。部位欠損がなければ永久に全快状態で襲ってくる」
「面倒だな」
「うん、面倒」
・
『逆に十階層とかのボスは体力もしっかりあるから少しへばったところを叩く、みたいなことも出来るんよな』
『あぁ~やったなぁ』
『魔物って体力ないのかと思ってたけどちゃんとあるんだね』
『ずっと動き続ける生き物は流石にいないかな?』
『体力ないのは基本的に幽霊系の魔物。落武者もその部類』
・
そうそう。十階層は最初は避けたりガードしたりで体力使わせて倒すみたいな攻略法がある。
あれはこの考え方に基づいていると言える。
「まぁ、だから今回はそれを考慮することが大事になるね」
「流石にランク6は参考になるなぁ」
「ありがとね。次は、と言ってもほぼラストかな。攻撃力と攻撃方法だ」
これは結構考えるなぁ。
難しい訳じゃないけど、考えることは多いんだよね。
「それは私もいつもやってるな」
「力はまぁ、見た目から、または一発空振らせて見ればだいたいわかる」
「私はわりと受けてみて判断することは多いな」
確実なのはそれだが、ここで相手がイレギュラーだとワンパンされる、なんて事故が起きたら大変だ。
「事故が起きないよう、なるべく回避、空振りをさせることをおすすめするよ」
「そうだな。難易度は上がるが安全性は上がるからな」
奴ちゃんの言う通り安全性は上がる。
前の二つでも言った通り、安全第一だよ。
「最悪、受け流しにシフトできるから安全なのは間違いないね」
「はい!なら、魔法系はどうする?」
やっぱり前衛職はそこの点気になるよな。
もちろん、元気に手を上げて質問されたからにはしっかり答えるよ。
「それに関しては無駄撃ちさせても良いし、気にしなくてもいい」
「気にしない?」
・
『いや、気にするだろ』
『食らったら大ダメージやぞ?』
『食らっても大丈夫なのは社長だけや』
『さっきまでまともだったのにどした?』
・
まぁ、そういう反応になるよな。
「だが、言おう!魔法攻撃してくる敵なんて気にしてられるか!」
「その心は?」
「まず!そんな威力ある魔法なんて、近づいてやれば撃てねぇよ」
「????」
わからねぇか?
魔法使いに置き換えればわかるよな?
「魔法使いが自分の目の前にいるやつに対して爆発魔法なんて撃ち込めるか?」
「あっ」
つまりそういうことだよ。
強力無比な魔法を使う魔物がいたとして、そいつに密着してやれば魔法なんて使わなくなる。
「まず、大前提として、魔法を使う魔物は大小あれど必ず知性を持ち合わせている」
その知性は厄介だが、時には自らの足を引っ張ることに繋がる。
「大規模魔法を目の前で放つやつはいない。撃ってきてもせいぜい中くらいのもんだ。んなもん気にしてちゃキリがねぇ。むしろ離れる方が危ないわ」
「確かに……」
これが通用しないのはもっともっと下。
「確かにそんなもん気にせずぶっぱしてくるのもいたが、そんなやつと戦うな。そんなときはしっかりと考えて立ち回れ」
・
『確かに』
『バカにしてごめんな』
『言う通りです。ごめんなさい』
『やけくそ気味に撃ってくることは?』
『確かにそんなの気にしてたら勝負にならないですね。勉強になります』
・
「やけになって撃ってくるのは、だいたい飛距離はない。背後か全力で後退すれば軽傷で済む、はずだ!」
「そこは言いきってくれ」
「むり!知性ある生き物の行動を全て読めるわけねぇだろ」
その辺は臨機応変にお願いしますわ~
何があっても責任は持たん。私が言ったのはそういうことが多いってだけだからな。
「試す場合も実戦の場合も自己責任でな!」
「100%正しい訳じゃないから、しっかりその場その場で判断してくれ。攻撃力の計り方はこれくらいかな。途中魔法についての話だったけどな」
・
『はぁ~い』
『この場にいるやつでそんな責任転嫁するやつなんていねぇよな!』
『いるわけがねぇ』
『あくまで経験や推測に基づいた考えだからな!』
『これで痛い目見ても知らないぞ!』
『けど、試す価値はあるんよな』
『気をつけてやりましょう』
・
さて、注意も終わったし、最後だ。
「最後の最後、攻撃方法だが、まぁ最初は見た目で判断しろ。だけど、絶対に何が来ても良いように構える」
「例えば?」
「人型がいて、そいつはミートチョッパーを持ててそれで攻撃してくる。だが、最後の最後、それを捨てて突進攻撃をしてきたり、突然口が大きく開いて頭をイカれるみたいな」
・
『ヒエッ』
『例えがあれすぎて笑えん』
『用はあらゆる可能性を頭にいれといて戦えと』
『難しいな』
『最低限、捨て身攻撃は視野にいれとかないとなぁ』
『お?やられた感じですかね?』
『おう、油断してその体に轢かれた』
・
そういうことだ。
言いたいことは全部言われたし、もう説明は言わんくて良いかな。
「だから攻撃力と方法は大事で、しっかり考えとけよ」
「勉強になりました」
さて、ここらで私の考える相手の力の計り方を教えたわけだが、
「さて、それらを踏まえた上で、落武者を評価する」
「さっき言ってた耐久力75、それと持久力は無限、で……攻撃力は?」
「見た感じ、翔は二発もらったらアウトかね?」
もともと防御力は低い方だし。
「退かせないのか?」
「いや、攻撃方法が近接物理、あとは持っている武器の投擲がせいぜいだから、攻撃の命中率は20%あれば良い方。その上で防御魔法を使うから……」
「不意を突かれなければ大丈夫ってことだな」
その通り。
そりゃ当たったら不味いけど、さっき言ったでしょ?二発までなら。つまり不意を突かれてもなんとか耐えられるから大丈夫だと踏んでいる。
「あとは、部位欠損を狙えれば余裕すらできる」
「そう言われると、翔さん有利に思えるな」
実際有利だと思うけどなぁ。
そもそも対近接をできなきゃ魔法オンリーのソロでランク5なんてなれんからな。
「まぁ、ここまで言ったが、あとは本人の頑張り次第だな」
・・・・・・・・
後書き
描き溜めをそこそこ使いきったので、今回からは1日1話、調子悪いときは遅れる。って感じでしばらくはやってきます。
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