第3話 果たし状。私、ボコる
それから数日、私を初めとした事務社員は死ぬ気で働いた。
マスコミや私に会いたいって人が押し掛けて業務が滞った。
その分を取り返しながら、新たに入ってくる様々な仕事依頼などをこなしていき、ようやっとのことで落ち着いた。
私のことなので、私に対するものは私に確認が回ってくるので色々と面倒だった。
ちなみに私はあと数日は残業確定です。
そしてそんな私に、さらに面倒事が起こった。
今朝、事務所に投函されていた無数の手紙。その中の一通。
それは私への挑戦状?果たし状?とにかく戦いに行くんで首洗って待ってろやって内容のもんが入っていた。
とりあえず捨てた。
そんな暇ない。
私は今絶賛仕事の山と戦っとるんや。
「社長」
「あんだ?また、私宛の仕事依頼か?」
「いえ、事務所前で変な人が騒いでます」
「警備員に追っ払わせろ」
「もうやりました。けど返り討ちでした」
えぇ…そこそこ強い警備員雇ってたんだけどなぁ。
「で?用件は?」
「社長と戦わせろと」
「ふぅ……一分で終わらせてくる」
私はペンを置いて立ち上がり、窓を開けて飛び降りた。
シュタッっと着地して、騒いでるやつを見る。
見たところ、そこそこできるくらいの雑魚だ。
「ようやくきたか!」
「戦いたいんだろ?はよこい」
「あん?」
「十秒間だけ付き合ってやるから、さっさと来るならこいってんだよ」
掌クイクイして、無防備にその場に立つ。
「嘗めるなぁ!」
「ただでさえ滞ってる業務をさらに滞らせるんじゃねぇ」
右手を上げ、握りこぶしを作り、まだ接近していない相手に向けて拳を振り抜いた。
「何を…ふがっ!?」
「はい、おしまい」
埃でもはたくように手を叩いて、職場に戻った。
背後には、五回ほど殴られたような跡を残した男が白目向いて倒れていた。
全く余計な時間とらせやがって。
「終わったよ」
「えぇっと…お疲れ様です?」
「あぁ。ってことだから業務に戻れ」
「はい」
仕事をしていた社長室に戻り、再び私はペンを取り仕事へ戻った。
・・・
あれから数日。
奴は事務所を訪れていた。
あの日以降、次の配信に向けての色々な手続きやら何やらを進めていたのだが、それ以上に鍛練に時間を費やしていた。
「あの大剣、いまだにちゃんと使えねぇ」
社長にもらった大剣。
あれを使えるようにするために修行をしていた。
「説明書がブレスレットに入ってたけど、今のままじゃ機能の一つも使えやしない」
規格外の社長が作ったものがただの重いだけの剣では当然ない。
様々な能力が備わっており、あの日社長が言った通りもしもの時の切り札となるだろう。
ただし使うことができればな。
「せめて一つでも使えれば話は変わるんだが」
まぁ、それは後回しだ。
今日は配信のための諸々手続きを終えた報告とかをするために事務所にきたのだが、何だか事務所前で騒いでる人がいた。
「おらぁ!出てこい!俺と戦えぇ!」
「なんだ?」
戦え……あれ?もしかして社長目当て?
「っていうか、あいつどっかで見たことあるような…あぁ、思い出した」
動画配信者のタダラとかいうやつだ。
炎上系というか、自分の力を誇示するために色々と突っかかってくるやつだ。
前に私にも突っかかってきたがそのときは翔さんが追い返していた。
つまりはそのくらいの実力者だ。
私と同等かそれ以下くらい、それが私の見解だった。
「それにしても何でまた社長に…」
そんなふうに不思議に思っていると私の耳にやつの騒いでる内容が聞こえてきて、それが答えだった。
「どうせ作り話なんだろ?切り忘れも何もかも自作自演なんだろ!?じゃねぇと説明つかねぇよな!社長がランク6の伝説なんてよぉ!」
あぁ~作り話、そう捉えられるのか。
調べてみた感じ、完全な事故だったので嘘やら何やらって話は少なかった。
だがそういう人がいなかったわけでもない。
そしてそういう人は大抵、嘘つきに流された人か、普段から私たちの配信を見たりせず、ただ社長の部分だけしか知らない人だろうと私は思っていた。
「まぁ、私たちが一番嘘じゃないって知ってるがな」
あんなもの作れる人が偽物なわけはない。
私や社員が何を言ってもああいう人は騒ぎ続けるんだろうけど。
「さて、どうするか」
私が言ってもいいが、下手にやればまた仕事を増やしてしまう。
私のせいで迷惑かけているため、これ以上はかけられない。
「ん?」
そんなとき、俯瞰視点から見ていたからか窓が開いたことに気づいた。開いたと言っても四階の社長室の窓だ……ん?
社長室?
と、まさかと思った矢先、飛び降りて来る影が見えた。
「おう…」
社長は飛び降りて入口付近に静かに着地した。
「マジかよ」
社長が何か話し始めたので聞き耳をたてた。
すると、十秒間だけ付き合ってやるからとタダラを挑発していた。
その挑発に乗ったタダラは武器を手に取り、社長へ襲いかかろうとした。
しかしそれよりも早く、社長は何もない空に拳を振り抜いた。
そして私は見えた。
社長が何をしたか。
振り抜いた拳の先から鋭く圧縮された空気のようなものが五発ほど放たれた。拳圧と呼ばれるものだろうか?
それがタダラの腹を貫いた。
「ま~じか」
ただ早く振り抜いただけ、原理的にはそれだけだが、五発もあの一瞬で拳をふるい私と同等程度のタダラを気絶させたのだ。直接殴ることもなく、ただその場で腕を振るっただけで。
「ちょっと真似はできないな」
信じられねぇが、社長は本当にランク6なんだろうな。
それを改めて認識した。
・・・
1.
朗報、タダライキッて突撃して業務妨害してワンパンでやられる。
2.
生で見てたけど、気持ちかったぜ。何やったかわかんねぇけど
3.
うん、突然窓から社長が飛び降りてきたと思ったらなんか挑発して何もないところに攻撃したら何故かタダラがやられた。
4.
言っててよくわかんない。有識者、説明PLS
5.
えぇ~私ランク5の冒険者です
6.
マジの有識者きたw
7.
説明頼むぞ!
8.
えぇ~何て言いましょうか。
その時一応その場にいて見ていたんですが、社長さんは拳圧を飛ばしてました。五発。
それがタダラに直撃して気絶させました。以上
9.
いや、まんまやん。説明する気ある?
10.
えぇ~説明する気ある?と聞かれましてもマジでそれだけなんですよ。
拳圧はマジで出てました。それ以外にはなにもしてないんですよ。
11.
一応映像見直したけど、確かになんか社長の手元から揺らぎが見えてそれが真っ直ぐタダラに伸びているのは確認できてる。
けど、魔法じゃねぇのかってことだ。
12.
えぇ~魔法使えるんで言います。まず、あんな速度で飛ぶ魔法なんてありません。あっても雷系統の魔法です。
次に魔法ならどんなに早くても魔力痕が残るのですが全くありません。
最後に、やられたタダラの体についた痕はこん棒の先で強く叩かれたような打撃痕でした。
13.
いや、魔法でも拳圧でもどっちもすげぇよ…
14.
それはそう
15.
どうなん?これ。結論拳圧ってこと?
16.
決まったわけではありませんがその線が高いと言えます。
17.
ここまでタダラについて触れたやつゼロな件について
18.
あいつはざまぁ
19.
それなりに今まで好き勝手やってきたからな。それが勝手に消えた、それだけだ。
20.
あいつの人気って、結局やられた人のアンチとか冒険者に反対している人とかが大半だったから、あんなにこてんぱんに負けた以上自分が笑い物にされておしまいだろ。
21.
まぁ、そもそも稼ぎも視聴者も少なかったからな。今回のは露骨に視聴者稼ぎに行って自滅したからもうおしまいや。
22.
そういやさっきの有識者ニキはやられたこととかあるん?
23.
えぇ~ありますね。
ダンジョン帰り、それも魔力使いきって装備も色々と減ったところに、全快フル装備で凸ってきやがりましてね…ギリギリ負けました。正直今回の件でざまぁみろと思ってた一人です。
24.
うわ、最低だな、タダラ。
25.
少し話は戻りますが、タダラってどれくらい強いんですか?
26.
えっとランク4の真ん中くらいだったかな。
27.
ちょうど奴ちゃんと同じくらいかな。
28.
説明がてら補足する
確かにランク一つ上なだけでレベルが違うがそれでも天地ほどの差はつかない。
その証拠にランク5ニキが消耗していれば負けるくらいの差だ。
それで今回はランクが二つ上だったわけだが、フル装備のランク4を触れずに魔法も使わずに一発で倒すのはちょっとおかしい。
文字通りランク6は次元が違うってわけだ。
29.
なるほどわからん。
30.
ランク一つで倍の差があるのに、ランク5とランク6の間だけはランク5の人の強さの2乗くらいはあるってわけだ。
31.
やべぇなランク6
32.
そういうわけだ。社長は普通にランク6が証明される結果になったな。
33.
本人興味なさそう
34.
わかるww
社長に話題になってますよ!って言っても、仕事が増えるぅぅって言いそう。
35.
言いそうw
36.
まぁ、社長は社長なんで、配信はしないだろうけどこれからちょくちょく出て欲しいよな
37.
おう。
ワイは普通にファンになったわ。
38.
社長って社長なんだってことをついさっきしった民です。
39.
SNSから入った人とかはそうなるわな。
記事とか呟きは社長、やベェ。って感じだったからな。
40.
マジもんの社長なんだよなぁ~
41.
まぁ、少なくともダンジョン配信はしてくれるみたいなんで、次を気長に待ちましょうかね
42.
そうやな。
43.
全裸待機します。
44.
まだ待機画面どころか予定も決まってないぞww
かくいう私も全裸待機してる
45.
誰も気長に待つ気がない件w
46.
そりゃ誰だって気になるわ。
47.
とりあえず、それまでは社長に習って仕事かな
48.
ギャァアア~
49.
ギャあぁあ~
50.
ふっ、俺には効かないぜ
51.
ニートやからな
52.
ぐふっ
53.
俺は働いてるぜ!
54.
冒険者やろ?
55.
何でわかるんだよ…
56.
わかるだろ……
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