出会い

 いつものようにスマホで曲を漁っていた。

いつものように聞いていただけなの。

そしたら突然その曲は現れた。

何事もなく、元からそうだったみたいに。

 その曲に導かれるように手が動き、その曲を再生した。

 海や自然、動物、そんな今でも世界のどこかでありふれている場面が少し再生されては別の場面、また別の場面へと変わっていく。

それをVOCALOIDの声がなぞる。

どこか無機質なのに歌っていて、

唄っていて、

詠っていて、

謳っている。

この表現のまんまなのだ。どこか生命の終わりを嘆き、生命の始まりを掲げ、生命そのものが叫んでいる。魅了された。悲しげなのに、力強い。その一つ一つが私を生きていると証明してるみたいで。何て事の無いありふれてた日常だからこそ私はそう感じたんだと思う。これが間違っていたって良い。私はそれでもこの曲に出会った。

 久しぶりに、外を見ようと思った。

 そのままスマホの上の方に目線を持っていくと時刻はもう19:48で夏になり始めたこの季節では真っ暗とは言いきれないかも知れないけれど、夜とは十分言えた。それから私は親に一言「行ってきます!」と伝えて、スマホを持って、イヤホンをつけて家を飛び出した。親が「ちょっと! どこ行くの!」と焦っているけれどなんか止まれない。何故か久々に楽しいと感じている。少し走って街の中を歩いていた。街灯が照らして、人が歩いている。その中にもちろん私もいる。急に走ったから少し疲れを歩き始めて感じたけれどスッキリしてた。前髪邪魔だけど。久々に出た外は少し肌寒くて星が見えてきてどこにでもあったいつも通りの景色でしかないのに何故か好きだった。帰ると勿論親に怒られた。

 それからもたまに1人で曲を聞いて歩いた。それは基本夜だけれどたまにコンビニに行くついでに歩く。いつもと変わらず車が通る道路。

 良かった、私の事なんか気にかけてない。私が気にする必要もない。ちゃんと足が前に出るって分かって少し嬉しくなって走ってみた。やっぱりは前髪は邪魔で、少し走っただけで疲れるくらいには引きこもりなのを実感したけれど外の景色と耳から聞こえるその景色はどこか似ていて好きだ。

 それから、久々に行ってみた。

 学校に、親友に会いに。

前から連絡は続けてて、歩くようになって基本遊ばなくなってしまった。少し怖かったけど、学校に行くよって伝えると「ほんとに!? 保健室?絶対に会いに行くね!」というメッセージが見えて変わってないなと安堵した。

 明日、学校に歩いて行ってみようと思う。

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