第4話 冒険者ランク昇格試験①
勇者御一行を探す魔法使いの冒険者。北へ向かう途中、足止めをくらい冒険者ランクを上げることに。
そもそも彼は現状のCランクで不自由してなかったのだ。
というのも、冒険者ランクCを取ったのも魔法使いという役職になり、師匠となる人に出会い、その修行の際にCランクでないと立入れないエリアがあった為、入場券というかパスポート感覚で収得しただけであった。
冒険者らしい冒険やら、ギルドで依頼をこなすやら全く無縁だった訳で…。
なので彼的には今回の昇格試験もパスポートの更新感覚なのであった。
ーーー[モウキタ]冒険者ギルドーーー
中に入るなりキョロキョロと初心者冒険者さながら見るもの珍しさに不審者になっていた。
Cランクを取ったのだって数年前であったし、その時は師匠もいた。
勇者パーティを探す旅に出る前は修行に明け暮れてほぼほぼ森や山の中と自然の中で過ごしていたし、冒険を始めてからも飲食店や宿屋は利用してはいるが、ギルド内は他の店とまた違った雰囲気がある。
「えーっと…、いらっしゃいませ、本日はどのような目的でしょうか?」
流石に気になったのか受付嬢の1人が受付カウンターから出てギルド内をウロウロしている彼へ歩み寄って来た。
「初めての利用かしら?でも冒険者…っぽいし。パーティギルドへ加入?それとも、仲間募集?迷子センターならあちら…」
「えっと…、ランク昇格試験を受けたいんだけど」
「昇格試験?……それじゃあこちらに」
駆け出し冒険者みたいだけど?と場馴れしてない彼を見て、受付嬢はとにかく受付の方へ案内した。
「昇格試験って事は、もしかしてあなたも北の街道の方へ?」
この子大丈夫なのかしら?実力がありそうとは思えないんだけど…と彼に心配の眼差しを向けながら申請書の準備をする受付嬢。
しかし彼はえ?何故分かったの?さてはこのお姉さんエスパー?と全く別方向な思考が広がっていた。
「そ、そうですけど…どうしてそれを?」
「あなたと同じ目的で昇格試験受けてる人が何人かいるから。ってことではい、申請書。ここに名前と今のランクと役職書いてちょーだい」
受付嬢の言葉を聞いてなるほど、北の街道へ抜けるという同じ目的で昇格試験に駆け込んだ冒険者が他にもいたのかと納得していた。そうしてる内に申請書とペンを渡され、彼は言われた項目を記入していく。
「その冒険者の人達の目的って聞いてます?例えば勇者樣パーティの捜索とか?」
「受付前の待合席でそんなこと話してたパーティがいたかも?あなたも勇者樣探し?」
「まぁ、そんなとこですかね。…書けました」
会話しながら名前等を書いてた申請書を受付嬢に渡し返す。
「はーい、えーっと…名前『カレイド・ミラー』さん、役職『魔法使い』、冒険者ランクC…(!?)で、ですね。申請受理しました。では、昇格試験の説明をいたしますので、あちらの小部屋にお入りください」
オドオドして場馴れしてない駆け出し冒険者みたいな小娘がランクCだとぉ?と受付嬢は内心驚きつつ、カレを説明会場の小部屋へ案内した。
・・・
受付嬢に指定された小部屋へカレ入ると、そこには2人用くらいの大きさのテーブルと2組の椅子だけがおいてあり、片方の椅子にはギルドスタッフであろうダンディな髭を生やした男性が腰掛けていた。
しかし、この状況、まるで取り調べ室である。
「昇格試験の説明をする『ダン』だ。まぁ試験官の一人でもある。とりあえず、ちょっと長くなるかもだから座りたまえ。立ちながらでも構わないがな」
やたら髭を触りながらダンは喋り始めた。
「……じゃあ立ったままで」
「座らなくていいの? あっそ、では昇格試験の説明をしよう。試験は一次試験と二次試験の2つ。両方の成績を見て昇格か現状維持か判断させてもらう」
座らないのかぁとちょっと残念そうなダンであったが昇格試験の説明が続く。
「一次試験はこの[モウキタ]の街の中から私と同じ服装の試験官を見つけ出し、その見つけた試験官から出された課題を遂行してもらう。課題をクリアすると、達成した証としてこのコインを試験官から渡されるから、それを私に持って来てくれ。それが一次試験の内容だ」
説明しながらサンプルであろうコインをカレへ見せてくれた。
「ちなみに課題を出す試験官は全部で10人。誰か1人の課題をこなしてくればオーケーだ」
「つまりは複数人見つけて自分が出来そうな課題を1つ達成してくれば良いってことですね」
「そういうことだ。次に二次試験だが…、これは一次試験クリアしたらのお楽しみってことで。では一次試験開始だ!」
カレの問いに理解が早くて助かるといった表情のダン。
そして、二次試験の内容は伏せられたが早速一次試験が始まったらしい。
まずは街の中から試験官を探し出せねばと部屋の出入口へ向かおうとすると
「…ああ、1つ忘れていた」
とダンがカレを呼び止めた。
「一次試験の課題達成報告は午前中内だ。というのも二次試験は午後に受験者複数人で行うからな。午前中なら今日でも明日でもオーケー。昇格試験を野暮用とかで辞めたくなったら受付嬢に言ってくれ」
と補足説明がされた。
「あとは、補足説明あります?」
「以上だ、頑張れよ」
カレは頷きながら説明会場の小部屋を出ていった。
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